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077 FX投資の税金

FXは外国為替(外国通貨)の売買を、担保にした証拠金の最大25倍(国内口座)の金額で行う取引です。現物の受け渡しをせずに、反対売買の差額(差金)の決済のみを行う、先物取引の一種です。
そんなFXの差金決済には、為替差損益とスワップポイントの二つあります。為替差損益は為替相場の変動による差損と差益、スワップポイントは貨幣間における金利差調整分です。

⒈雑所得

先物取引の差金決済による所得は、原則として雑所得に該当します。
その金額は、総収入金額から必要経費を引いて(控除して)求めます。

⑴総収入金額と必要経費

ここでの総収入金額は決済取引時の売値(転売価格)、必要経費は新規取引時の買値(買建価格)です。売ってから買えば、総収入金額は新規取引時の売値(売建価格)、必要経費は決済取引時の買値(買戻価格)となります。

⑵損失

①国内口座
先物取引の差金決済(国内口座)による雑所得の赤字(損失の金額)は、その年の他の先物取引の差金決済による雑所得の黒字(金額)と相殺(通算)できます。
また、通算しきれなかった金額は、翌年以後3年間の先物取引の差金決済による雑所得の金額から控除できます(損失発生年だけでなく、繰越している間は申告が必要です)。
②国外口座
先物取引の差金決済(国外口座)による雑所得の損失の金額は、その年の他の雑所得(総合課税)の金額と通算できます。

⑵課税方法

①国内口座(申告分離課税)
先物取引の差金決済(国内口座)による雑所得は、その金額に対して税率20.315%により、給与所得などと分けて課税されます。
②国外口座(総合課税)
先物取引の差金決済(国外口座)による雑所得は、その金額に応じて税率15.105%~55.945%により、給与所得などと合わせて課税されます。

⒉事業所得

先物取引の差金決済による所得が事業所得に該当すると、「国外口座」について影響が大きく、損益通算や繰越控除の適用などがあります。

⑴損益通算

事業所得の損失の金額は、その年の他の給与所得などの金額と損益通算できます。

⑵繰越控除

青色申告であれば損益通算しきれなかった金額は、翌年以後3年間の給与所得などの金額から控除できます(損失発生年だけでなく、繰越している間は申告が必要です)。

⒊確定申告不要

会社員など(給与所得者)の給与等の金額が2000万円以下という前提条件はありますが、先物取引の差金決済による雑所得など(給与所得及び退職所得以外の所得)の合計金額が20万円以下の条件を満たすと、原則として確定申告する必要がないため所得税は実質非課税です(住民税の申告は必要です)。

076 iDeCoの節税効果(その二)

⒈具体例

40歳~59歳の20年間、給与収入400万円(給与所得276万円)と所得控除(基礎控除や社会保険料控除など)170万円のDさんが、毎年18万円を20年間にわたり拠出し(360万円)、利回り3%で運用する(490万円)ケースで節税額を計算します。

⑴拠出時
・利用前
(2,760,000-1,700,000)×15.105%=160,100
・利用後
(2,760,000-1,700,000-180,000)×15.105%=132,900
・減少額
(160,100-132,900)×20年=544,000円

⑵運用時
・減少額
(4,900,000-3,600,000)×20.315%=264,000円

⑶受給時
60歳~64歳の5年間、給与収入280万円(給与所得188万円)と所得控除130万円になり、次の「どちらか」の方法で老齢給付金を受給します。
①年金(60歳~64歳)
・利用後
4,900,000÷5年-600,000=380,000(雑所得)
(1,880,000+380,000-1,300,000)×15.105%=145,000
・利用前
(1,880,000-1,300,000)×15.105%=87,600
・増加額
(145,000-87,600)×5年=287,000円
②一時金(60歳)
4,900,000-400,000×20年<0 ∴0(退職所得)
・増加額
87,600-87,600=0円

⑷節税額
①年金
⑴+⑵-⑶①=521,000円
②一時金
⑴+⑵-⑶②=808,000円

⒉結論

拠出時と運用時における税金の減少額の合計が、受給時における税金の増加額を「上回れば」節税できます(多くのケースで上回ります)。

⑴拠出時

事業所得や給与所得などの金額から小規模企業共済等掛金控除額を控除するため、掛金分に応ずる15.105%~55.945%の税金が減少する可能性があります。
ただし、住宅ローン控除や医療費控除などの適用を受けると、減少する可能性が低くなります。

⑵運用時

本来課税されるはずの運用益に対する20.315%の税金が減少します。
しかし、ある程度の運用益を出すためには、預貯金や保険ではなく、投資信託等で運用する必要があります。
なお、専門機関である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の利回りは3%程度です。

⑶受給時

老齢給付金の収入金額から公的年金等控除額や退職所得控除額を控除した残額に応ずる、15.105%~55.945%(一時金はその½)の税金が増加する可能性があります(一時金で受給する方が増加する可能性は低くなります)。
ただし、他に国民年金や厚生年金、退職金を受給すると、増加する可能性が高くなります。

075 iDeCoの節税効果(その一)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、老後資金が不足しがちな個人事業主の方にオススメです。しかし、皆さんには「節税できる年金」として有名だと思います。
そこで、「本当に節税できるのか?」を確認していきます。

⒈拠出時

iDeCoは60歳未満(会社員などは65歳未満)の方が加入でき、次の職業に応じて掛金の支払える(拠出できる)上限額が決められています。
・個人事業主などは国民年金基金と合わせて81.6万円
・会社員や会社役員は27.6万円など
また、その掛金は全額を「小規模企業共済等掛金控除額」として、事業所得や給与所得などの金額から引けます(控除できます)。

⒉運用時

預貯金や保険、投資信託等に「自分で」運用しますが、原則として途中で解約や売却できません。
また、その運用益は「非課税」です。

⒊受給時

60歳以上75歳未満の方が老齢給付金の受給を開始でき、その受給方法を年金(受給期間5年以上20年以下)にすれば雑所得、一時金にすれば退職所得として課税されます(併給もできます)。

⑴雑所得

iDeCoの老齢年金に係る所得は、雑所得(公的年金等)に該当します。
その金額は、老齢年金の収入金額から「公的年金等控除額」を控除して求めます。公的年金等控除額は次の年齢に応じた金額です。
・65歳未満 60万円~195.5万円
・65歳以上 110万円~195.5万円

①源泉徴収
iDeCoの老齢年金の支払を受ける際には、その収入金額に対して、税率7.6575%により源泉徴収されます(確定申告すれば源泉徴収税額は控除できます)。

②総合課税
雑所得(公的年金等)は、その金額に応じて税率15.105%~55.945%により、事業所得や給与所得などと合わせて課税されます。

⑵退職所得

iDeCoの老齢一時金に係る所得は、退職所得に該当します。
その金額は、原則として老齢一時金の収入金額から「退職所得控除額」を控除した残額を½にして求めます。退職所得控除額は次の勤続年数(老齢一時金は加入期間)に応じた金額(最小80万円)です。
・20年以下 40万円×勤続年数
・20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)
ただし、次の「いずれか」の条件を満たすと、勤続年数の重複分を控除できないため、退職所得控除額は減少します。
・老齢一時金と同じ年に他に退職金を受給するとき
・老齢一時金を受給する年の前年以前19年以内に他に退職金を受給したとき
・老齢一時金を受給した年の翌年以後4年以内に他に退職金を受給するとき

①源泉徴収
iDeCoの老齢一時金の支払を受ける際には、退職所得の金額に応じて、税率15.105%~55.945%により源泉徴収されます。

②申告分離課税
退職所得は、その金額に応じて税率15.105%~55.945%により、事業所得や給与所得などと分けて課税されますが、原則として申告は不要です。

074 法人成りのメリットとデメリット

事業を行う上で考えるべきこととして、税金が挙げられます。
多くの個人事業主は事業を継続し、発展させていくために多くの時間を費やしております。
失敗すれば財産の全てを手放す覚悟で事業に取り組んでいる為、事業で稼いだお金の何割かが税金として支払われる上で、税金の知識は必要不可欠になります。
個人事業主が税金を少しでも安く済ませる事が出来る節税手段として、法人成りというものがあります。
この法人成りについて解説していきたいと思います。

法人成りの意義

法人成りとは、個人で事業を行っている個人事業主やフリーランスが、その後に法人を設立し、法人として事業を継続していくことを言います。
ポイントは最初から法人として事業を開始する場合には、法人成りとは呼ばず、すでに個人で事業を始めており、その事業を途中から法人として継続していくことを法人成りと言います。

近年では、グローバル化やITの発展によって、様々なサービスを受ける事が出来る時代となりました。その反面、他社との差別化を図る為、収益力や効率化を要求される競争社会でもあります。
このような社会環境により、倒産数が増加している時期もありますが、平成18年の会社法改正により、法人設立数が増加しているのも現状です。
平成18年の会社法改正とは、従来は法人設立の要件として、株式会社は資本金1,000万円、有限会社は資本金300万円が最低必要となっていましたが、この改正により、その要件が撤廃され、資本金1円あれば法人を設立することが可能となりました。

しかし、法人設立の要件が緩和されたとはいえ、法人成りすることによるデメリットもありますので、以下では法人成りした場合のメリットとデメリットについて解説していきたいと思います。

法人成りのメリット

法人成りのメリットは以下6つの項目が挙げられます。
・社会的信用力が増大する。
法人になるには、登記が必要であり一定の法的制約はありますが、登記されることによって公示されるので、取引の安全性や社会的信用力は高まります。

・責任範囲が有限責任である。
個人事業主の場合、倒産時の債務弁済にあたり、事業主の全財産を処分する無限責任となります。しかし、法人の場合には、債務弁済については出資した範囲内の責任とされる有限責任となるので、事業規模拡大により負担する額も大きくなる場合にはリスク回避が可能となります。

