117 青色申告が取消になるパターンとは
2023年7月15日
所得税や法人税の確定申告を行うにあたって、申告書を作成するパターンとして、白色申告と青色申告があります。
青色申告は白色申告に比べて作成に手間がかかり、事務負担が増加する反面、いくつか税制優遇措置が設けられております。
今回は青色申告について解説していきたいと思います。
◆青色申告とは
青色申告とは、税務署長へ青色申告承認申請書を提出し、承認を受け、日々の取引について一定の帳簿を備え付け正規の簿記の原則に従って帳簿を作成し、所得税や法人税を計算して申告することを言います。
青色申告のほかに白色申告というものがあります。
ここでは白色申告について説明は省略しますが、白色申告に比べて青色申告は手間がかかる反面、税制上のメリットがあります。
◆青色申告のメリットとデメリット
青色申告をすることにより、さまざまな税制優遇を受ける事が出来ます。
ただし、これらの税制優遇を受けるためにはデメリットとして挙げられる項目もあります。
ここでは青色申告のメリットとデメリットについて解説していきます。
・青色申告のメリット
①最大65万円の特別控除が受けられる。
青色申告を行う場合、10万円または65万円の特別控除を受けることが可能です。
単式簿記による記帳を行えば10万円の特別控除を受ける事ができ、取引を複数の科目で記帳する複式簿記による記帳を行えば65万円の特別控除を受けることが可能になります。
②赤字を翌期以降に繰り越すまたは繰戻還付を受けることが可能になる。
個人事業主は3年、法人は10年、過去の赤字を翌期以降に繰り越すことが可能です。
個人事業主の場合には、事業所得や不動産所得で赤字が発生した際に、赤字を翌期以降に3年間繰り越すことが可能です。
この繰り越した赤字については、翌期以降の発生した黒字から差し引くことができます。
また、当期が赤字で前期が黒字である場合には、当期の赤字を前期の黒字から繰り戻して控除し、前期に既に納めた税金の還付を受けることも可能になります。
③家族への給与を経費として計上することが出来る。
個人事業主の場合、原則として親族に対する給与は経費にすることが出来ません。
しかし、青色申告による場合には青色事業専従者給与として経費にすることができます。
④貸倒引当金を経費として計上することが出来る。
青色申告をしている個人事業主の場合には、年末に残っている売掛金や貸付金などの売掛債権や金銭債権に対して、一定の利率を乗じた金額が貸倒引当金繰入として経費に計上することができます。
⑤30万円未満の資産を一度に経費として計上することが出来る。
青色申告をしている場合には「中小企業の少額資産の特例」として、30万円未満の資産については一括で費用計上することが出来ます。
原則としては、10万円以上の資産については取得価額を全額資産計上し、その金額を耐用年数で各期に減価償却することにより少しずつ費用計上することになりますが、青色申告を適用している場合には30万円未満の資産であれば一括で費用計上することが可能になります。
・青色申告のデメリット
青色申告を適用した場合には、上述した内容のメリットが挙げられます。
しかし、青色申告を適用するためには下記のようなデメリットもあります。
①青色申告承認申請書の提出が必要になる。
②正規の簿記の原則に基づき会計処理をする必要がある。
これらのデメリットは事務負担が増大することになります。
青色申告承認申請書の提出期限は、個人事業主の場合には3月15日まで、法人の場合には設立第1期目から青色申告の承認を受けようとする場合の提出期限は、設立の日以後3ヶ月を経過した日と設立第1期の事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日までです。
また、正規の簿記の原則に基づいた会計処理とは、日々の記帳を複式簿記により記帳する必要があります。
◆青色申告が取消しになるパターン
青色申告の適用を受ける為には、正しい会計処理を行い、期限内に申告及び納税をしている事が適用要件となっているので、これらの要件を満たしていない場合には青色申告が取り消される事になります。
ここでは青色申告が取り消される具体的なパターンについて下記内容が挙げられます。
①日々の取引について、正しく会計処理を行なっておらず、帳簿などの資料を法令に基づいた記録や保存をしていない場合。
② 税務調査で帳簿や書類の提示を求められたのに、提示を拒否した場合。
③帳簿書類に仮装・隠蔽がある場合。
④ 2事業年度連続で期限内に申告書の提出がない場合。
以上の項目に該当した場合には、青色申告が取り消される事になります。
◆結論
上述したように、青色申告は白色申告に比べて会計処理や帳簿書類の保管方法などについて、法令で細かく規定されておりますが、青色申告による税制優遇措置はこれらの手間を考慮した場合でも適用する価値があります。
具体的な方法としては最寄りの税務署や税理士へ相談すれば青色申告について説明してくれます。
これから事業を考えている人が青色申告について参考になれば幸いです。