069 交際費の範囲は?どこまで経費にできるの?

2023年5月26日

個人事業主や法人の節税策として、経費を増やすことが一般的に考えられます。
経費項目として「交際費」が挙げられ、この交際費は取引先や会社関係者の方と円滑に事業を遂行していくうえで必要な経費とされます。
近年では新型コロナウイルス感染拡大防止のために、居酒屋などの飲食店は営業時間の短縮を強いられてしまい、日本国民はこれまでと比べて飲食店を利用する機会が減少傾向になっております。
そのため、飲食代などの交際費も減少傾向となっておりますが、取引先などとの円滑なコミュニケーションを図るためには交際費の支出は必要不可欠なものとなります。
今回はこの交際費について解説していきたいと思います。

交際費とは

交際費とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの」と定義されます。

上記より、交際費とは取引先などの会社関係者に対する飲食代などの接待費や、お中元・お歳暮などの贈答品費を言います。

交際費の範囲

交際費は上述した通り、取引先との飲食代などが該当します。
ただし、下記内容のものについては交際費には該当しません。
・専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用

・取引先などの外部関係者との飲食などのために要する費用であって、一人当たりの金額が5,000円以下である飲食代にかかる費用
なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
①飲食などのあった年月日
②飲食などに参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
③飲食などに参加した者の数
④その飲食などに要した費用の額、飲食店の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
⑤その他飲食などに要した費用であることを明らかにするために必要な事項

・カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用

・会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用

・新聞、雑誌などの出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用

以上のものに該当した場合、交際費とはならず、福利厚生費、会議費、広告宣伝費などとして経費計上が可能となります。
交際費に該当した場合、後述するように無制限に経費として計上することは出来ません。
具体的に交際費について、いくらまで経費計上することが出来るか解説していきます。

どこまで経費にできるの?(交際費の損金算入限度額)

日本で初めて交際費の制度が創設されたのは昭和29年になります。
昭和29年当時の経済情勢は好況であり交際費の過剰な支出が目立っておりました。
当時は「社用族」という言葉も生まれた時代であり、社用族とは会社のお金で飲食や遊興する人のことを指します。
このように交際費の濫費が当時は大変目立っていたことから、国としては交際費を無制限に経費として認めてしまうと企業の資本蓄積がなかなか出来ないため、交際費に一定の制限を設けることとしました。
以下、具体的にどこまで経費として交際費を計上することが出来るか解説していきたいと思います。

まず、交際費は原則として全額が経費として計上する事は出来ません。
ただし、個人事業者の場合には法人とは異なり、交際費に限度額はなく、いくら使っても経費として計上することが出来ます。
一方で、法人の場合には資本金によって経費として計上することが出来る限度額が異なってきます。

・事業年度終了の時における資本金または出資金が1億円以下の法人の場合
年間800万円または接待飲食費の50%のいずれか大きい金額を限度額として交際費を経費として計上することが出来ます。
・事業年度終了の時における資本金または出資金が1億円超の法人の場合
接待飲食費の50%までを交際費として経費に計上することが出来ます。

以上より、交際費を計上する場合、個人事業主と法人によって経費に計上することが出来る金額が異なってきます。

交際費に該当するための条件

交際費は、税務署の調査が入った際には細かい点までチェックされる勘定科目となります。
しかし、仕事に関係する交際費であれば、遠慮せずに交際費として経費計上すべきです。
直接仕事に関係した交際費だけでなく、間接的に関係する費用も含めて問題ありません。
飲食などを一緒にすることによって、仕事上、有益な情報を得ることが可能であれば十分に交際費に該当します。

交際費に該当するための条件としては、大まかに挙げると以下3点に該当している場合に、交際費として計上可能です。
・人と会っているかどうか
・仕事上の会話をするかどうか
・全額自分が支払いをしているかどうか
上記内容のものについて、領収証などの証憑書類をしっかりと保管していれば、十分に交際費に該当します。

 交際費が適用されるかどうかの具体的なシチュエーション

交際費は、取引先や目的など様々なケースが考えられるため、一般的にその判断は難しいとされております。
以下では、交際費かどうかの具体的な例をご紹介します。
・寄附金に該当するケース
政治団体や神社の祭礼などの場合に支出する金銭は、取引先など直接事業とは関係しない者に対する支出であるため、交際費には該当せず、寄附金に該当します。

・福利厚生費に該当するケース
社員旅行や社内行事に際して支出する金銭は、支出する相手が外部関係者ではないため、交際費には該当せず、福利厚生費に該当します。

・給与に該当するケース
交際費という名義で支給した金銭について、実際には法人の業務のために使用したことが明らかでないものは、交際費には該当せず、給与に該当します。

結論

以上、交際費について解説してきました。
経費としては様々な科目がありますが、その中でも交際費については税務調査の際には注意すべき科目の1つであるので、何でもかんでも交際費として経費計上することは問題になります。
しかし、上述したように仕事に関係したものであれば、遠慮なく経費計上することが節税にもつながってきますので、領収証の保管も忘れずに経費計上することが今後の事業を行う上でも大切なことになってきます。