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145 バーチャルオフィスで会社設立する際の注意点

近年では、新型コロナウイルスの拡大によって、これまでのような会社へ出勤して仕事をするという働き方ではなく、会社へ出勤せずに自宅でリモートワークをする人達が増加するなど、働き方が多様化してきております。
また、このような背景から会社員を辞めて、個人事業主として働く人も近年急増してきております。
上記のような理由から、個人事業主や法人成りした場合に登記が必要となるのですが、その際に登記が必要になる住所を自宅ではなく、バーチャルオフィスの住所を登記することが可能なことから、プライバシーなどセキュリティ対策として便利なバーチャルオフィスが増加してきております。
今回はこのバーチャルオフィスについて、解説していきたいと思います。

◆バーチャルオフィスとは

バーチャルオフィスとは、仕事をするにあたって、実際にクライアントと打合せをしたりするような場所があるわけではなく、個人事業主が開業するにあたって必要となる開業届へ記載するための住所や、法人設立時に提出する必要がある法人設立届出書へ記載するための住所を借りるものとなります。
通常のオフィスとの大きな違いは、実際に仕事をするようなリアルなスペースは無いという点がバーチャルオフィスの大きな特徴となります。

◆バーチャルオフィスのメリット

バーチャルオフィスを借りるメリットとしては以下の通りです。
➀都心の一等地であっても格安の料金でオフィスを持てる点
通常、千代田区や中央区、港区などといった一等地にオフィスを構える為には、高額の家賃が必要となります。
しかし、バーチャルオフィスであれば、月に2万から3万円ほどの家賃で抑えることが出来ます。
安いところであれば、数千円からでもバーチャルオフィスを利用することが可能となります。

②人件費を削減することが出来る点
通常のオフィスであれば、クライアントからの電話対応や郵便物の受け取りの為に会社へ従業員を配置し、上記対応をする必要があるので従業員に対する人件費が発生します。
しかし、バーチャルオフィスであれば、電話対応や郵便物の転送などをオプションサービスなどで対応してくれるので、通常のオフィスに比べて人件費が削減できる分、非常に経済的です。

③水道光熱費や通信費などの固定費が削減できる点
実際のオフィスを借りた場合には、家賃のほかに、水道光熱費や通信費などといった固定費が毎月発生してきます。
しかし、バーチャルオフィスであれば上記のような固定費を削減出来る点がメリットとして挙げられます。

④会議室も必要に応じてレンタル出来る点
最近では、新型コロナウイルスの流行によってクライアントとの打合わせもオンラインで行うことが多くなりましたが、クライアントによっては直接対面で話したいという人も一定数存在します。
そういった人たちの為に、バーチャルオフィスでは会議室のレンタルサービスをしているバーチャルオフィスもあるので、そのようなケースが考えられる場合には、会議室のレンタルサービスをしているバーチャルオフィスを利用することをおすすめします。

◆バーチャルオフィスの利用がおすすめな人

➀個人事業主や一人社長の法人
事業を開始して間もない個人事業主や一人社長の法人の場合、実際に仕事で利用する通常のオフィスを設けなくても自宅などで仕事を行い、住所などはバーチャルオフィスを利用する働き方も可能です。
しかし、自宅で仕事をする場合には、上述したように開業届や法人設立届出書などへ記載する住所が自宅となってしまうため、プライバシー保護という観点からバーチャルオフィスを利用した方が良いケースも考えられます。

②住所地を一等地にすることでブランド力をつけたい個人事業主や法人
上述したように、通常のオフィスを都心の一等地に設ける場合には多額の資金が必要となります。
しかし、バーチャルオフィスであれば都心の一等地であっても毎月のオフィスレンタル料が格安となるので、都心の一等地に安い料金でオフィスを設けることが可能です。
都心の一等地に住所を持つことで、クライアントからの信用力や安心感を得たいと考えている個人事業主や法人の方にはおすすめです。

③一日でも早く開業したいという個人事業主や法人
実際のオフィスを設ける場合には、物件の内覧などをする必要があるため、実際に事業を開始するまでに時間を要します。
しかし、バーチャルオフィスであればそのような時間も不要なため、一日でも早く事業を開始したい人にとってはおすすめです。