・事業承継が容易である。
個人事業主の場合、死亡した際に個人名義の預金口座が凍結されるなど、事業に支障が生じます。
一方で法人の場合には、代表者が死亡した際、預金口座が凍結されるといった事はなく、法人の事業が行えない事態になるといったことはありません。
また、法人は個人とは別人格であるため、代表者が死亡した場合であっても、後継者により法人の事業を継続することが出来ます。
なお、代表者変更はいつでも容易に可能である為、個人事業者に比べて法人の場合には事業承継が容易となります。

・給与所得控除が利用できる。
給与所得控除とは、一言でいうと会社員の為の経費です。
個人事業主の場合、事業により得ることが出来た収入から必要経費を控除した差額(以下「所得」と言います。)から納税額を計算します。
法人の場合、収益から必要経費を差し引いた所得は、代表者個人ではなく、法人に帰属します。法人が代表者へ報酬を支払った際には法人の経費として認められることに加えて、代表者個人では法人から受領した報酬から給与所得控除を差し引いた所得を基に納税額が計算される為、個人事業主に比べて有利に働きます。

・欠損金の繰越が9年間可能となる。
個人事業主の場合、損失の繰越しは3年間となっております。
法人の場合、欠損金を9年間繰り越すことが可能となります。
大きな損失が発生した際に、個人事業主であればその後3年先の期間における利益と相殺出来るのに対して、法人であればその後9年先の期間における利益と相殺できます。
法人は個人事業主に比べて欠損金を繰り越せる期間が長い為、個人事業主に比べて有利となります。

・消費税が2期免税になる。
消費税の納税義務者の要件として、2期前(以下「基準期間」と言います。)の課税売上高が1,000万円以下の場合には消費税の納税義務が免除されます。(以下「免税事業者」と言います。)
よって、法人成りした設立1期目と2期目は、基準期間がないので消費税の納税義務が免除されることになります。
この消費税が2期免税となる点について注意すべき点があります。
それは令和5年10月1日からインボイス制度が導入される事になりますが、このインボイス制度導入は免税事業者にとって、非常に不利な影響を与えることとなります。
インボイス制度の導入により、免税事業者に不利な影響とは、そもそも欧州ではすでに我が国とは異なり、インボイス制度を導入しております。欧州のインボイス制度では、インボイスを発行出来るのは適格請求書発行事業者(注)に登録している事業者のみに限定されております。
そして、仕入税額控除の適用を受ける為にはこのインボイスを発行出来る適格請求書発行事業者からの仕入れでないと仕入税額控除の適用を受けることは出来ません。言い換えると免税事業者からの仕入れは、仕入税額控除の適用を受けることが出来ないということです。
現在の我が国の消費税制度においては、取引先が課税事業者であっても、免税事業者であっても仕入税額控除の適用を受けることが出来ます。
その理由としては我が国の消費税制度においては、軽減税率制度が導入される前は消費税率が単一税率であり、非課税項目が消費税法で限定されている事、請求書に消費税額が記載されているため消費税額の計算が容易である事などが挙げられる為、課税事業者からでも免税事業者からでも仕入税額控除の適用を受ける事が出来ます。
しかし、我が国においてもインボイス制度が導入されると、欧州のインボイス制度と同様に、免税事業者と取引をしている事業者は、インボイスを発行することが出来ない免税事業者からの仕入れについては仕入税額控除の適用を受けることが出来ないため、インボイスを発行することが出来る適格請求書発行事業者へと取引先を変更する可能性があります。
よって、免税事業者はインボイス制度導入後、取引から排除される可能性が高いので非常に大きな影響を受けることになります。
その為、インボイス制度導入後には免税事業者は課税事業者となる必要がある点に注意が必要です。

(注) 適格請求書発行事業者とは、下記2要件を満たす事業者を言います。
・「適格請求書発行事業者の登録申請書」をインボイス制度が導入される令和5年10月1日の6カ月前である、令和5年3月31日までに納税地を所轄する税務署長へ提出する必要があります。
・免税事業者の場合には、まず課税事業者となる必要があります。課税事業者となるには「課税事業者選択届出書」の提出が必要です。

法人成りのデメリット

法人成りのデメリットは以下5つの項目が挙げられます。
・赤字でも税金がかかる。
個人事業主が赤字の場合には、所得税や住民税、事業税などの税金を支払う必要はありません。
しかし、法人が赤字の場合、法人住民税均等割というものが発生してきます。
法人住民税均等割は、資本金の額や従業員数によって税額は異なりますが最低7万円の納税が必要となってきます。

・社会保険に強制加入する必要となる。
個人事業主の場合、社会保険の加入義務は従業員数が5名未満であれば任意加入となります。
法人の場合には、代表者1名の一人社長であっても社会保険へ強制加入が義務化される為、社会保険料の支払いが発生してきます。

・登記費用が必要となる。
個人事業主の場合、登記費用は不要です。
法人の場合、設立時に登記費用が必要となり、定款認証、登録免許税、司法書士報酬など20万円以上は必要となってきます。

・税務調査が入りやすくなる。
個人事業主の数と法人数を比較した場合、法人数の方が少ないことや法人の方が事業規模が大きいことから、個人事業主に比べて法人の場合には、税務調査に入られる可能性が高くなっております。

・事務負担が増大する。
法人の場合、会計処理も個人事業主に比べて厳密な処理が求められることや、社会保険などの手続きも毎年行う必要があります。
また、役員の変更登記や株主総会の開催などの事務負担も個人事業主に比べて増大します。

結論

最後に法人成りした方が良い人は、どのような人なのかを解説したいと思います。
法人化する一番のメリットは節税です。
個人事業主が納める税金は所得税であり、法人が納める税金は法人税です。
両者の違いは税率になります。
所得税は所得が多くなるほど税率が高くなる累進税率であるのに対して、法人税の税率は一定となっております。
そのため、所得の多い人は法人化して税金を法人税で納める事が節税につながる為、上述したメリット・デメリットを踏まえた上で、所得が多くなり、所得税率よりも法人税率が低くなった人は法人成りすることをおすすめ致します。

 

073 法人化するメリット・デメリット、法人化におすすめな人は?

日本では近年、新型コロナウイルスの流行による影響も大きく、企業は従来の働き方を見直す動きが求められてきています。
時間外労働の上限が原則、月45時間・年360時間となったり、労働基準法の改正によって、有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、年間5日の有給休暇を取得させるように義務づけることや、フレックスタイムによる労働時間の清算期間が延長され、従来は1カ月であったのに対して3カ月に延長されたことにより、従来よりも長い期間の労働時間の範囲内で、労働時間を柔軟に調整することが可能になったことなどの動きが見られます。
また、新型コロナウイルスの流行に伴い、自宅でリモートワークを行う労働者の方も増え、副業などを実施する人も増加しております。
副業としては様々な働き方がありますが、自分で法人を設立し、事業を行う人も近年では急増しております。
今回は法人化をした場合のメリット・デメリットを紹介するとともに、法人化におすすめな人について解説していきます。

法人を設立する流れ

まず、法人化した場合のメリット・デメリットを紹介する前に法人を設立する流れについて簡単に解説していきたいと思います。
法人を設立するには以下の流れになります。

1 会社概要について作成

法人を設立するにあたり、まずは法人の目的、商号、本店所在地、資本金の額、発行可能株式総数、事業年度、設立時の代表取締役や取締役などの役員の決定をします。

2 定款の作成及び認証

上記1で紹介した内容を文書にまとめた定款を作成します。
定款とは会社のルールです。
この定款を作成したあと、定款が法令に基づいて作成されたことを証明するために公証役場より証明を受ける必要があります。
この証明を受けることを定款認証と言います。

3 資本金の払い込み

次に上記において資本金が確定したら、発起設立の場合には発起人が払い込み、募集設立の場合には出資者全員が、発起人または設立時における取締役のうち代表者の銀行口座へ払い込みを行います。

4 登記申請書類の作成・提出

定款認証が完了後、会社の設立登記を行います。
登記をするためには会社名や本店所在地などを記載した登記申請書を作成します。
そのほかに、役員の就任承諾書や会社実印の印鑑登録や登録免許税なども必要になってきます。
これらが準備出来たら法務局へ登録申請書を提出します。
この登記申請書を提出した日が法人設立日となります。

法人化のメリット

法人化するにあたりメリットはいくつか挙げられますが、主に下記内容が考えられます。

・対外的信用力の増大につながる点

法人になるには上述したように登記が必要になります。
登記をすることによって公示されるため、社会的信用力も増大することにつながります。

・金融機関や投資家への信用力の増大につながる点

法人は会計上、個人の勘定と法人の経営資金との区別を強いられますが、財産管理が整備され、損益・収支が明瞭になるので、金融機関や投資家は明確な判断ができ、融資を受けやすくなります。

・人材確保につながる点

求人募集も働き手にとって社会的信用力が高まるため、個人経営より法人の方が優秀な人材が集まりやすいので、人材確保という点でも有利に働きます。

・内部管理・組織統制がとれる点

一般的に従業員が増加すると管理するのが困難になるため、管理組織が必要になってきます。法人化することによって、責任所在を明確にし、管理業務の効率化を図ることへ繋がります。

・マイクロ法人を設立し個人事業と併用することで節税に繋がる点

マイクロ法人とは、株主と会社の代表者が同一人である小さな会社の事を言います。
法人化のメリットはこのマイクロ法人を設立することによって、個人事業主として稼いだ収入をマイクロ法人へ移し、そのマイクロ法人から給料を受け取ることによって給与所得控除が受けられるため、節税に繋がります。

その他にも、法人化した場合には、社会保険による保障が受けられる点、欠損金の繰り越しが10年間可能となる点、決算期を自由に決められる点、家族への給与が経費にすることが出来る点などが挙げられます。

法人化のデメリット

法人化した場合、社会的信用力が得られる反面、デメリットもいくつか挙げられます。
・法人設立にあたって事務負担のかかる登記手続きや設立費用がかかる点
・法人のお金を自由には使用できない点
・複式簿記により帳簿作成をする必要がある点
・法人の維持コストや事務処理等の負担が大きくなる点
・重要事項の決定である場合には、毎回、株主総会決議が必要になる点
・交際費の損金算入において、上限額が設定される点
・社会保険へ強制加入となり、保険料のコストがかかる点
・税務調査に入られやすくなる点
・赤字であっても毎年必ず、法人住民税の均等割がかかってくる点

法人化するのにおすすめな人

法人化をおすすめする人は下記2つのケースが考えられます。

1 所得税と法人税を比較して納税額を減少出来るタイミング

個人事業を行っていた人が事業を進めていくにつれ課税所得が増加してきた場合、法人化したことによって、納税額を減少出来るタイミングがあります。
このタイミングは、所得税率と法人税率を比較してシミュレーションする必要があるので、その際には税理士へ相談するとよいでしょう。

2 消費税の納税をするタイミング

過年度の売上高を確認し、一定の金額を超えるタイミングに合わせて法人化することによって、消費税の納税を向こう2年間免除することが可能になります。
ただし、2023年10月1日から導入されるインボイス制度によって、このタイミングは今後、考える必要はなくなりますので注意が必要です。

結論

法人化のメリット・デメリットを解説し、法人化するのにおすすめな人を紹介しました。
法人化するタイミングとしては、従来は消費税の納税を避けるためにこの方法は節税策との1つとして挙げられてきましたが、上述したようにインボイス制度の導入により今後は消費税の納税を避ける方法としては使用できなくなるので、法人化するタイミングには従来同様には考えないようにすることが注意点として挙げられます。

 

072 租税公課ってなに?

