086 支払調書とは

2023年6月12日

支払調書とは、会社の利害関係者である法人や個人に対して、どんな内容で、1月1日から12月31日までの1年間でいくら支払ったのかを税務署に報告する書類を言います。
そして、翌年1月に法人や個人へ支払った内容を集計した書類を発行し、税務署へ提出することが義務付けられています。
これを「支払調書」と呼んでいます。
この支払調書は、法定調書の一つとされており、法定調書は全部で60種類存在します。
法定調書の代表的なものとしては、従業員の給与を支払った際に発行する源泉徴収票が挙げられます。
その他には、確定申告者の国外転出特例対象財産に関わる財産債務調書なども法定調書の一つに挙げられます。
今回は法定調書の一つである支払調書について解説していきます。

◆支払調書の代表例

支払調書は一般的に以下4つが挙げられます。
①報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
こちらは、外交員などへ支払う報酬、弁護士や税理士などの士業に支払う報酬などが対象であり、報酬等を支払う人が税務署へ提出することになります。

②不動産の使用料等の支払調書
土地や建物などの不動産や借地権のような不動産の上に存する権利を借りた際に支払う家賃がある場合、支払いを行った法人もしくは不動産業者である個人が税務署へ提出することになります。

③不動産等の譲受けの対価の支払調書
土地や建物などの不動産や不動産の上にある権利などを購入した場合に対価を支払う法人、あるいは不動産業者である個人が税務署へ提出することになります。

④不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書
土地や建物などの不動産や不動産の上にある権利などについて、売買や貸付けをした際に紹介料や貸し付けのあっせん手数料などを支払ったりする法人、または不動産業者である個人が税務署へ提出することになります。

◆支払調書の提出期限

支払調書の提出期限は、上記内容の報酬等を支払った年の翌年1月31日となります。
これは、個人の確定申告が2月16日から開始する為、支払調書の提出が終わった段階で、2月上旬には税務署へ提出した支払調書を、支払先である個人や法人へ送付する必要があります。
税務署へ支払調書を提出する場合には、給与所得の源泉徴収等の法定調書合計表を作成し、添付する必要があります。
支払調書の提出方法として、CDなどで提出ができるほか、インターネットを利用してe-taxより自宅から提出することも可能になっています。

◆支払調書作成時の注意点

支払調書を作成するにあたり、いくつか注意点があるため以下解説します。
・マイナンバーの取扱いに注意。
税務署へ提出する支払調書には法人の場合には法人番号を、個人の場合にはマイナンバーを記載する必要があります。
しかし、個人の場合には番号法という法律で特定個人情報に関する提供制限を受けてしまうため、個人の支払先に交付する支払調書の場合には、マイナンバーを記載していない支払調書を渡す必要があります。ただし、法人の場合には法人番号を記載したものを渡しても大丈夫です。

・消費税の取扱いに注意。
支払調書を作成するにあたり、支払金額を消費税込みにするか、税抜きにするか考えられますが、原則として消費税を含めた額が対象となります。
ただし、過年度と同様に継続適用していれば、消費税込みの金額であっても、消費税抜きの金額であってもいずれの場合でも問題ありません。

・未払い分も記載が必要。
未払い分がある場合には、支払調書に未払い分も記載が必要です。
また、併せて源泉所得税についても未徴収であることがわかるように記載が必要です。

◆支払調書を個人や法人に対して交付する義務はあるのか。

税理士事務所で勤務している人であれば思うこととして、支払調書を報酬など支払った取引先へ交付する義務があるのかという点について解説します。
結論として、報酬・料金を支払った個人や法人に対して交付する義務はありません。
しかしフリーランスなどの個人事業主は、支払調書をもとに確定申告行うケースが多く、現在の日本はフリーランスなどの個人事業主の数も年々増加しております。
今までが一般的に支払調書を交付してきたため、今後ますます支払調書の交付を求められると考えられる為、原則として交付義務はありませんが、交付することが一般的だと思います。
ただし、上述したように個人へ支払調書を交付する場合にはマイナンバーは記載していない支払調書を交付する必要があります。

◆結論

今回は支払調書について解説しました。
支払調書は、税務署が誰にどんな内容でいくら支払ったかを把握する書類になりますので、支払側は提出漏れのないように対応する必要があります。
この支払調書から税務署側では支払いを受けた人が確定申告をしているか確認することが出来る為、支払いを受けた人も支払調書を発行された場合、税務署側でも支払いを受けていると把握されているので、しっかりと確定申告をするように意識していきましょう。