◆バーチャルオフィスの登記について

バーチャルオフィスで事業を開始する人は、しばしば、バーチャルオフィスの住所を登記することが可能かどうか不安に思う人も見受けられます。
しかし、バーチャルオフィスであっても登記は可能となりますので、心配はありません。
しかし、注意点としては、同一の住所に同じ事業者名を登記することは出来ないので、登記をする前に管轄の法務局で、類似商号がないかの確認は必要となります。
また、下記のような業種の場合にはバーチャルオフィスで法人登記は出来ないので注意が必要です。
・弁護士や公認会計士、税理士など、いわゆる士業と呼ばれている業種
・人材派遣会社や職業紹介会社
・建設会社や不動産会社
・古物商
・探偵業
上記業種の場合には、実際のスペースや一定以上の事業所の広さが必要とされており、バーチャルオフィスでは登記が出来ないので注意が必要です。

◆結論

近年、新型コロナウイルスの流行により多様な働き方が求められてきた背景から、バーチャルオフィスはコストも格安に抑えることが出来、非常にバーチャルオフィスによって事業を開始している人が増えてきております。
しかし、バーチャルオフィスによって法人登記する場合、一部認められていない業種も一定数存在しているので、バーチャルオフィスによりこれから登記していこうと考えている人は、必ず事業開始前にバーチャルオフィスについて調べる必要はあります。

144 扶養控除とは?扶養親族には誰が該当をする?

 

所得税の納税者に、所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合には、扶養控除を適用することができます。控除対象扶養親族の判定は、年末時点の親族の年齢や収入により判断を行う必要があるため、毎年確認を行う必要があります。
例年適用をしている納税者の多い扶養控除ですが、いまいいちど確認をしてみましょう。

1扶養親族の範囲

扶養親族とは、その年の12月31日の時点の現況で、下記の要件に全て該当をする人をいいます。

・6親等内の血族および3親等内の姻族である、配偶者以外の親族、または都道府県知事から養育を委託された児童や市町村長から養護を委託された老人であること。
・納税者と生計を一にしていること。
・年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)であること。
・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと。

2扶養控除の控除金額

扶養控除の控除額は、その扶養親族が、一般の控除対象扶養親族、特定扶養親族、老人扶養親族の同居老親等、老人扶養親族の同居老親等以外、のどれに該当をするかにより異なります。

①一般の控除対象扶養親族
一般の控除対象扶養親族とは、扶養親族の範囲に該当する人のうち、下記②③④に該当をしない、その年の12月31日時点の年齢が16歳以上の人をいいます。
控除額は38万円です。

②特定扶養親族
特定扶養親族とは、扶養親族の範囲に該当する人のうち、その年の12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
控除額は63万円です。

③老人扶養親族の同居老親等
老人扶養親族とは、扶養親族の範囲に該当する人のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
この老人扶養親族のうち、納税者や納税者の配偶者の直系尊属で、納税者や納税者の配偶者と常に同居している人が同居老親等に該当をします。
控除額は58万円です。

④老人扶養親族の同居老親等以外
老人扶養親族のうち、上記③に該当をしない人とは、老人ホームに入居している等、同居が常では無い人をいいます。
控除額は48万円です。

3まとめ

扶養控除は、配偶者控除とは異なり、納税者の所得に関わらず、一律の控除額を受けることができる所得控除です。
所得税の節税方法は多々ありますが、最も基本的なことは、受けられる控除を漏らさずに適用をすることです。確認のために是非ご参考になさってください。

144 FIREを検討する際に知りたい不動産所得

不動産投資によってFIREを達成しようと考える方が増えています。会社に勤務することで収入を得ていた人が、不動産投資によって収入を得るようになる場合には、その所得の種類は給与所得から不動産所得へ変わります。
今回は、不動産所得とは何かについてご紹介を致します。

1不動産所得とは

不動産所得とは、不動産によって得られる収益のうち、貸付によって得られるものです。不動産の売買による収益は不動産所得に含まれません。具体的には、下記のものをいいます。
・土地や建物等の不動産の貸付
・地上権等の不動産の上に存する権利の設定及び貸付
・船舶や航空機の貸付

2不動産所得の計算方法

不動産所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算を行います。

①総収入金額
総収入金額には、下記のものが該当をします。
・貸付による賃貸料収入
・名義書換料、承諾料、更新料または頭金等の名目で受領するもの
・敷金や保証金等のうち、返還を要しないもの
・共益費等の名目で受け取る電気代、水道代や掃除代等

②必要経費
必要経費には、総収入金額を得るために必要な経費が該当をし、下記のものが該当をします。
・固定資産税
・損害保険料
・減価償却費
・修繕費

3不動産所得は確定申告が必要?