私たちが日本で生活していく上で、税金は必ず支払わなければなりません。
また区役所などで住民票の写しを発行した場合でも発行手数料がかかります。

租税公課とは、上記のような国税や地方税などの税金である「租税」と、公共団体などに対する交付金や会費などの公的な課金である「公課」を合わせた
科目をいい、損益計算書の費用項目として取り扱われます。

今回はこの租税公課について、どの様に取り扱われるのか解説していきます。

経費として計上できる租税公課

租税公課を支払うにあたり、租税公課であればすべて経費に計上することが出来るかという問題について、結論としては全額を経費に計上することは出来ません。
確定申告を行うにあたって経費として計上できる租税公課は、事業に関連して発生した租税公課である必要があります。
その中でも経費として計上できる租税公課の代表的なものは以下の通りです。
・法人事業税
・事業所税
・印紙税
・固定資産税
・自動車税
・軽油引取税
・ゴルフ場利用税
・入湯税など

実務上、経費に計上できるものは上記のようなものが挙げられますが、個人事業主の場合に問題となるのが例えば自動車税を挙げて解説すると、プライベートで使用している車両を事業でも使用している場合には、事業共用割合の分だけが経費として計上することができるので、プライベートと事業の両方で使用している場合には全額が経費として計上することはできないという事も考慮すべき内容となります。

また、上記租税公課の納付方法は以下の3つに区分することができるので、納付方法別に解説します。
・申告納税により納付する租税公課
申告納税とは、確定申告を行った結果により納税額を自分で計算する方法になります。
申告納税により納付する租税公課は、法人事業税や事業所税などが該当します。

・賦課決定により納付する租税公課
賦課決定とは、国側が納税額を計算して納付する方法になります。
賦課決定により納付する租税公課は、固定資産税や自動車税が挙げられます。

・特別徴収により納付する租税公課
特別徴収とは、国や地方公共団体が本来の納税者から直接、納税させるのではなく、特別徴収義務者である事業者が納税者に代わって納税する方法を言います。
特別徴収により納付する租税公課は、軽油引取税、ゴルフ場利用税、入湯税を言います。

経費として計上できない租税公課

経費として計上できる租税公課は事業に関連して発生したものであることは上述した通りです。
一方で経費として計上できない租税公課は、事業とは関連しないものが該当します。
代表的なものは以下の通りです。
・法人税や地方法人税
・法人都道府県民税
・法人市町村民税
・延滞税
・不納付加算税
・過怠税
・交通反則金

これらは経費として計上することはできません。
また、上記内容のものは以下の2つに大きく分けることができます。

・税引き前当期純利益から支払うもの
法人税や地方法人税、法人都道府県民税、法人市町村民税は会社のもうけである所得金額に対して税額が確定します。
そういった税金は経費として計上することはできません。

・反則金や延滞金などの違反金に該当するもの
上記のうち、延滞税や不納付加算税、過怠税、交通反則金などの租税公課は罰則により発生するものです。
これらの罰則として発生した租税公課を経費とすることは罰則の意味が薄れることから経費として計上することができません。

実務経理上の処理方法

実務上、上記の租税公課が発生した場合には勘定科目をどのように表示する必要があるか解説します。

・租税公課という勘定科目で処理するもの
租税公課として処理するものは、一般的には法人税や法人都道府県民税や法人市町村民税以外の項目となります。
基本的には、所得金額の計算結果によって算定される法人税等以外は租税公課として処理します。

・法人税等
法人税等として処理するものは、法人税や法人都道府県民税や法人市町村民税となります。
こちらについては、所得金額に対して算定されるものが該当します。

・預り金
預り金として処理するものは、給料に対して発生する源泉所得税や住民税が該当します。
これらは会社が負担するものではなく、従業員が負担するものであるので、会社はあくまでも従業員から一度預かり、従業員に代わって国や市区町村へ納付するものになるため、預り金という勘定科目で処理します。

結論

以上が租税公課の意味や経費として計上することができるものとできないもの、会計処理を行う上での勘定科目の表示方法について解説してきました。
租税公課と一言でいっても内容の違うものが非常に多く、経理初心者の方は最初どのように処理すべきか悩む項目の1つとして挙げられます。
会計上では経費として処理するが、税務上では経費として処理できないものが挙げられるので、非常に理解しにくいかと思います。
経費として計上することができるかどうかのポイントは、「税引き前当期純利益から支払うもの」と「反則金や延滞金などの違反金に該当するもの」は経費として計上できないということを理解し、それ以外は経費として計上できるものと理解しておけばよいかと思います。

 

071 青色申告と白色申告のメリット・デメリット

個人事業主が確定申告をする場合、「青色申告」と「白色申告」の2つの方法のいずれかにより確定申告を行うことになります。
「青色申告」とは、複式簿記により会計処理を記帳する方法になり、貸借対照表や損益計算書などの一定の帳簿を備えつけ、その記録に基づいて確定申告を行うものとなります。
「白色申告」とは、帳簿作成が簡単な方法により確定申告を行う方法であり、青色申告とは異なり、複式簿記により会計処理を記帳する方法をする必要はなく、簡易簿記と呼ばれる簡単な方法で会計処理を記帳した記録に基づいて確定申告を行う方法になります。
一般的に青色申告は、節税メリットが白色申告に比べて大きいと言われているため、以下では青色申告のメリット・デメリットについて解説していきたいと思います。

「青色申告」のメリットについて

青色申告を行うためには、青色申告の適用を受けたい年の3月15日までに、「青色申告承認申請書」を管轄税務署へ提出することにより、下記内容の青色申告のメリットを享受することが可能となります。

青色申告特別控除の適用を受けることが出来る

青色申告の最も大きな節税メリットとして、計算した所得から最大65万円を控除したうえで納める税金を計算することが出来るというものです。
この65万円控除のことを「青色申告特別控除」と言います。
経費などのお金を支払うことなく所得から65万円を控除できる為、この65万円控除が適用をされているか否かでも納税額は非常に大きく異なります。
なお、この青色申告特別控除の手寄与を受ける為には、複式簿記により帳簿を作成する必要がありますが、市販の会計ソフトを利用することにより、簡単に複式簿記により帳簿を作成できるので、簿記の知識がない方でも非常におすすめです。

家族へ支払う給料を経費にすることが出来る

例えば、夫が個人事業主として家族で事業を営んでいる場合、事業を手伝っている妻に給料を支払っても原則としてその給料は経費とすることは出来ません。
しかし、青色申告をしている人で、家族への給料について「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ提出している場合には、家族へ支払った給料が経費として認められます。
ただし、この「青色事業専従者給与に関する届出書」には提出期限があり、原則として給料を経費としたい年の3月15日までにこの届出書を提出しておく必要があります。
また、注意点としては、届け出た金額の範囲内までが経費として認められることや、給料を支払う家族が1年間のうち、6カ月を超える期間、事業に専従している事などの要件がある点に注意が必要です。

純損失の繰越控除を利用することが出来る

事業を行うにあたり、毎年安定して儲けが出れば良いのですが、経済環境の悪化などにより、赤字になってしまう年もあります。
通常は、その年の赤字はその年だけで扱われてしまい、他の年度における儲けの計算に影響させることは出来ません。
しかし、青色申告を選択していれば、事業で赤字が出た場合、その翌年から3年間にわたって、赤字を繰り越して、その3年間のうちに生じた儲けから控除することが出来る「純損失の繰越控除」が認められます。

貸倒引当金を計上することが出来る

売掛金が回収出来れば問題ないのですが、請求後に得意先が倒産した場合には、売掛金の回収が出来なくなることがあります。
このことを貸倒れと言います。
通常、売掛金として計上された金額は、その年の売上として儲けの計算に含まれ、その分の税金を支払うことになります。
しかし、青色申告を選択している場合には、12月末時点での未回収に対する売掛金に、一定の方法で計算した回収不能見込額を、その年の経費として計上することが出来る「貸倒引当金」を計上することが可能となります。

「青色申告」のデメリットについて

青色申告のデメリットとしては、下記項目が挙げられます。
・会計記帳を行うのが難しい点
・税務署から目を付けられやすくなる点
・現金主義を採用している場合、青色申告特別控除額が減額される点
青色申告を採用している場合、原則として複式簿記により記帳をしなければなりません。会計知識が乏しい経理初心者の場合にはこのデメリットは大きな事務負担となります。
また、複式簿記は貸借対照表か損益計算書のいずれかに誤りがあった場合には、数字が一致しなくなる為、計算ミスに気付くのが容易となっております。
よって、計算ミスがあった場合に税務調査が入った際にそのミスについて指摘された場合、すぐさま不正とみなされてしまいます。
さらに、個人事業主の方のほとんどが売り上げを計上するタイミングは現金が入金された時点で売上計上する「現金主義」を採用しておりますが、税務署は売り上げを計上するタイミングは、商品の引き渡しや役務提供が完了した時点で売り上げを計上する「発生主義」を重視しております。
よって、現金主義を採用している人は青色申告特別控除額が65万円から10万円に減額されてしまいます。

以上、青色申告は税金を安くできる反面、事務負担が増大するという点がデメリットとなります。

結論

以上、青色申告と白色申告の違いを解説し、青色申告のメリット・デメリットについて紹介しました。
今後、個人事業主として生計を立てていく場合には、少しでも税金を安く抑えるために面倒でも、会計帳簿の作成を通して売り上げや経費をしっかりと集計していればそのご褒美として税金面で特典を受けることが出来る青色申告を選択することをおすすめします。

070 所得控除ってなに?何種類あるの?

