073 法人化するメリット・デメリット、法人化におすすめな人は?

2023年5月30日

日本では近年、新型コロナウイルスの流行による影響も大きく、企業は従来の働き方を見直す動きが求められてきています。
時間外労働の上限が原則、月45時間・年360時間となったり、労働基準法の改正によって、有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、年間5日の有給休暇を取得させるように義務づけることや、フレックスタイムによる労働時間の清算期間が延長され、従来は1カ月であったのに対して3カ月に延長されたことにより、従来よりも長い期間の労働時間の範囲内で、労働時間を柔軟に調整することが可能になったことなどの動きが見られます。
また、新型コロナウイルスの流行に伴い、自宅でリモートワークを行う労働者の方も増え、副業などを実施する人も増加しております。
副業としては様々な働き方がありますが、自分で法人を設立し、事業を行う人も近年では急増しております。
今回は法人化をした場合のメリット・デメリットを紹介するとともに、法人化におすすめな人について解説していきます。

法人を設立する流れ

まず、法人化した場合のメリット・デメリットを紹介する前に法人を設立する流れについて簡単に解説していきたいと思います。
法人を設立するには以下の流れになります。

1 会社概要について作成

法人を設立するにあたり、まずは法人の目的、商号、本店所在地、資本金の額、発行可能株式総数、事業年度、設立時の代表取締役や取締役などの役員の決定をします。

2 定款の作成及び認証

上記1で紹介した内容を文書にまとめた定款を作成します。
定款とは会社のルールです。
この定款を作成したあと、定款が法令に基づいて作成されたことを証明するために公証役場より証明を受ける必要があります。
この証明を受けることを定款認証と言います。

3 資本金の払い込み

次に上記において資本金が確定したら、発起設立の場合には発起人が払い込み、募集設立の場合には出資者全員が、発起人または設立時における取締役のうち代表者の銀行口座へ払い込みを行います。

4 登記申請書類の作成・提出

定款認証が完了後、会社の設立登記を行います。
登記をするためには会社名や本店所在地などを記載した登記申請書を作成します。
そのほかに、役員の就任承諾書や会社実印の印鑑登録や登録免許税なども必要になってきます。
これらが準備出来たら法務局へ登録申請書を提出します。
この登記申請書を提出した日が法人設立日となります。

法人化のメリット

法人化するにあたりメリットはいくつか挙げられますが、主に下記内容が考えられます。

・対外的信用力の増大につながる点

法人になるには上述したように登記が必要になります。
登記をすることによって公示されるため、社会的信用力も増大することにつながります。

・金融機関や投資家への信用力の増大につながる点

法人は会計上、個人の勘定と法人の経営資金との区別を強いられますが、財産管理が整備され、損益・収支が明瞭になるので、金融機関や投資家は明確な判断ができ、融資を受けやすくなります。

・人材確保につながる点

求人募集も働き手にとって社会的信用力が高まるため、個人経営より法人の方が優秀な人材が集まりやすいので、人材確保という点でも有利に働きます。

・内部管理・組織統制がとれる点

一般的に従業員が増加すると管理するのが困難になるため、管理組織が必要になってきます。法人化することによって、責任所在を明確にし、管理業務の効率化を図ることへ繋がります。

・マイクロ法人を設立し個人事業と併用することで節税に繋がる点

マイクロ法人とは、株主と会社の代表者が同一人である小さな会社の事を言います。
法人化のメリットはこのマイクロ法人を設立することによって、個人事業主として稼いだ収入をマイクロ法人へ移し、そのマイクロ法人から給料を受け取ることによって給与所得控除が受けられるため、節税に繋がります。

その他にも、法人化した場合には、社会保険による保障が受けられる点、欠損金の繰り越しが10年間可能となる点、決算期を自由に決められる点、家族への給与が経費にすることが出来る点などが挙げられます。

法人化のデメリット

法人化した場合、社会的信用力が得られる反面、デメリットもいくつか挙げられます。
・法人設立にあたって事務負担のかかる登記手続きや設立費用がかかる点
・法人のお金を自由には使用できない点
・複式簿記により帳簿作成をする必要がある点
・法人の維持コストや事務処理等の負担が大きくなる点
・重要事項の決定である場合には、毎回、株主総会決議が必要になる点
・交際費の損金算入において、上限額が設定される点
・社会保険へ強制加入となり、保険料のコストがかかる点
・税務調査に入られやすくなる点
・赤字であっても毎年必ず、法人住民税の均等割がかかってくる点

法人化するのにおすすめな人

法人化をおすすめする人は下記2つのケースが考えられます。

1 所得税と法人税を比較して納税額を減少出来るタイミング

個人事業を行っていた人が事業を進めていくにつれ課税所得が増加してきた場合、法人化したことによって、納税額を減少出来るタイミングがあります。
このタイミングは、所得税率と法人税率を比較してシミュレーションする必要があるので、その際には税理士へ相談するとよいでしょう。

2 消費税の納税をするタイミング

過年度の売上高を確認し、一定の金額を超えるタイミングに合わせて法人化することによって、消費税の納税を向こう2年間免除することが可能になります。
ただし、2023年10月1日から導入されるインボイス制度によって、このタイミングは今後、考える必要はなくなりますので注意が必要です。

結論

法人化のメリット・デメリットを解説し、法人化するのにおすすめな人を紹介しました。
法人化するタイミングとしては、従来は消費税の納税を避けるためにこの方法は節税策との1つとして挙げられてきましたが、上述したようにインボイス制度の導入により今後は消費税の納税を避ける方法としては使用できなくなるので、法人化するタイミングには従来同様には考えないようにすることが注意点として挙げられます。