不動産所得が年20万円を超える場合には、確定申告が必要となります。確定申告とは年間の所得税を決定し納税を行う手続きであり、1月1日から12月31日までの所得に対応する所得税を、翌年3月15日までに計算し自身で納税をする必要があります。

4不動産所得は青色申告?白色申告?

確定申告が必要である場合には、その申告を青色申告で行うか、白色申告で行うかを判断する必要があります。

青色申告と白色申告は任意で選択することが出来ますが、青色申告者の特典である青色申告特別控除を適用するためには、その不動産貸付けが事業として行われている必要があります。

不動産所得を生ずる不動産貸付けが事業として行われている、と判断がされるためには、貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること、又は独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること、が基準になります。

5まとめ

FIREを達成し不動産所得で生活をしていくためには、年20万円以上の所得が想定されるため、確定申告が必要となります。
また、確定申告を青色申告で行い、青色申告特別控除等の青色申告者の特典を利用するためには、事業として行われていると判断される、一定の規模以上の不動産貸付の実態が求められます。
FIREを目指す場合には、おさえておきたい不動産所得の基礎知識です。ご参考になさってください。

 

143 会社勤務の人でも確定申告をする必要がある?!

会社に勤務をすることで収入を得ている給与所得者は、一般的には会社で年末調整を受けることで所得税の精算が行われます。よって多くの給与所得者は確定申告を行う必要がありませんが、一定の場合には、確定申告が必要です。
今回は、確定申告を行う必要のある又は行った方が良い給与所得者についてご紹介を致します。

1年末調整と確定申告

年末調整と確定申告は、どちらも年間の所得税を決定し納税を行う手続きですが、手続きを行う人、納税をする人やその時期が異なります。
年末調整は給与所得者だけが受けることができ、給与情報等をもとに各従業員の年間の所得税額を計算、納税する手続きを会社が従業員本人に代わって行います。この手続きは例年12月から1月頃に行われます。
一方で確定申告は全ての人が行うことができ、自身で年間の所得税を計算、納税する手続きです。この手続きは例年3月頃に行われます。

どちらも年間の所得税を決定し納税を行う手続きであることから、年末調整によって所得税の精算が行われている場合には、改めて自身で確定申告を行う必要はありません。

2確定申告を行う必要のある給与所得者

多くの給与所得者は年末調整によって所得税の精算が行われますが、下記に該当をする場合には、確定申告が必要です。

①給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
②1ヶ所から給与の支払を受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
③2ヶ所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
④同族会社の役員等で、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料等を受け取っている人
⑤災害減免法により源泉徴収の猶予等を受けている人
⑥源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
⑦退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

3確定申告を行った方が良い給与所得者

確定申告を行う必要のある給与所得者以外にも、義務で無いが確定申告を行った方が得になる場合もあります。
それは、年末調整の精算に加えて情報を税務署に提供をすることで、所得税が還付される人です。所得税が還付される可能性がある場合とは、下記の場合をいいます。

①年の途中で退職し、年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎとなっているとき
②一定の要件のマイホームの取得等をして、住宅ローンがあるとき
③マイホームに特定の改修工事をしたとき
④認定住宅等の新築等をした場合
⑤災害や盗難等で資産に損害を受けたとき
⑥特定支出控除の適用を受けるとき
⑦多額の医療費を支出したとき
⑧特定の寄附をしたとき
⑨上場株式等に係る譲渡損失の金額を申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得等の金額から控除したとき

4まとめ

給与所得者の多くは年末調整を受けることで確定申告が不要となりますが、一定の条件のもとでは、確定申告を行う必要のある又は行った方が良い人に該当をします。
確定申告の必要性について、給与所得者であっても毎年ご確認をすることをおすすめ致します。

142 65万円?55万円?10万円?青色申告特別控除とは?

