076 iDeCoの節税効果(その二)

2023年6月2日

⒈具体例

40歳~59歳の20年間、給与収入400万円(給与所得276万円)と所得控除(基礎控除や社会保険料控除など)170万円のDさんが、毎年18万円を20年間にわたり拠出し(360万円)、利回り3%で運用する(490万円)ケースで節税額を計算します。

⑴拠出時
・利用前
(2,760,000-1,700,000)×15.105%=160,100
・利用後
(2,760,000-1,700,000-180,000)×15.105%=132,900
・減少額
(160,100-132,900)×20年=544,000円

⑵運用時
・減少額
(4,900,000-3,600,000)×20.315%=264,000円

⑶受給時
60歳~64歳の5年間、給与収入280万円(給与所得188万円)と所得控除130万円になり、次の「どちらか」の方法で老齢給付金を受給します。
①年金(60歳~64歳)
・利用後
4,900,000÷5年-600,000=380,000(雑所得)
(1,880,000+380,000-1,300,000)×15.105%=145,000
・利用前
(1,880,000-1,300,000)×15.105%=87,600
・増加額
(145,000-87,600)×5年=287,000円
②一時金(60歳)
4,900,000-400,000×20年<0 ∴0(退職所得)
・増加額
87,600-87,600=0円

⑷節税額
①年金
⑴+⑵-⑶①=521,000円
②一時金
⑴+⑵-⑶②=808,000円

⒉結論

拠出時と運用時における税金の減少額の合計が、受給時における税金の増加額を「上回れば」節税できます(多くのケースで上回ります)。

⑴拠出時

事業所得や給与所得などの金額から小規模企業共済等掛金控除額を控除するため、掛金分に応ずる15.105%~55.945%の税金が減少する可能性があります。
ただし、住宅ローン控除や医療費控除などの適用を受けると、減少する可能性が低くなります。

⑵運用時

本来課税されるはずの運用益に対する20.315%の税金が減少します。
しかし、ある程度の運用益を出すためには、預貯金や保険ではなく、投資信託等で運用する必要があります。
なお、専門機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の利回りは3%程度です。

⑶受給時

老齢給付金の収入金額から公的年金等控除額や退職所得控除額を控除した残額に応ずる、15.105%~55.945%(一時金はその½)の税金が増加する可能性があります(一時金で受給する方が増加する可能性は低くなります)。
ただし、他に国民年金や厚生年金、退職金を受給すると、増加する可能性が高くなります。