055 個人事業主のためのインボイス制度(対策その二)

2023年5月9日

今回はこのシリーズで最も重要な「取引の見直し」について説明します。

⒈取引の見直し

適格請求書の交付ができない免税事業者である売り手と、適格請求書の保存が必要な(一般)課税事業者である買い手の組合せは、継続or停止という取引の見直しが必要です。継続といっても現状維持ではなく、「消費税分の値下げor適格請求書発行事業者への変更」を行うことになるでしょう。
ただし、買い手が「一方的に」取引を停止したり、売り手に消費税分の値下げor適格請求書発行事業者への変更を求めたりすると、独占禁止法や下請法に違反する恐れがあります。

⑴消費税分の値下げ

消費税分の値下げを行う際は、買い手に次の事態が生じます。
・仕入税額控除を行えないため、消費税額は増加すること
・値下げ後に本体分と消費税分を計算し直して、仕入税額控除を行えない消費税分が費用又は資産の額に含まれること
・消費税分のうち仕入税額控除を行えないのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までは20%、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは50%であること
・仕入税額控除を行える課税仕入れと行えない課税仕入れの混在などにより、事務負担が大幅に増加すること

⑵適格請求書発行事業者への変更

適格請求書発行事業者への変更を行う際は、売り手に次の事態が生じます。
・前提として課税事業者への変更を行うため、消費税を納めること(仕入税額控除を行えます)
・本来納めるはずの消費税額が利益の額から除かれること
・納める消費税額は令和5年10月1日から令和8年9月30日まで、課税売上げに対する消費税額に20%を掛けて求める方法を選択可能なこと
・税理士報酬が発生又は増加する可能性が高いこと
・請求書発行ソフトや会計ソフトの購入費なども必要になる可能性があること(その際はIT導入補助金が活用できます)

⑶有利選択

売り手にとっての有利選択は、ほとんどのケースで「適格請求書発行事業者への変更」です。ただし、(一般)課税事業者に対する課税売上高の割合が低いなどのケースでは、消費税分の値下げもあり得ます。

⒉IT導入補助金

小規模事業者や中小企業であれば、請求書発行ソフトや会計ソフトの購入費などの一部を負担してくれる、IT導入補助金2023(デジタル化基盤導入類型)の活用を検討しましょう。受発注や会計などの機能数により、補助金額は次のように異なります。
・一機能 上限50万円(補助率¾)
・二機能以上 上限350万円(補助率¾と⅔の二段階)
また、ソフトウェアなどと「同時に」購入するハードウェアも補助され、その金額は次のようになります。
・PCなど 上限10万円(補助率½)
・レジなど 上限20万円(補助率½)