我が国は高齢化社会により、国の財源が減少傾向となっております。
国の財源を確保するためには、国民から税収を上げる必要があり、税金や社会保険料などが年々増加してきております。
このような状況下で、国民一人一人の事情を考慮した対応をしないと貧富の格差が拡大してしまいます。
所得控除とは、個人の事情を汲み取り、状況に応じた税制優遇の事を言います。
この所得控除について、解説していきたいと思います。

所得控除とは

納税は国民の義務であると同時に、国民一人一人が公平な負担になるように設けられております。
国民が納める税金の計算は、売上から経費を引いた所得から、さらに国民一人一人の事情を考慮した所得控除を差し引いて計算されます。
例えば同じ年収のサラリーマンが2人いたとします。
Aさんは独身であり、Bさんは配偶者と子供1人と仮定します。
同じ年収の2人ではありますが、同じ税金を納めるのは公平な負担と考えられるでしょうか。
Aさんは独身なので、生活費は少なく済みます。
一方で、Bさんは配偶者と子供の食費や教育費などもかかってきてしまうため、Aさんに比べて自由なお金は手元に残りません。
そういった場合に、Bさんには税金を安く抑えることのできる税制優遇が設定されております。
この税制優遇のことを所得控除といいます。
所得控除の種類は全部で14種類あります。
以下ではこの14種類の所得控除について、解説していきます。

14種類の所得控除について徹底解説!

14種類の所得控除は大きく物的控除と人的控除の2種類に分けることが出来ます。
物的控除とは社会政策的な配慮による所得控除であり、人的控除とは個人的事情への配慮による所得控除になります。

物的控除

・雑損控除について
雑損控除とは、通常生活する上で必要な家財や現金などの生活用資産について、災害や盗難などが発生し、その資産に損害を受けた場合にその資産の原状回復などをするためにやむを得ない支出をした場合に受ける事のできるものとなります。

・医療費控除について
医療費控除とは、本人やその本人と生活を共にする家族などの為に医師へ支払う診療代や治療のための医薬品の購入代が一定額以上超過した場合に受ける事のできるものとなります。

・社会保険料控除について
本人やその本人と生活を共にする家族などが負担すべき社会保険料を支払ったまたは給料から控除された場合には、その支払ったまたは控除された金額に対して受ける事のできるものとなります。

・小規模企業共済等掛金控除について
本人が、小規模企業共済等掛金や確定拠出型年金法に規定する個人型年金の掛け金を支払った場合に受ける事のできるものとなります。

・生命保険料控除について
本人が、一般の生命保険契約や個人年金保険契約等、介護医療保険契約等の保険料または掛金を支払った場合に受ける事のできるものとなります。

・地震保険料控除について
平成18年度の税制改正により、損害保険料控除が廃止され、地震保険料控除が新たに設けられました。平成19年分以後の所得税については、損害保険契約等のうち、地震損害部分の保険料を支払った場合に適用を受ける事ができます。

・寄付金控除について
2,000円を超える国または地方公共団体に対する寄付や日本赤十字社など特定公益増進法人に対する寄付をした場合に受ける事のできるものとなります。

人的控除

・障害者控除について
本人または配偶者控除の適用を受けられる配偶者や扶養親族が障害者や特別障害者である場合に受ける事のできるものとなります。
なお、障害者控除は扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族も対象になります。

・寡婦(寡夫)控除について
配偶者と死別し、または離婚した後に、婚姻していないなど所得税法上の寡婦(寡夫)に該当する場合に受ける事のできるものとなります。

・勤労学生控除について
本人が、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学の学生といった勤労学生に該当する場合に受ける事のできるものとなります。

・配偶者控除について
本人の合計所得金額が1,000万円以下であり、本人と生計を一にしている合計所得金額が48万円以下の配偶者がいる場合に受ける事のできるものとなります。

・配偶者特別控除について
本人の合計所得金額が1,000万円以下であり、本人と生計を一にしている合計所得金額が48万円超で133万円以下の配偶者がいる場合に受ける事のできるものとなります。

・扶養控除について
本人に年齢16歳以上の扶養親族がいる場合に受ける事のできるものとなります。

・基礎控除について
本人の合計所得金額に応じて控除額が48万円から16万円の基礎控除額が受けられるものとなります。

結論

所得控除とは、各人の事情を加味した公平な税負担を実現するための税制優遇となります。
これらの所得控除を受けるには、必要な手続きがありますので、このような制度を十分活用するために、税制改正には常に理解しておきましょう。

069 交際費の範囲は?どこまで経費にできるの?

個人事業主や法人の節税策として、経費を増やすことが一般的に考えられます。
経費項目として「交際費」が挙げられ、この交際費は取引先や会社関係者の方と円滑に事業を遂行していくうえで必要な経費とされます。
近年では新型コロナウイルス感染拡大防止のために、居酒屋などの飲食店は営業時間の短縮を強いられてしまい、日本国民はこれまでと比べて飲食店を利用する機会が減少傾向になっております。
そのため、飲食代などの交際費も減少傾向となっておりますが、取引先などとの円滑なコミュニケーションを図るためには交際費の支出は必要不可欠なものとなります。
今回はこの交際費について解説していきたいと思います。

交際費とは

交際費とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの」と定義されます。

上記より、交際費とは取引先などの会社関係者に対する飲食代などの接待費や、お中元・お歳暮などの贈答品費を言います。

交際費の範囲

交際費は上述した通り、取引先との飲食代などが該当します。
ただし、下記内容のものについては交際費には該当しません。
・専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用

・取引先などの外部関係者との飲食などのために要する費用であって、一人当たりの金額が5,000円以下である飲食代にかかる費用
なお、この規定は次の事項を記載した書類を保存している場合に限り適用されます。
①飲食などのあった年月日
②飲食などに参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係
③飲食などに参加した者の数
④その飲食などに要した費用の額、飲食店の名称および所在地(店舗がない等の理由で名称または所在地が明らかでないときは、領収書等に記載された支払先の氏名または名称、住所等)
⑤その他飲食などに要した費用であることを明らかにするために必要な事項

・カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用

・会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用

・新聞、雑誌などの出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のために、または放送のための取材に通常要する費用

以上のものに該当した場合、交際費とはならず、福利厚生費、会議費、広告宣伝費などとして経費計上が可能となります。
交際費に該当した場合、後述するように無制限に経費として計上することは出来ません。
具体的に交際費について、いくらまで経費計上することが出来るか解説していきます。

どこまで経費にできるの?(交際費の損金算入限度額)

日本で初めて交際費の制度が創設されたのは昭和29年になります。
昭和29年当時の経済情勢は好況であり交際費の過剰な支出が目立っておりました。
当時は「社用族」という言葉も生まれた時代であり、社用族とは会社のお金で飲食や遊興する人のことを指します。
このように交際費の濫費が当時は大変目立っていたことから、国としては交際費を無制限に経費として認めてしまうと企業の資本蓄積がなかなか出来ないため、交際費に一定の制限を設けることとしました。
以下、具体的にどこまで経費として交際費を計上することが出来るか解説していきたいと思います。

まず、交際費は原則として全額が経費として計上する事は出来ません。
ただし、個人事業者の場合には法人とは異なり、交際費に限度額はなく、いくら使っても経費として計上することが出来ます。
一方で、法人の場合には資本金によって経費として計上することが出来る限度額が異なってきます。

・事業年度終了の時における資本金または出資金が1億円以下の法人の場合
年間800万円または接待飲食費の50%のいずれか大きい金額を限度額として交際費を経費として計上することが出来ます。
・事業年度終了の時における資本金または出資金が1億円超の法人の場合
接待飲食費の50%までを交際費として経費に計上することが出来ます。

以上より、交際費を計上する場合、個人事業主と法人によって経費に計上することが出来る金額が異なってきます。

交際費に該当するための条件

交際費は、税務署の調査が入った際には細かい点までチェックされる勘定科目となります。
しかし、仕事に関係する交際費であれば、遠慮せずに交際費として経費計上すべきです。
直接仕事に関係した交際費だけでなく、間接的に関係する費用も含めて問題ありません。
飲食などを一緒にすることによって、仕事上、有益な情報を得ることが可能であれば十分に交際費に該当します。

交際費に該当するための条件としては、大まかに挙げると以下3点に該当している場合に、交際費として計上可能です。
・人と会っているかどうか
・仕事上の会話をするかどうか
・全額自分が支払いをしているかどうか
上記内容のものについて、領収証などの証憑書類をしっかりと保管していれば、十分に交際費に該当します。

 交際費が適用されるかどうかの具体的なシチュエーション

交際費は、取引先や目的など様々なケースが考えられるため、一般的にその判断は難しいとされております。
以下では、交際費かどうかの具体的な例をご紹介します。
・寄附金に該当するケース
政治団体や神社の祭礼などの場合に支出する金銭は、取引先など直接事業とは関係しない者に対する支出であるため、交際費には該当せず、寄附金に該当します。

・福利厚生費に該当するケース
社員旅行や社内行事に際して支出する金銭は、支出する相手が外部関係者ではないため、交際費には該当せず、福利厚生費に該当します。

・給与に該当するケース
交際費という名義で支給した金銭について、実際には法人の業務のために使用したことが明らかでないものは、交際費には該当せず、給与に該当します。

結論

以上、交際費について解説してきました。
経費としては様々な科目がありますが、その中でも交際費については税務調査の際には注意すべき科目の1つであるので、何でもかんでも交際費として経費計上することは問題になります。
しかし、上述したように仕事に関係したものであれば、遠慮なく経費計上することが節税にもつながってきますので、領収証の保管も忘れずに経費計上することが今後の事業を行う上でも大切なことになってきます。

068 個人事業主の食費って経費にできるの?

