088 電子帳簿保存法とは

2023年6月14日

電子帳簿保存法とは、各税法で原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律を言います。
電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は大きく以下3種類に区分されています。
①電子帳簿等保存 (電子的に作成した帳簿・ 書類をデータのまま保存)
②スキャナ保存 (紙で受領・作成した書類を 画像データで保存)
③電子取引 (電子的に授受した取引 情報をデータで保存)

電子帳簿保存法について、知っておくべき内容を3種類ごとに改正内容を解説していきます。

◆電子帳簿等保存 (電子的に作成した帳簿・ 書類をデータのまま保存)

1 税務署長の事前承認制度が廃止されました。
これまで、電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担を軽減するため、事前承認は不要とされました (電子的に作成した国税関係書類を電磁的記録により保存する場合についても同様です。)。

2 優良な電子帳簿(優良電子帳簿とは、訂正、削除履歴の確保要件、相互関連性要件、検索要件を満たした帳簿のことを言います)に係る過少申告加算税の軽減措置が整備されました。
一定の国税関係帳簿(注1)について優良な電子帳簿の要件を満たして電磁的記録による備付け及び保存を行い、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している保存義務者について、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が整備されました(申告漏れについて、隠蔽し、又は仮装された事実がある場合には、本措置の適用はありません。)。
(注1) 一定の国税関係帳簿とは、所得税法・法人税法に基づき青色申告者(青色申告法人)が保存しなければならないこととされる総勘定元帳、仕訳帳その他必要な帳簿(売掛帳や固定資産台帳等)又は消費税法に基づき事業者が保存しなければならないこととされている帳簿をいいます。

3 最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存等が可能となりました。
電磁的記録による保存等が可能となったのは、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って記録されるものに限られます。

◆スキャナ保存 (紙で受領・作成した書類を 画像データで保存)

1 税務署長の事前承認制度が廃止されました。
従来、スキャナ保存する場合には事前に所轄税務署長へ事前承認が必要となっておりましたが、今回の改正により事前承認は不要となりました。

2 タイムスタンプ要件、検索要件等について、次のとおり要件が緩和されました。
⑴ タイムスタンプの付与期間が、記録事項の入力期間と同様、最長約2か月と概ね7営業日以内とされました。

⑵ 受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要とされました。

⑶ 電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等(注2)において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。
(注2) 訂正又は削除を行うことができないクラウド等も含まれます。

⑷ 検索要件の記録項目について、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されるとともに、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となりました。

3 適正事務処理要件(相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等のことをいいます)が廃止されました。

4 スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置が整備されました。
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されました。

◆電子取引 (電子的に授受した取引情報をデータで保存)

1 タイムスタンプ要件及び検索要件について次のとおり要件が緩和されました。
タイムスタンプ要件に係るタイムスタンプの付与期間及び検索要件に係る検索項目について 「スキャナ保存に関する改正事項」の2(1)と(4)と同趣旨の改正が行われたほか、基準期間(当課税期間における2年前の課税期間)の売上高が 1,000万円以下である方(小規模な事業者)について、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件の全てが不要とされました。

2 適正な保存を担保する措置として、次の見直しが行われました。
⑴ 申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。
※ 消費税における電子取引の取引情報等に係る電磁的記録については、引き続き出力書面による保存が可能です。

⑵ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合 には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重される措置が整備されました。

◆電子帳簿保存法の一般的な対応

電子帳簿保存法による一般的な対応としておすすめなのが、①受領したPDFデータを下記方法により保存する方法か②マネーフォワードなどによるクラウドボックスにより保存する方法が挙げられます。
①の場合には、PDFデータに規則性をもって以下のようなタイトルを付して保存すれば電子帳簿保存法に対応した保存とみなされます。
「日付、取引先の名称、取引金額」をPDFのタイトルに付して保存する方法。
②の場合には、受領したPDFをマネーフォワードのクラウドボックスへドラッグアンドドロップすれば自動的に日付、取引先の名称、取引金額が登録される方法。

◆結論

以上が電子帳簿保存法の内容になります。
電子帳簿保存法によって、基本的な内容は電子取引であるインターネットにより領収証をダウンロード、PDFでの請求書の授受などを行った場合には、電子的方法によりデータを保存しておく必要があるということを理解しておく必要があります。
来年から本格的に実施する必要がある為、対象取引がある場合には対応できるように準備しておきましょう。