155 役員報酬の損金不算入とは?

2023年9月1日

法人の人件費は大きく分けると「役員報酬」「給与」「雑給」に分けられます。
「役員報酬」は、役員に対する報酬(給与・賞与)となります。「給与」は正社員、「雑給」はパートやアルバイト、派遣社員に対して使用されるのが、一般的となります。
では、「役員報酬と給与・雑給(以下、給与等)との違いは?」「そもそも役員とは何か?」等の疑問点があると思います。
本記事では、役員報酬について記載をしていきます。

●役員報酬の定義と給与等の違いとは?

役員報酬に触れる前に、まずは役員の定義を示します。その後、給与等との違いについて、記載をいたします。

・役員の定義

役員とは、取締役や執行役、監査役等に加え、相談役や顧問でも経営に従事している場合は、役員に該当します。法人税法上の役員に該当する者以外は、使用人と呼ばれます。
役員に対する報酬は、役員報酬となります。

・役員報酬と給与等との違い

役員報酬と給与等の最大の違いは、役員報酬は、「定期同額給与でない場合は、損金算入されない」ということになります。
定期同額給与とは、簡単にいうと、「決算期間中は、毎月同じ金額を支払う」というものです。
利益が出ているから、「期中で役員報酬を増やす」「役員賞与を支給する」ということをすると定期同額給与に該当しなくなるため、増加した分や賞与分は、損金不算入となります。
例えば、50万円の定期同額給与を受けていた役員が、期中から70万円に役員報酬が増額された場合、差し引き20万円は損金不算入となります。また、20万円に減額した場合も定期同額給与が20万円とされ、すでに支払っている50万円との差し引き30万円が損金不算入となります。
また、賞与を100万円支給された場合は、100万円が損金不算入となります。
一方、給与等の場合、使用人の定期的な昇給があっても、損金算入されます。また、臨時賞与を支給されても損金算入されます。

・期中で役員報酬を変更できる方法

役員報酬は、定期同額給与が前提という記載をしました。
しかしながら、一定のルールの下であれば、期中でも変更することが可能です。
それが、通常改定、臨時改定、業績悪化改定となります。
通常改定とは、期初から3か月以内であれば、定期同額給与を改定してよいというものです。3月決算の法人であれば、4月1日から6月30日の間であれば、改定可能です。
臨時改定とは、期中で代表取締役が変わったなどの特別の事情がある場合等が該当します。
業績悪化改定は、経営状況の悪化に応じて、役員報酬を減額することができるというものです。業績悪化改定は、減額だけが対象となり、また、一時的な資金繰りの悪化などによる減額は認められません。

●まとめ

本記事では、役員報酬について記載をしました。役員とは、会社の経営方針を決めることができるため、故意に自らの報酬を変更することも可能です。その抑止力として、定期同額給与と損金不算入制度があります。役員報酬を決める場合は、このことに注意をしてください。