日本では働き方改革によって多様な働き方をする人が増えてきております。
また、新型コロナウイルスの流行に伴い、会社に勤務する人は自宅からリモートワークをする人が増加し、時間的余裕が生まれ、その時間で個人事業主として副業をする人が多くなってきております。
会社勤務の人であれば会社が従業員の一年間の納めるべき所得税を年末調整という形で計算・納税してくれます。
一方で、個人事業主として仕事をする場合には一年間の所得税を計算・納税するには自分で確定申告を行う必要があります。
一年間の所得税を計算するには、年間の収入から経費を差し引いた所得に対して所得税率を乗じて計算することになります。
確定申告を行うにあたり、どういったものが経費になるのか、初めて自分で確定申告をする人にとっては非常に悩ましい問題となります。
一般的に経費として計上できるものは、事業に関連したものとなりますが、その中で食費についてはプライベートで使用したものや事業で使用したものなどがあります。
今回は、個人事業主の食費が経費にできるのかということをテーマに解説していきます。

個人事業主の食費は経費にできるかどうか

個人事業主の食費が経費にできるかどうかは「事業に関連している食費」かどうかで判断が異なります。
経費にできる食費と経費にできない食費があります。

まず、経費にできる食費というのは上述したように事業に関連しているものであれば経費として計上することができます。
これは、食費に限らず全ての項目にいえるのですが、クライアントなどの取引先や業務提携している取引先、従業員などと業務上、打ち合わせもかねて食事へ行くことがあります。
そういった食費については経費として計上することが可能になります。

一方、経費にできない食費というのは事業に関連していない食費の場合には経費として計上することができません。
たとえば、休日に家族や恋人、友人などと食事に行った際の食費は経費にすることができません。
また、勤務時間中に昼食を一人で食べた場合の食費についても経費として計上することはできません。

経費として計上することができるかどうかのポイントは、事業に関連して仕事の打ち合わせなどでかかった食費は経費にすることができます。

食費を経費に計上するための要件

食費を経費として計上するためには、食事をしたことが証拠としてわかる根拠資料が必要となります。
一般的に食事へ行った際には飲食店から領収証やレシートを受け取ります。
経費として計上するには、上記資料を証拠として保管しておく必要があります。
ただし、保管しておくだけでは実際に業務として使用した食費かどうかを判断することは難しいです。
そこで、領収証やレシートに「いつ」、「誰と」、「どこで」、「どういった内容について話したかといった内容」をメモ書きしておく必要があります。
たとえば、「クライアントA氏と○○について打合せをした」などを記載しておけば、日付や場所は領収証などに記載されておりますので、上記内容をメモ書きしておけば経費として計上することができます。

食費を経費に計上する場合の勘定科目

上述した通り、食費を経費として計上するためには事業に関連したものが挙げられます。
しかし、食事といっても誰と食事をしたのか、何のために食事をしたのか、といった内容によって経費に計上する勘定科目はいくつか挙げられます。
まず、食費を経費に計上する場合に使用する勘定科目は一般的に「交際費」、「会議費」、「福利厚生費」が考えられます。

交際費として計上する場合には、社外のクライアントや業務提携している取引先などと食事をした場合が挙げられます。
法人の場合には、交際費として計上するには年間800万円までなど、いくつか要件がありますが法人については説明を割愛します。
個人事業主が交際費を計上する場合、法人とは異なり、全額を経費として計上することが可能です。
一般的に、社外の人と飲食店などで食事をした場合には、原則として交際費として計上することになります。

次に、会議費として計上する場合には、社外の取引先や社内の従業員などと会議室などで行った会議で飲食したお茶代やお菓子代が会議費として計上するものになります。
また、食事代も会議費として計上することがありますが、ここでの食事代とは一般的には昼食代程度になります。

最後に、福利厚生費として計上する場合も挙げられます。
福利厚生費には社内の従業員に限られております。
たとえば、従業員と仕事の打ち合わせも兼ねて食事をした場合にかかった費用が挙げられます。
ただし、従業員全員ではなく、一部の従業員といった食事代は福利厚生費とは認められず、給与として計上すべきものになる可能性があるので、注意が必要です。

結論

以上が、個人事業主の食費を経費として計上する場合に考えられる内容となります。
個人事業主の人は初めて確定申告をする人も多く、どういったものを経費に計上できるのかわからない人が非常に多いです。
何でもかんでも経費として計上してしまうと、のちに税務調査で指摘され、修正申告かつ追徴課税をすることになってしまいます。
このようなことにならないためにも事前に税務署や税理士へ相談することが良いです。

067 会社員におすすめの節税方法

我が国は財政難であり、国の借金も年々増加傾向になっています。
そこで国は税収を少しでも増やすために税金や社会保険料などを増加し、国の借金を減らすように政府は色々な対策を考えております。
しかし、一人一人の経済力は弱まり、国は国民の老後の事まで面倒を見切れなくなってきており、自分の面倒は自分で見なくてはいけない状況です。
そこで、国側としても国民自身が老後の生活資金を確保出来るように、積立てNISAやiDeCoなど税制優遇される制度を設けております。
一般的にこういった税制優遇と聞くと、法人や個人事業主しか出来ない制度と思う方も多いですが、今回は会社員でも利用できるおすすめの節税方法を解説していきたいと思います。

会社員の納める税金について

会社員が1年間で稼いだ収入から一定の計算をすることにより税金を納める事になります。
会社員が納める税金は「所得税」といい、この所得税を計算する方法は下記の通りです。
・収入-経費=所得
・(所得-所得控除)×税率=所得税
・所得税-税額控除=所得税(最終的に納める税額)
このように会社員が納める所得税を計算するにあたって、以下では所得控除を利用したものや、税額控除を利用したものなどが挙げられます。

会社員が利用できる節税方法!

ふるさと納税を利用する節税方法

国や都道府県、市町村などへ寄付をすることによって、所得控除の対象となり、節税の対象となります。
ふるさと納税の場合、寄付先から交付を受けた寄付金控除証明書を、確定申告書に添付し、確定申告をすることによってその年に支出した寄付金の合計額から2,000円を差し引いた金額を所得税及び住民税から控除することが出来るため、節税につながります。
(ワンストップ特例制などにより所得控除の対象にすることもできますが、ここではその方法は割愛させていただきます。)

医療費控除を利用する節税方法

その年(1月1日から12月31日までの暦年)において、医療費の支払いが一定の金額を超えて多額になる場合、所得控除として所得税を抑える節税方法として「医療費控除」があります。
この医療費は、自分だけに限らず、生計を一にする家族の分の医療費も含むことが出来ます。
この医療費控除は、その年に実際に納付した金額を控除することが出来るため、生命保険などに加入していて保険金収入を得ている場合や、健康保険などから受けた高額療養費等がある場合には、これらの受け取った金額を支払った医療費から差し引く必要があります。
医療費控除の控除額は、10万円もしくは所得の合計額が200万円までの方は、所得の合計額の5%を超える医療費の金額が医療費控除として所得税から差し引ける金額となります。

保険料控除などを利用する節税方法

社会保険や生命保険、地震保険などの保険に加入している場合、保険料を多く支払っているかと思います。
そのような場合には、支払った保険料が所得控除として所得税の節税につながってきます。
年金や健康保険などの社会保険料については金額の上限がなく、国民年金の場合には過去の年金をまとめて支払った場合でも、支払った年にまとめて所得控除の適用を受けることが可能です。
また、生命保険料や地震保険料については、生命保険料控除は最高12万円までで、地震保険料控除は最高5万円までの所得控除の適用を受けることが可能となります。

住宅ローン控除による節税方法

住宅ローン控除とは、これまで解説してきた所得控除とは異なり、所得税から直接控除することが出来る、税額控除により所得税を安く抑えることが出来る節税方法になります。
住宅ローン控除は、銀行などから住宅ローンの借り入れをして、マイホームの購入や新築などした場合に、年末時点の住宅ローン残高に応じて所得税の税額控除を受けることが可能となります。
この住宅ローン控除は、新築物件であることや購入してから6カ月以内に居住していなければならないなどの要件があることに注意が必要です。

積立NISAによる節税方法

積立NISAとは、少額投資非課税制度といい、年間40万円までの投資額の範囲内で、最長20年間の長期の積立投資により得た利益が非課税となる制度になります。
この方法はこれまでの所得控除や税額控除による節税方法とは異なる方法による節税となります。

iDeCoによる節税方法

iDeCoとは、個人型確定拠出年金といいます。
iDeCoによって、税金が安くなるメリットは大別して2つ挙げられます。
・運用で得た利益に対する税額20%が非課税になるので、運用で得た利益をすべて享受することが出来る。
・支払った掛け金が全額、所得控除になるので、所得税や住民税を抑えることが出来る。

結論

以上、サラリーマンでも実践することが出来る節税方法を解説してきました。
積立NISAやiDeCoなどは、年金2,000万円問題の解決策として、政府公認の税制優遇となります。
今後、ますます我が国の財政が悪化していくと、自分の身は自分で守っていく必要があります。
そのためにも、自分自身で出来る節税方法がないか常にアンテナを張って、将来の備えをしていくべきです。

066 延滞税・加算税ってなに?