所得税の申告を青色申告で行う最大のメリットとして挙げられる青色申告特別控除。青色申告特別控除は納付すべき所得税を減額する効果がありますが、その控除額には、65万円と55万円と10万円の3つの種類があります。
今回は、青色申告特別控除と、それぞれの控除額の対象となる人についてご紹介を致します。

1青色申告特別控除とは

青色申告特別控除とは、青色申告を行う事業者が課税所得から差し引くことの出来る控除です。

例えば、事業収入が200万円、事業経費が50万円の青色申告を行う事業者は、青色申告特別控除を適用しない場合は、差額の事業所得150万円に対して所得税が課されます。
一方で青色申告特別控除を適用し65万円の控除を受けられる場合は、事業所得150万円から65万円を差し引いた85万円に対して所得税が課されます。
このように、青色申告特別控除は課税所得を減額することができるため、所得税の減額に効果があります。

55万円の控除と65万円の控除を比較すると、上記の例の場合は、所得税率が5%に該当をするため、税額にして5,000円の差ですが、所得税の最大税率は45%であるため、最大45,000円の差が生じることになります。

2控除額55万円の対象者

青色申告特別控除額が55万円となる人とは、下記の要件を満たす人です。
・事業所得、不動産所得のいずれかが生じる事業を営んでいること
・事業所得又は不動産所得に係る取引を、正規の簿記の原則により記帳していること
・正規の簿記の原則によった記帳に基づき、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付し、控除を受ける金額を記載し、確定申告期限までに提出を行うこと

3控除額65万円の対象者

青色申告特別控除額が65万円となる人とは、上記の55万円となる要件に加えて、下記のいずれかの要件に該当をする人です。
・その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること
・その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Taxを使用して行うこと

4控除額10万円の対象者

青色申告特別控除額が10万円となる人とは、上記の55万円となる要件及び65万円となる要件を満たさない人です。

5まとめ

青色申告を行う最大のメリットは、青色申告特別控除額の適用にありますが、控除額の選択にはそれぞれ要件がありますので、注意が必要です。
要件の適合についてご不明な点がございましたら、税務署や身近な専門家に相談されることをおすすめ致します。

141 個人事業主は7月までに要確認!所得税の予定納税とは

例年7月末日は、所得税の予定納税の納付期限です。所得税の予定納税は、所得税を納める全ての人を対象とするものでは無く、また毎年税額が変わることから、納期限までに資金繰りを失念しやすい税金のひとつです。
今回は、所得税の予定納税についてご紹介を致します。

1所得税の予定納税が必要な人

所得税の予定納税が必要な人とは、その年の5月15日時点で確定をしている前年中の所得を基礎として計算をされた予定納税基準額が、15万円以上である人です。
予定納税基準額が15万円以上ある人は、前年と同様に所得があることが見込まれることから、年間で支払うべき所得税額を確定申告時に一度に支払うのではなく、1/3ずつの分割払いを求めるものです。

2予定納税基準額とは

予定納税基準額とは、下記の全てに該当をする場合は申告納税額のことをいい、それ以外の場合は、前年分の課税総所得金額および分離課税の上場株式等に係る課税配当所得等の金額に係る所得税額から源泉徴収税額を控除して計算した金額および当該金額の復興特別所得税額の合計額のことをいいます。
・前年分の所得金額のうちに、山林所得、退職所得等の分離課税の所得および譲渡所得、一時所得、雑所得、平均課税を受けた臨時所得の金額がない
・前年分の所得について外国税額控除の適用を受けていない
・前年分の所得税について災害減免法の規定の適用を受けていない

3予定納税の金額と納期限

予定納税の金額は、予定納税基準額の1/3ずつであり、6月15日までに書面で金額が税務署より通知されます。
予定納税の納期限は、第1期目は7月1日から31日まで、第2期目は11月1日から30日までです。

例えば令和4年度確定申告によって決定された予定納税基準額が15万円、令和5年度確定申告によって決定された所得税の年税額が20万円である場合には、第1期目の令和5年7月には予定納税基準額の1/3である5万円、第2期の令和5年11月も同じく5万円、そして確定申告時の令和6年3月には年税額の20万円から予定納税で納めた計10万円を差し引いた10万円を納めることになります。

4予定納税額が減額される場合

事業成績が前年と比較し急激に悪化した場合等には、予定納税額が減額されます。これには条件があり、減額される場合とは、その年の6月30日の現況で所得税および復興特別所得税の見積額が予定納税基準額よりも少なくなる場合です。
この場合には、7月15日までに所轄の税務署長に予定納税額の減額申請書を提出し、承認を受けることで、予定納税額の減額を適用することができます。

5まとめ

上記のように、所得税の予定納税の有無やその金額は、前年中の所得を基礎として計算された予定納税基準額によって判断がされます。
毎年同額を納付する必要のある税金では無いため、個人事業主が失念しやすい税金のひとつです。
失念されぬよう、是非ご参考になさって資金繰り計画にお役立てください。。

140 副業の収入は、何所得?

