071 青色申告と白色申告のメリット・デメリット

2023年5月28日

個人事業主が確定申告をする場合、「青色申告」と「白色申告」の2つの方法のいずれかにより確定申告を行うことになります。
「青色申告」とは、複式簿記により会計処理を記帳する方法になり、貸借対照表や損益計算書などの一定の帳簿を備えつけ、その記録に基づいて確定申告を行うものとなります。
「白色申告」とは、帳簿作成が簡単な方法により確定申告を行う方法であり、青色申告とは異なり、複式簿記により会計処理を記帳する方法をする必要はなく、簡易簿記と呼ばれる簡単な方法で会計処理を記帳した記録に基づいて確定申告を行う方法になります。
一般的に青色申告は、節税メリットが白色申告に比べて大きいと言われているため、以下では青色申告のメリット・デメリットについて解説していきたいと思います。

「青色申告」のメリットについて

青色申告を行うためには、青色申告の適用を受けたい年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」を管轄税務署へ提出することにより、下記内容の青色申告のメリットを享受することが可能となります。

青色申告特別控除の適用を受けることが出来る

青色申告の最も大きな節税メリットとして、計算した所得から最大65万円を控除したうえで納める税金を計算することが出来るというものです。
この65万円控除のことを「青色申告特別控除」と言います。
経費などのお金を支払うことなく所得から65万円を控除できる為、この65万円控除が適用をされているか否かでも納税額は非常に大きく異なります。
なお、この青色申告特別控除の手寄与を受ける為には、複式簿記により帳簿を作成する必要がありますが、市販の会計ソフトを利用することにより、簡単に複式簿記により帳簿を作成できるので、簿記の知識がない方でも非常におすすめです。

家族へ支払う給料を経費にすることが出来る

例えば、夫が個人事業主として家族で事業を営んでいる場合、事業を手伝っている妻に給料を支払っても原則としてその給料は経費とすることは出来ません。
しかし、青色申告をしている人で、家族への給料について「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出している場合には、家族へ支払った給料が経費として認められます。
ただし、この「青色事業専従者給与に関する届出書」には提出期限があり、原則として給料を経費としたい年の3月15日までにこの届出書を提出しておく必要があります。
また、注意点としては、届け出た金額の範囲内までが経費として認められることや、給料を支払う家族が1年間のうち、6カ月を超える期間、事業に専従している事などの要件がある点に注意が必要です。

純損失の繰越控除を利用することが出来る

事業を行うにあたり、毎年安定して儲けが出れば良いのですが、経済環境の悪化などにより、赤字になってしまう年もあります。
通常は、その年の赤字はその年だけで扱われてしまい、他の年度における儲けの計算に影響させることは出来ません。
しかし、青色申告を選択していれば、事業で赤字が出た場合、その翌年から3年間にわたって、赤字を繰り越して、その3年間のうちに生じた儲けから控除することが出来る「純損失の繰越控除」が認められます。

貸倒引当金を計上することが出来る

売掛金が回収出来れば問題ないのですが、請求後に得意先が倒産した場合には、売掛金の回収が出来なくなることがあります。
このことを貸倒れと言います。
通常、売掛金として計上された金額は、その年の売上として儲けの計算に含まれ、その分の税金を支払うことになります。
しかし、青色申告を選択している場合には、12月末時点での未回収に対する売掛金に、一定の方法で計算した回収不能見込額を、その年の経費として計上することが出来る「貸倒引当金」を計上することが可能となります。

「青色申告」のデメリットについて

青色申告のデメリットとしては、下記項目が挙げられます。
・会計記帳を行うのが難しい点
・税務署から目を付けられやすくなる点
・現金主義を採用している場合、青色申告特別控除額が減額される点
青色申告を採用している場合、原則として複式簿記により記帳をしなければなりません。会計知識が乏しい経理初心者の場合にはこのデメリットは大きな事務負担となります。
また、複式簿記は貸借対照表か損益計算書のいずれかに誤りがあった場合には、数字が一致しなくなる為、計算ミスに気付くのが容易となっております。
よって、計算ミスがあった場合に税務調査が入った際にそのミスについて指摘された場合、すぐさま不正とみなされてしまいます。
さらに、個人事業主の方のほとんどが売り上げを計上するタイミングは現金が入金された時点で売上計上する「現金主義」を採用しておりますが、税務署は売り上げを計上するタイミングは、商品の引き渡しや役務提供が完了した時点で売り上げを計上する「発生主義」を重視しております。
よって、現金主義を採用している人は青色申告特別控除額が65万円から10万円に減額されてしまいます。

以上、青色申告は税金を安くできる反面、事務負担が増大するという点がデメリットとなります。

結論

以上、青色申告と白色申告の違いを解説し、青色申告のメリット・デメリットについて紹介しました。
今後、個人事業主として生計を立てていく場合には、少しでも税金を安く抑えるために面倒でも、会計帳簿の作成を通して売り上げや経費をしっかりと集計していればそのご褒美として税金面で特典を受けることが出来る青色申告を選択することをおすすめします。