近年、会社員の方が副業を始めたり、フリーランスなど個人事業主として働く人が増えています。
その場合、会社員であれば勤務先の会社が年末調整を行ってくれるので確定申告をする必要はないのですが、副業での収入が20万円を超える場合や個人事業主などは自分で確定申告をする必要があります。
そもそも、なぜ税金を支払わないといけないのかということになりますが、日本で生活していく上で国民の安全を守る警察・消防や、道路・水道の整備など国民に役立つ活動や、年金・医療・福祉・教育などの社会での助け合いのための活動をしていくためには多額の資金が必要となります。
これらの活動を行って社会を支える為に国民がお金を出す、いわば社会生活をしていくのに必要な会費といえます。
その会費を支払うにあたり真面目に支払っている人と支払っていない人がいると国民の間で不公平が生じてしまいます。
そこで、今回は確定申告をしないと税務調査が入った際に罰則として支払うこととなる、延滞税や加算税について解説していきたいと思います。

附帯税とは

延滞税や加算税について具体的に解説する前に、まずは附帯税について説明します。
附帯税とは、法人税や所得税、消費税などの事業をしていくうえで本来支払うべき税金(以下「本税」と言います。)以外の税金のことを言います。
この附帯税には、大きく3つのカテゴリーに分けることができ、今回解説する「延滞税」、「加算税」、「利子税」の総称です。

延滞税ってなに?

延滞税とは、納付期限に遅れた場合に課される税金になります。
一般的に、フリーランスなどの個人事業主の場合には1月1日から12月31日までの1年間(以下、「暦年」と言います。)の収支の差額である所得に対して課される所得税を、法定納期限である翌年3月15日までに納付する必要がありますが、この法定納期限までに納付することが出来ない場合に、延滞税が課されることになります。
法人の場合には、その法人の決算月の2カ月経過後が法定納期限となり、その法定納期限までに利益に対して課される法人税を納付出来ない場合には、延滞税が課されることとなります。
その他に、税務調査が入り修正申告書を提出することになった場合や更正または決定の処分を受けた場合で、本来納税すべき税額に比べて不足税額があった際にも延滞税が課されることになります。
延滞税の割合としては、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて以下の割合によって延滞税が課されることになります。
令和4年1月1日から12月31日までの期間においては、法定納期限の翌日から2カ月経過する日までの場合には、年2.4%となっております。
なお、法定納期限の翌日から2カ月経過した日以後の場合には、年8.7%となっております。

加算税ってなに?

加算税とは、本税を適正に計算されていない申告を行った場合や源泉徴収義務を法定納期限までに納付しなかった場合に課される税金であり、以下4種類の加算税が挙げられます。

1 過少申告加算税

過少申告加算税とは、本税の確定申告を法定納期限内に申告はしたが、本来納めるべき納税額より少なかったために修正申告や更正によって、追加の納税額が発生した場合に課される税金です。
過少申告加算税の税率は、追加の納税額に対して10%が課されることになります。
また、期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分に対しては15%が課されることになります。

2 無申告加算税

無申告加算税とは、法定納期限までに確定申告をせず、さらに本来であれば納付すべき税額があった場合に課される税金となります。
ただし、法定納期限から1カ月以内に自主的に確定申告を行い、納付すべき税額を納め、過去5年で無申告加算税や重加算税を課税されたことがなく、当初期限内申告をする意思があったと認められる場合には、この無申告加算税は課税されません。
無申告加算税の税率は、追加の納税額の50万円までに対しては15%が課されることになり、50万円を超える税額に対しては20%が課税されます。
なお、税務署から指摘される前に納付した場合には5%の税率となります。

3    不納付加算税

不納付加算税とは、源泉徴収等による源泉所得税を法定納期限までに支払わなかった場合に課される税金となります。
不納付加算税の税率は、納税額の10%が課されることになります。
ただし、税務署から指摘される前に納付した場合には5%の税率となります。

4 重加算税

重加算税とは上記3つの税金が課される前提として、事実の全部又は一部を仮装・隠蔽により確定申告を行ったと認識された場合に課される税金になります。
重加算税の税率は、過少申告加算税や不納付加算税の代わりに追加納税額の35%が課されることになります。
また、無申告加算税が課されることになる場合には、無申告加算税の代わりに追加納税額の40%が課されることになります。

結論

確定申告しなかった場合のペナルティである延滞税と加算税について解説しました。
最近では東京国税局が「ウーバーイーツジャパン」に対して配達員の住所、氏名、報酬額、銀行口座などの情報提供を求めたというニュースも出ており、フリーランスなどの個人事業主に対しても調査が入る可能性が高くなっております。
延滞税や加算税などのペナルティを支払わないためにも毎年しっかりと確定申告を行う必要があります。

065 30万以上の備品は経費にできない?少額減価償却資産の特例について

個人事業主や法人では、所得税や法人税を安く抑えようとして節税策を検討します。
節税策としては、役員報酬を上げたり、保険へ加入したり、様々な方法が考えられます。
その中で固定資産の購入による節税策が挙げられます。
通常、30万円以上の固定資産は、取得時から耐用年数をかけて徐々に減価償却として費用計上していくため、取得時に取得価額の全額を費用計上することは出来ません。
一方で、30万円未満の固定資産であれば、取得時に取得価額の全額を費用計上することが出来るため、節税策として有効な方法になります。
以下では少額資産の特例について解説していきます。

少額減価償却資産の特例とは

少額減価償却資産の特例とは、青色申告の適用を受けている資本金1億円以下の法人又は従業員数が1,000人以下の中小企業に認められる特例となります。

適用対象資産は、パソコンなどの器具備品、機械装置、車両などの有形固定資産や、ソフトウェアや特許権などの無形固定資産も該当し、取得価額30万円未満の資産であれば新品や中古品を問わず対象となります。

ただし、適用を受けようとする事業年度において、少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円までが適用出来る上限額とされており、300万円を超えた部分については少額減価償却資産の特例の適用を受けることが出来ません。

30万円未満の判定について

この少額減価償却資産の特例は、取得価額30万円未満が対象になることは上述した通りですが、この30万円の判定については、消費税の経理処理を税込経理で処理しているか、税抜経理で処理しているかによって判定が異なってきます。

税込経理で処理している場合には、取得価額を税込金額で判定し、税抜経理で処理している場合には、税抜金額で判定します。

例えば、税込価額319,000円のパソコンを購入したとして、この場合、税込経理を採用している個人事業主や法人の場合には30万円以上なので少額減価償却資産の特例は適用することが出来ません。
一方で、税抜経理を採用している場合には、税抜価額29万円であり、30万円未満になるので少額減価償却資産の特例の適用を受けることが可能になります。

固定資産税の取り扱い

固定資産税とは、その年の1月1日時点において不動産などの固定資産を所有している人に課税される税金になります。
少額減価償却資産の特例の適用を受けた固定資産についても固定資産税の課税対象となるので、注意が必要です。

10万円未満の少額減価償却資産について

上述した少額減価償却資産は30万円未満であることを前提に解説してきました。
10万円未満の少額減価償却資産については上述したものとは一部取り扱いが異なる部分があるのでその点についても解説します。

異なる点は2点挙げられます。
まず、30万未満の少額減価償却資産の場合、その事業年度における取得価額の300万円までは費用計上が可能ですが、10万円未満の少額減価償却資産の場合にはそのような制限はなく、10万円未満であれば無制限に費用計上が可能となります。

また、30万円未満の少額減価償却資産の場合には、固定資産税が課税されますが、10万円未満の少額減価償却資産では固定資産税が非課税となりますので、以上2点についても理解しておく必要があります。

一括償却資産の特例について

以上が30万円未満の固定資産を取得した場合に一括で費用処理出来る少額減価償却資産の特例について解説しました。
30万円未満であれば、上述した通り取得価額の全額を費用計上が可能になりますが、10万円以上20万円未満の範囲内の固定資産の場合には、一括償却資産の特例についても適用が可能になるため、一括償却資産の特例についても解説したいと思います。

この一括償却資産の特例は、上述した通り10万円以上20万円未満の範囲内の固定資産に適用出来る特例であり、取得価額を3年間に渡り費用処理していくものになります。
したがって、15万円のパソコンを購入した場合には、取得した事業年度から毎年5万円を3年間で費用計上していくものになります。

この一括償却資産の場合、金額判定について税込経理か税抜経理かによって判定する方法は、上述した少額減価償却資産と同様となります。

ただし、固定資産税については一括償却資産の場合、少額減価償却資産とは異なり、課税対象外となります。よって、少額減価償却資産か一括償却資産のどちらで経理処理すべきか悩まれた場合には、一括償却資産として処理した方が固定資産税がかからないため、有利に働きます。

結論

以上、30万円未満の固定資産を取得した場合の少額減価償却資産の特例について解説しました。
通常、30万円以上の固定資産を購入した場合にはその取得価額を耐用年数で徐々に費用処理していくことになるため、当期において利益が出ている場合には節税策として固定資産を購入した場合にはそれほど節税インパクトは大きくありません。

ただし、30万円未満の固定資産の場合には事業年度終了間際に購入していれば、その事業年度において300万円までは費用計上出来るため、節税策としては非常に有効なものになります。

事業をしていく上で、是非とも少額減価償却資産の特例を利用していただければ幸いです。

064 給与支給額が変わる!!6月は住民税に着目!

