101 給与所得者の特定支出控除とは
2023年6月28日
令和4年度労働力調査によると、日本の労働者の約9割が雇用者、つまり給与所得者です。
給与所得は、給与収入から一定の給与所得控除を引くという計算方法となります。個人事業主や法人のように実費経費という概念がありません。
しかし、実費で支出した費用の一部を給与所得から控除することができます。それが「給与所得者の特定支出控除」(以下、特定支出控除控除)です。
本記事では、特定支出控除の制度について記載をしていきます。
●特定支出控除とは?
特定支出控除は、昭和62年の税制改正で誕生しました。給与所得控除を一律適用するのではなく、納税者個人の事情も加味しようというのが趣旨となります。対象や金額について触れていきます。
・特定支出控除の対象
令和5年現在の特定支出控除の対象は「通勤費」「職務上の旅費」「転居費」「研修費」「資格取得費」「単身赴任者の帰省旅費」「勤務必要経費」です。
これらは、勤務先から補填されているものは、当然除きます。例えば、「通勤費」であれば、給与等で支給されている場合や「職務上の旅費」も経費精算等をしている場合は、除かれます。
・主な対象は「研修費」「資格取得費」「勤務必要経費」
通勤費や旅費関係は、勤務先から支給されるのが一般的です。そうなると、対象となるものは「研修費」「資格取得費」「勤務必要経費」となってきます。
「研修費」「資格取得費」は職務に必要のあるものに限られます。「勤務必要経費」とは、職務に必要な「図書費・衣服費・交際費」などになります。
例えば、勤務先がスーツの着用が必須の場合、スーツの購入費用は、衣服費に該当します。その他、自己啓発のための本の購入費用や経費精算を行わない取引先や同僚との飲食が対象となります。
ただし、勤務必要経費は年間合計65万円までが限度額となるので、注意が必要です。
・特定支出控除の金額
特定支出控除が適用できる金額は、支出をした金額 - 給与所得控除 × 1/2です。
例えば、年収300万円の場合、給与所得控除は、98万円となります。
つまり、98万円の2分の1をした金額49万円は、支出した金額から引かれてしまうため、49万円を超える支出をしていないと、特定支出控除を適用することはできません。
自分の給与所得控除額はどれくらいになるのかを知っていないと、特定支出をしたけど、適用金額に満たないということがあるので、注意をしましょう。
・特定支出控除の適用方法
特定支出控除は、確定申告により適用をします。勤務先から証明を出してもらい、確定申告書に添付をします。ただ確定申告書に明細等を記載するだけではなく、勤務先からの証明が必要であることを忘れないようにしましょう。確定申告書提出期限ぎりぎりに勤務先に依頼をせず、余裕をもって依頼をしましょう。
●まとめ
本記事では、給与所得者の特定支出控除について記載をしました。職務に必要な資格を取るために多額の支出をした場合などは、対象となる可能性が高いので、こういった制度があることを覚えておきましょう。