147 相続専門税理士の選び方

2023年8月20日

我が国は近年、高齢化社会となっており、内閣府が公表する「高齢社会白書」によると、令和2年10月1日時点での総人口は1億2,571万人とされております。
そのうち、65歳以上の人口は3,619万人であり、総人口の占める割合のうち28.8%と、過去最高を更新しております。
また、国税庁は令和3年12月に「令和2年分における相続税の申告事績の概要」を公表しました。
これによれば相続税の課税件数は8.8%と、過去最高を更新していることから、今後、相続税の申告件数増加に伴い、税理士へ依頼する件数も増えていくと予想されます。
このような状況において、今回は相続が発生した場合、どういった時に税理士へ依頼した方が良いのか解説していきます。

◆相続に関して税理士に依頼したい!税理士選びが必要な場合と必要ない場合をご紹介!

相続に関して税理士選びが必要な場合は、下記の通りです。
・相続財産は現預金だけでなく、相続人が所有していた土地や建物などの不動産を所有していることが一般的です。
この不動産についても相続財産として相続税を納めるにあたり相続税評価額に含める必要があります。
不動産は現預金と異なり、不動産の評価をする際、所有している物件の周囲環境や所有件数によって相続税評価額の計算が複雑になります。
その為、評価額の計算を行う税理士によって、評価額の計算に大きく違いが出てくるので、相続税の納税額に大きく影響してきます。
よって相続が発生した場合、不動産を所有している際には相続税に強い税理士選びが重要となります。
・相続する財産が多額になればなるほど、正確な相続財産の評価が必要になります。
評価額の計算が大きく誤っていた場合、追徴税や加算税を納税する必要がある為、追加で納める相続税も多額になってきます。
その為、相続財産が多額である場合には相続税に強い税理士選びが必要となります。
・遺産分割協議がまとまりそうな場合、税理士へ依頼した方が良いです。
遺産分割協議がまとまっていない場合に税理士へ依頼してしまうと、弁護士法第72条の非弁行為となることから、税理士が遺産分割協議書を作成するのは禁止されております。
よって税理士に依頼するのは遺産分割協議がまとまった後、相続税の計算や節税を依頼したい場合に必要となります。
・相続税の還付を受けたい場合、税理士へ依頼する必要があります。
上述したように土地などの不動産を多く所有している場合、税理士によって評価額は大きく異なってきます。
既に相続税の申告が済んでいる人でも、相続により取得した財産で広い土地や複数の土地など、高額な土地を相続により取得した場合には、申告期限から5年以内であれば相続税の還付対象となります。
また、相続税の申告を相続専門ではない税理士へ依頼した場合にも、相続専門の税理士へ評価を依頼した方が相続税評価額は大幅に下がり、相続税額も節税出来る可能性が高いです。
よって、相続財産に不動産が多い場合や、相続専門の税理士に依頼せずに相続税の申告をした人は、相続税の申告期限から5年以内であれば、還付を受ける事が可能なので、相続専門の税理士へ依頼する必要があります。

相続が発生しても税理士に依頼する必要がない場合は下記の通りです。
・相続税を算定する課税価格が、相続財産に係る基礎控除額の範囲内であれば、相続税の申告は不要となる為、税理士へ依頼する必要はありません。
相続財産に係る基礎控除額とは、現在の相続税法では「3,000万円+法定相続人の数×600万円」となっております。
例えば、相続人が配偶者と子供2人の場合には「3,000万円+3人×600万円=4,800万円」までの相続財産であれば相続税の申告は不要となる為、税理士へ依頼する必要はありません。

◆相続に強い税理士は費用も高い?相場をチェック!

相続税の知識や経験が豊富な税理士へ依頼する場合、税理士報酬の相場について解説致します。
一般的に、税理士報酬の相場は相続財産の0.5%~1%となります。
ただし、下記項目に該当する場合には、上記相場に報酬が加算されます。
・相続財産に占める割合のうち、土地の評価額が高い場合
・相続財産に非上場株式の評価をする必要がある場合
・申告期限まであまり時間がない為、急いで作業しなければならない場合
・相続税の計算をする上で必要書類が多いなど、作業が煩雑な場合
このような場合には、相場の報酬に加算されるケースもあります。
では相続に強い税理士へ依頼する場合、さらに報酬が加算されるのかというと、そういったことはありません。
むしろ、相続に慣れていない税理士へ依頼した方が報酬は高くなってしまう場合があります。
理由としては、相続に慣れていない税理士の場合には、相続に対する報酬規程を作成していないことも多い為、必要以上に報酬を高く設定されてしまう場合があるからです。