例年6月は、住民税が普通徴収の人は第1期の納付期限、特別徴収の人は給与支給時に差し引かれる税額の変更時期となります。
今回は、この住民税の仕組みについてご紹介を致します。

1住民税とは

住民税とは、居住をする都道府県、市区町村に納めるべき税金で、行政サービスの維持のために徴収をされます。

住民税を納めるべき人とは、その年の1月1日時点で都道府県、市区町村に住所がある人です。

住民税は昨年の所得を基礎として計算がされます。個人事業主であれば提出を行った確定申告書の情報、給与所得者であれば会社が提出をした給与支払報告書の情報をもとに、市区町村が税額の決定を行います。
6月が住民税の納付期限、変更時期であるのは、1月末までに提出すべき給与支払報告書及び3月15日までに提出すべき確定申告書の情報を、都道府県や市区町村が反映し税額を計算する必要があるためです。

住民税の税額は、所得割と均等割とで構成をされています。所得割とは、前年度の所得に応じた税額であり、均等割とは所得に関係無く一律で課せられる税額です。
所得割の税率、均等割の金額は都道府県や市区町村で多少違いはあるものの、多くの場合は、課税所得に対して10%、均等割は年5,000円です。

2住民税の徴収方法

住民税の徴収方法には、普通徴収と特別徴収があります。

普通徴収とは、自営業者等である住民税の負担者が直接納める方法であり、一括納付又は第1期から第4期の4分割で支払います。
例年6月に住民税決定通知書が居住する市区町村から送付され、その一括納付及び第1期の納付期限が6月末と定められています。

特別徴収とは、負担者と納付者が異なり、給与所得者である住民税の負担者に代わり、会社が納める方法です。
給与所得者の住民税は、原則として給与支給時に給与から差し引き、会社が全従業員の住民税をとりまとめて支払います。
例年5月に特別徴収税額の通知が、従業員の居住する市区町村から会社に送付がされ、その書類に記載された金額を、6月より給与から差し引き会社が納付します。

3まとめ

6月は住民税の第1期納付期限及び給与差し引き金額の変更時期です。普通徴収の該当者である個人事業主等や、特別徴収の該当者をとりまとめる会社の給与計算担当者、特別徴収の該当者本人である給与明細を受け取る給与所得者本人、多くの人に関係があります。
必ず住民税決定通知書を確認し、納付漏れや給与計算の間違いが無いように、注意をしましょう。

063 会社設立の流れと必要書類

導入

個人事業主が節税対策として会社設立をすることが挙げられます。
会社設立をすることにより、節税に繋がることのほか、信用力が高まり、融資を受けることができたなどのメリットがある反面、設立時の事務負担やコストなどデメリットも挙げられます。
今回は会社設立について、どういった流れで設立していくのか、設立時の必要書類は何が必要となるのか解説していきます。

会社設立の流れ

会社には株式会社、合同会社、合資会社、合名会社など、いくつか種類がありますが、会社の種類で最も多い株式会社を例として、設立の流れを解説していきます。

なお、株式会社の設立手続きは、発起設立と募集設立の2つの方法があります。
募集設立の場合、発起設立で必要とされる手続きに加え、発起人以外の者に株式募集をし、かつ創立総会を開催する必要があるため、発起設立の方が募集設立より手続きが容易です。

小規模な株式会社の設立を検討している場合には、発起設立の手続きを選択した方が良いので、以下では発起設立について解説していきます。

発起設立とは、発起人が設立時の発行株式数をすべて引き受ける設立方法となります。

発起人となる者は、設立の際に、まず定款を作成し、その定款に記名押印する必要があります。

また、定款は公証人役場で認証を受ける必要があるので、公証人に発起人本人であることを確認してもらうために、定款には実印を押印し、かつ、印鑑証明書を用意する必要があります。

定款認証後、発起人は設立時の発行株式の引受けをした後すぐに、引き受けた株式に関する資本金を、払い込む必要があります。

発起設立の手続きの場合、資本金の払い込みは、発起人の銀行口座に預け入れるか、またはその口座に振り込む方法により資本金を払い込むことができます。

発起人が複数名いる場合は、発起人で、そのうちの1人の口座を払い込みをする金融機関と定めて、その銀行口座に発起人の各々が振り込みます。

『払い込みがあったことを証する書類』は、具体的な入金の事実を証明するために要求されているものですので、残高証明書の払い込みの日が確認できない書類を『払い込みがあったことを証する書類』とすることはできません。

登記手続きでは、払い込みを受けた口座の通帳の表紙と表紙の裏及び振り込みや預け入れされた事が記帳されているページをコピーします。

そのコピーを会社の設立時代表取締役が払い込みを受けた事は間違いない旨の記載のある証明書と合致し、ホチキスで留め、それぞれのページの間を割り印します。
この書類が『払い込みがあったことを証する書類』となります。

上記の準備が完了したら、本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請することによって、会社設立が成立します。

会社成立日は、設立登記申請が法務局に受け付けた日となるので、法務局が開いていない休日を会社成立日とすることができません。

登記申請には、登録免許税を納付する必要があります。登録免許税の税率は、登録免許税法で定められており、資本金の額の0.7%です。ただし、最低金額として15万円と定められております。

登録免許税は、その税額の収入印紙を登記申請書に貼付して納めます。

設立登記の申請は、会社代表者から申請します。
その申請にあたって、代表者は会社の印鑑をあらかじめ法務局に届け出なければなりません。印鑑の届出は、法務局に備え付けられている定型書式の用紙に必要事項を記載して行います。

以上のことが完了すれば、会社設立という流れになります。

会社設立時の必要書類

会社設立においては管轄の法務局へ登記申請を行う必要があります。
登記申請にあたり、以下の必要書類を管轄の法務局へ提出することによって、会社設立が成立することになります。
・設立登記申請書
・認証済みの定款
・代表取締役の印鑑証明
・代表取締役の就任承諾書
・払い込みがあったことを証する書類

上記の他に、その会社の定款に記載されている内容によっては必要な書類がありますが、一般的なものが上記記載のものとなります。

税理士へ依頼するタイミング

会社設立の際に税理士へ依頼するタイミングは下記タイミングが挙げられます。

・会社設立前に依頼
会社設立前に税理士へ依頼するタイミングとしては、上述したように会社設立時には必要書類の準備など、事務手続きが多く、本業に集中したい経営者の場合、税理士へ依頼すれば設立時に必要な手続きを行う必要がなくなります。

また、経営者によっては設立時に融資を受けようと考えることも挙げられます。
融資を受けるにあたり、金融機関へ事業計画書の提出が必要となり、事業計画書の作成などといったサポートを税理士から受けることも可能です。

よって、設立時の事務負担の軽減、設立時に融資を受けることを考えている場合には、税理士へ依頼することをおすすめします。

・会社設立後に依頼
会社設立後に税理士へ依頼するタイミングとしては、以下の内容が挙げられます。

①会計データの入力を依頼する場合
日常の会計取引を入力するにあたり、会計の知識が乏しい経営者の場合、会計データの入力に時間と労力を多く費やす事が想定されます。

会計データの入力を税理士へ依頼することにより、本業に集中する事ができる上、正しい処理で会計データが出来上がるため、そのような考えを持つ経営者は税理士へ入力依頼することをおすすめします。

②節税対策や税務関係書類の提出を依頼する場合
会社設立後、決算期を迎えるにあたり1年間の業績を集計し、その結果を基に税金を納めることになります。
税金を計算する申告書の作成は、素人には難しく、税理士に依頼することが一般的です。

また、事業を進めていくにつれ、利益が多く出るようになると、どのように税金を低く抑えることが出来るか、節税対策を考えるようになります。

節税対策として、役員報酬の増額、固定資産の購入など、様々な方法があります。

節税対策を検討するにあたり、税理士へ依頼することが必要不可欠になってきます。

結論

会社設立にあたり、設立までの流れや必要書類、さらに会社を設立した場合、税理士へ依頼するタイミングについて解説しました。

会社設立は、節税対策だけでなく、融資を受けるにあたっても有利となり、これまで個人事業主として事業活動をしていた人が規模の拡大により、会社設立をするケースも多く見られます。

今回のテーマがこれから会社設立を考えている人の参考になれば幸いです。

 

062 個人事業主が家族に給与等を支払う際の注意点

個人事業主を行っている人の中には、家族を従業員とするいわゆる「家族経営」を行っている人もいると思います。家族に給与等を支払う場合、「家族以外の従業員との違い」「節税効果はあるか」等の疑問点が出てくる思います。本記事では当該内容について記載いたします。

●家族に給与等を支払った場合どうなるか?

個人事業主が家族に給与等を支払った場合、支払った個人事業主と受け取った家族の扱いがどうなるかを記載します。

・個人事業主の扱い

個人事業主の扱いは、家族と生計を一にしているか否かによって扱いが変わります。生計を一にするとは、主に「同居」または「別居をしていても仕送りをしている」等の要件となります。生計を一にしている場合、家族に支払った給与等は無かったものとなり、個人事業主の経費にすることはできません。別生計の場合は、経費とすることができます。

・家族の扱い

家族の扱いも個人事業主と生計を一にしているか否かで扱いが変わります。生計を一にしている場合、個人事業主同様無かったものとなり、収入とはなりません。別生計の場合、給与所得の収入金額となります。

・家族以外の従業員との扱いの違い

個人事業主が生計を一にする家族に対して支払う給与を経費にできてしまう場合、個人事業主の所得を家族に分散をし、租税回避行為を行う可能性があります。それを防止するために、家族に対して支払った給与等は原則、経費にすることはできません。これは、所得税法第56条「事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例」にて定められています。

●生計を一にする家族に対し、給与等を支払った場合でも経費にできる方法

前述のとおり、生計を一にする家族に対して支払った給与等は、原則として経費にすることはできません。しかしながら、生計を一にする家族でも経費にすることはできます。

・青色事業専従者給与に関する届出書

個人事業主が生計を一にする家族に対し、給与等の支払をした場合において、個人事業主の経費とするためには、青色事業専従者給与に関する届出書を提出する必要があります。そのため、青色申告者が前提となります。青色事業専従者給与に関する届出書は、3月15日までに、納税地の所轄税務署長に提出をします。

・青色事業専従者給与に関する届出書の記載事項

青色事業専従者給与に関する届出書の記載事項は、家族の氏名・続柄・業務内容・給与等をいくら支払うか等を記載します。経費に計上することができるのは、届出書に記載した範囲内で労務の対価として正当なものだけです。また、家族はもっぱら(1年のうち、6か月超)個人事業主の事業に従事していなければなりません。

・青色事業専従者給与を使用することのメリット

青色事業専従者給与を使用することのメリットは、個人事業主に所得を集中させず、家族にも分散できることです。日本の所得税は超過累進税率(所得が高くなるほど税率が高くなる)ですので、一人に所得を集中させるよりも、家族に分散をさせた方が節税効果を見込めます。前述の所得税法第56条の例外規定として設けられている所得税法第57条の規定となります。

 

●まとめ

本記事では、個人事業主が家族に給与等を支払う際の注意点について記載しました。家族に支払う給与等は、まず、生計を一にしているか否かで扱いが変わります。さらに生計を一にしていても青色事業専従者給与に関する届出書を提出しているか否かで変わります。正しく理解し、適切な処理ができるようにしましょう。

061 会社設立時の注意事項

個人で事業を行う場合に行く付く問題は、個人事業主のままでいくのか、法人を設立するのかのメリット、デメリットを検討することになります。検討の結果、法人を設立することになると色々と注意しなければならないことがあります。

1. 会社設立のメリット・デメリット

【メリット】
① 社会的な信用が得られる
② 銀行からの資金調達ができやすい
③ 取引先からの与信審査が個人の場合より厚く、取引の可能性が上がる。
④ 個人事業主の所得税率より法人税率のほうが低いため節税効果が高い。
⑤ 事業主への生命保険や各種費用が会社負担になるため、使えるお金が増える。
⑥ 経営者や家族(従業員)への退職金が可能。退職所得は通常の所得税率より低いため節税効果が高い。
【デメリット】
① 決算書の作成や税務申告の事務負担が増える。
② 社会保険料等の公的費用の支出が増える(個人負担に加え、会社負担費用も発生)
③ 資本金等の拘束資金が必要となるが、金額設定は柔軟に設定できる。
④ 会社設立の費用(登記費用等)が資本金の規模に併せて発生する。

このように会社設立には多くにメリットがあります。
中小企業の社長で高級外車を社用車として購入している例もありますが、あまり過度に費用を使いすぎると、税務調査で否認されるので注意が必要です。

2. 会社設立時の注意事項

① 事業の目的を決定して、定款を作成する。
事業の目的を決めるとは、会社の存続の意義を決めることです。そのために、存在の「客観性」(日本の法律に沿ったものか)「営利性」(それが営利事業になりうるか)を確認すべきです。
② 資本金の決定
会社法の改正で今は1円の資本金でも認められますが、社会からの「信頼性」が
ないため、会社規模に沿った資本金額の設定が重要です。
会社規模(売上や仕入)の2-6か月分の運転資金があったほうが安全ですので、その規模の資本金を準備できればよいです。

但し、1000万円を超えると消費税の課税事業者となるため、それ以下ならば受けることができる2年間の免税のメリットを受けることができません。

また、資本金の規模に併せて登記費用が上がりますので、注意が必要です。

③ 本店住所のついて
同じ市町村に同名の会社の設置ができません。

④ 株式会社が良いのか
いま納流行りの「合同会社」は、設立の費用が安価で手続きが簡素化しており、アマゾンですら合同会社です。但し、社会的な信用を考えると「株式会社」のほうがよいかもしれません。

会社成立の選択肢が多様にあり、個人のニーズで如何様にでも設計ができます。折角の機会ならば専門家に相談して、無駄にならないようにしたいですね。

060 経営セーフティ共済を活用した節税対策について

法人が事業活動を行い、所得が発生すると、毎年法人税が発生します。法人税において、脱税は絶対にしてはなりませんが、節税であれば合法の範囲内でいくらしても構いません。今回は法人税における節税方法の中でも、複数のメリットがある「経営セーフティ共済」を活用した節税方法をご紹介しますので、是非参考にして下さい。

経営セーフティ共済とは

経営セーフティ共済とは、経営する会社が万が一倒産をした際に、中小企業等が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐ為の制度です。掛金月額は5千円〜20万円まで自由に設定が可能であり、増額や減額もできます。自己都合での途中解約であっても掛金を12ヶ月以上納めていれば掛金総額の80%以上、40ヶ月以上納めていれば掛金の全額が戻るので、積立貯金としても機能します。この経営セーフティ共済には他にも2つのメリットがあります。

メリット

1つ目のメリットは、今回のタイトルにもありますように節税対策になるという点です。確定申告の際に掛金を全額損金に計上できる為、その分課税所得を抑える効果があります。毎月20万円掛金を納めておけば、年間で240万円の損金を計上することができます。余談ですが、個人事業主の方でも、経営セーフティー共済への加入は可能であり、同じく掛金の全額を必要経費に算入することが出来るので、大きな節税メリットを享受できます。
2つ目のメリットは、いざという時に無担保・無保証で借入が可能という点です。取引先の倒産で回収不能となった金額と掛金の10倍(上限8千万円)のいずれか少ない金額まで借入が出来ます。利率も年0.9%と低水準であり、資金使途も経常運転資金や設備資金にも活用できます。金融機関借入でも1%を下回る条件での融資は困難であることからも、いかに金利面でも優遇されているかがわかりますね。

注意点

しかしながら、この制度にも注意すべき点が2つあります。
1つ目の注意すべき点は、解約金は「雑収入」として課税されてしまう点です。もし途中解約をする際は、赤字決算となった時に行うと負担税額を軽減することが可能になります。
2つ目の注意すべき点は、納付期間が40ヶ月以下だと元本割れをする点です。元本割れを起こしてまで解約金を受け取るのは、もったいなく感じるので、納付開始40ヶ月までは他の資金で対応していきたいですね。
今回は法人税の節税方法として経営セーフティ共済をご紹介しました。多少の注意すべき点はあるものの、総じて見るととてもメリットが大きい制度です。上手に活用して、少しでも法人税の節税に役立てれば幸いです。

059 法人成りの目安(補正)

⒈補正項目

この⒈では前提条件はありますが、損益分岐点を計算する上で必要な事項についても考えていきます。

⑴消費税

新たに法人を設立すると消費税の納税義務が原則として2年間免除されます。もともと課税事業者という前提条件はありますが、ここでは事業所得の金額×10%×2年とみなして、5年間で収益計上します。例えば、事業所得の金額が300万円であれば、3,000,000×10%×2年÷5年=120,000円となります。
ただし、インボイス制度の開始により課税事業者を選択すれば、もちろん0円です。

⑵年金

国民年金から厚生年金になると報酬比例部分と同額だけ年金が増加します。65歳から85歳まで20年間受給するという前提条件はありますが、ここでは標準報酬月額×0.5481%×60月×20年とみなして、5年間で収益計上します。例えば、標準報酬月額が22万円であれば、220,000×0.5481%×60月×20年÷5年=289,397円となります。

⒉補正後

損益分岐点に補正項目を加味して下記の早見表を求めます。
・補正後の早見表
事業所得
(青特前)
╱給与収入 損益分岐点 消費税 補正後
(その一) 年金
(標月)
補正後
(その二)
300万円
╱252万円 ▲341,371円 120,000円 ▲221,371円 289,397円
(220,000) 68,026円
600万円
╱504万円 ▲218,419円 240,000円 21,581円 539,330円
(410,000) 560,911円
900万円
╱756万円 ▲173,264円 360,000円 186,736円 815,573円
(620,000) 1,002,309円
1200万円
╱1008万円 ▲21,940円 480,000円 458,060円 855,036円
(650,000) 1,313,096円
1500万円
╱1260万円 330,360円 600,000円 930,360円 855,036円
(650,000) 1,785,396円
したがって、「補正後(その一)は約600万円、補正後(その二)は約300万円である」ことがわかります。

このシリーズでは、東京都に小さな会社を設立するケースで、一般的な税率や保険料率を用いて考えてきました。
そのため、お住まいの都道府県や市区町村における「実際の金額とは多少異なる」ことをご理解ください。

058 法人成りの目安(損益分岐点)

事業所得300万円(青色申告特別控除65万円の適用前)の個人事業主が法人成りを行い、所得金額の84%を社長の給料に充てるケースで損益分岐点の計算をします。

⒈個人 695,653円

⑴社保 480,853

①国年 198,240
②国保 282,613
3,000,000-650,000-430,000=1,920,000
1,920,000×8.47%+50,736=213,360
1,920,000×2.77%+16,069=69,253

⑵税金 214,800

①所得 (3,000,000-650,000-基礎480,000-480,853)×15.105%=209,800
②事業 (3,000,000-2,900,000)×5%=5,000

⒉法人 1,037,024円

⑴その他 22,000+60,000=82,000

⑵社保 756,624

2,520,000÷12月=210,000→標月220,000
①会社 220,000×14.51%×12月=383,064
②社長 220,000×14.15%×12月=373,560

⑶税金 198,400

①会社 (3,000,000-82,000-2,520,000-383,064)×22.39%+70,000=73,100
②社長 2,520,000→給与1,684,000
(1,684,000-480,000-373,560)×15.105%=125,300

⒊損益 ▲341,371円

このようにして下記の早見表を求めます。
・損益分岐点の早見表
事業所得
(青特前)
╱給与収入 個人事業主 法人 損益分岐点
300万円
╱252万円 695,653円
税金214,800
社保480,853 1,037,024円
税金198,400
社保756,624 ▲341,371円
600万円
╱504万円 1,768,853円
税金950,800
社保818,053 1,987,272円
税金495,200
社保1,410,072 ▲218,419円
900万円
╱756万円 3,005,540円
税金1,937,300
社保1,068,240 3,178,804円
税金964,500
社保2,132,304 ▲173,264円
1200万円
╱1008万円 4,237,240円
税金3,169,000
社保1,068,240 4,259,180円
税金1,725,700
社保2,451,480 ▲21,940円
1500万円
╱1260万円 5,698,040円
税金4,629,800
社保1,068,240 5,367,680円
税金2,594,200
社保2,691,480 330,360円
したがって、「損益分岐点は約1200万円である」ことがわかります(40歳以上65歳未満でもほとんど変わりません)。また、扶養配偶者がいれば約900万円となります(さらに20歳未満の子がいてもあまり変わりません)。