◆相続に関して税理士に依頼するメリット・デメリットとは

相続が発生した場合、税理士へ依頼するメリットとデメリットについて下記項目が挙げられます。
〇メリット
・相続税の申告にあたりミスを防止することができる。
・節税対策をしてくれる。
・税務調査に入られるリスクが減少する。
・時間と労力をかける必要がなくなる。
〇デメリット
・税理士報酬が発生する。
・相続に強い税理士を探すのに手間がかかる。
・税理士に依頼しても予想通りの税額にならない可能性がある。

◆相続税に強い税理士の選び方・見極め方・探し方とは

・相続税に強い税理士の選び方・見極め方について
医師が内科、外科、眼科、皮膚科など様々な分野において個々に専門分野があるように、税理士も所得税、法人税、消費税、相続税などの得意分野があります。
素人からしてみれば、税理士は税金のプロなので、税金の事なら何でも知っているという認識があるかと思います。
しかし、実際は税理士でも得意分野は様々なので、相続に強い税理士を、素人が判断するのは非常に見極めるのが難しいです。
そこで、素人でも相続に強い税理士の選び方・見極め方をご紹介致します。
相続に強い税理士の選び方は、下記のようなポイントに意識して調べてみることをおすすめします。
・税理士事務所のホームページで、年間の相続税申告実績数を確認する。
税理士事務所のホームページを確認すると、「相続税の年間申告件数○○件!」などと謳っている税理士事務所があります。
相続税の申告件数は年々増えており、国税庁の「令和2年分における相続税の申告事績の概要」によれば、令和2年分の相続税の申告書を提出した件数は120,372件であり、令和2年12月31日時点の税理士登録者数が79,293人なので、1人の税理士が相続税の申告を年間で1.5件取り扱うことが予想できます。

上記基準を把握したうえで、この税理士事務所は年間何件の相続税の申告を行っているのか調べるのが相続に強い税理士を選ぶにあたり、重要なポイントになります。
・相続税に特化した税理士事務所であることを確認する。
税理士事務所によっては、法人税や所得税などの税務業務は一切受けておらず、相続税に特化した税理士法人も一定数存在します。
こういった税理士法人であれば、オールマイティーな税務業務を受けている税理士事務所に比べて、相続税の申告件数を数多く経験しており、相続税の知識が豊富な税理士が多数在籍しているので、相続税に特化した税理士事務所を選ぶ事もおすすめの選び方となります。

相続税に強い税理士の探し方について
・税理士事務所のホームページを確認する方法
こちらについては、相続税に特化した税理士事務所であることをホームページ上で確認することです。
上述したように、相続税専門の税理士事務所であれば、相続税に関する知識や経験が豊富です。
ホームページで税理士を探す場合には、税理士事務所自体の業務が何を得意としているか確認する方法が一番相続税に強い税理士を探す上で、効率的な方法です。
・知人などの紹介
一番手っ取り早く、かつ、おすすめなのが知人からの紹介となります。
実際にその税理士に相続税の申告を既に受けたことのある知人から紹介される税理士である場合には、とても信憑性もあり、探す手間も省ける為、この方法が一番おすすめな探し方となります。

◆税理士選びで失敗してしまうポイントを注意点とともにご紹介!

前述した税理士選びをする際に、気を付けておくべきポイントを最後にいくつかご紹介したいと思います。
・知人というだけで依頼した場合
たまたま知人が税理士だった、という場合にその税理士に相続税の申告を依頼してしまうのはおすすめしません。
知人なので税理士報酬を安くしてくれる場合も多く、お願いしたくなる気持ちもわかります。
しかし、相続財産が多額である場合、いくら税理士報酬を安くしてくれたとはいえ、その税理士に相続税の申告経験があまりなければ、かえって相続税額が高くなってしまいます。
いくら税理士報酬が安いとはいえ、相続税額と税理士報酬を合わせた支払いが高くなってしまえば元も子もないので、相続税の申告を依頼する場合には、相続税に強い税理士へ依頼することをおすすめします。
・相続税の経験が少ない税理士へ依頼する場合
こちらについても上述した通り、個々の医師に得意な専門分野があるように、税理士にも個々に得意な専門分野があります。
相続税の評価は10人の税理士がいた場合、10通りの評価額が計算されると言われるほど相続税の評価額が異なってきます。
その為、相続税の申告をする際に高額な相続税額を納める事を回避するためにも、くれぐれも相続税の経験が少ない税理士へ依頼するのはおすすめしません。
以上より、相続が発生した場合、相続財産を多額に保有している場合には、節税は勿論のこと、時間や労力も考えると相続税に強い税理士に依頼することが賢明です。

◆まとめ

今後、高齢化社会は益々進んでいくので相続税に強い税理士が活躍する場面は増えていくと考えられます。
相続が発生した場合には、税理士選びを慎重に行うことをおすすめ致します。