 

会社員でも、副業をし、収入を得る人は増加しています。なかには、開業届まで提出し、本業さながらの副業をしている人もいます。
ここで、問題になるのが、副業の収入は、何所得になるか?ということです。開業届を出しているのだから、事業所得になるのではないかと思うかもしれませんが、決してそうではありません。
本記事では、副業の収入と所得について記載をします。

●副業の収入は、事業所得か雑所得か

副業の事業形態にもよりますが、副業の収入は、事業所得か雑所得かというのが、論点になります。
では、事業所得と雑所得は、どういった基準で判断されるのか、詳細を記載いたします。

・事業とは?
そもそも事業とは、どういったものを指すのでしょうか?事業のポイントは、「営利性」「反復継続して行われること」となります。
営利性は、一言でいうと、儲けることです。事業が黒字か赤字かということで判断し、赤字が継続して続く場合は、営利性に欠けることとなります。
反復継続とは、事業は、続いていくものが前提ということです。2年3年という短い期間であれば、営利性があっても事業と判断されない可能性があります。

・事業所得と雑所得の違い
事業所得と雑所得の違いは、主に以下のとおりです。
1 事業所得は、青色申告ができる
青色申告ができれば、青色申告特別控除や損失の繰越し、家事関連費の経費算入など、様々なメリットがあります。

2 事業所得は、損益通算ができる
事業所得の損失は、他の所得と通算することができます。一方、雑所得は、雑所得内の通算はできますが、他の所得との通算はできません。

上記のとおり、事業所得の方が税制面でのメリットは、多いです。しかし、事業所得の場合、帳簿の記帳など、事務の手間は増えます。

・副業の所得の判定
副業の所得の判定は、「帳簿の記帳」「金額」「営利性」により、判断されます。
まず、帳簿の記帳です。帳簿がない場合の副業は、雑所得と判断されます。
では、帳簿があれば、すべて事業所得かというと、決してそうではありません。
まずは、収入金額の判定です。副業の直近3年間の平均収入が、本業の直近3年間の平均収入の10パーセント以下の場合は、雑所得と判断されます。
つまり、副業で100万円を稼いでいても、本業の年収が1,000万円ある場合は、10%以下であるため、雑所得と判断されます。
さらに、営利性です。3年間連続で赤字の場合は、営利性がなく、事業ではなく、雑所得と判定されます。事業所得であれば、故意に多額の赤字を出し、他の所得と通算をするということができてしまうため、そういったことへの対応措置といえます。

●まとめ

本記事では、副業の所得の判定について、記載をしました。
副業を事業所得にして、節税効果を得たいという人はいると思います。ただし、事業所得にするには、帳簿の記帳が必要なことや収入や営利性での基準がありますので、事業所得のつもりが、雑所得になってしまったとならないように、注意をしましょう。

139 事業規模の不動産所得とそうでない不動産所得の違いとは?

不動産(土地、アパート、貸家等)の貸付けによる所得は、不動産所得となります。これは、事業として、不動産業をおこなっていても、事業所得ではなく、不動産所得です。
不動産所得の計算は、「事業的規模」と「事業的規模以外」に分かれます。どちらに該当するかにより、所得計算も変わってきます。
本記事では、不動産所得の事業的規模の判断、計算の違いについて、記載をしていきます。

●事業となる不動産所得とは?所得計算の異なる点は?

不動産所得が事業かそうでないかは、どうやって判断をすればよいのでしょうか、また、それにより、所得計算がどう変わってしまうのでしょうか、詳細を記載します。

・不動産所得の事業的規模の判定
事業となる不動産所得になるには、一応の基準があります。それは5棟10室基準というものです。
独立家屋の貸付が5棟以上、または、アパートの貸付が10室以上であれば、事業的規模の不動産所得となります。建物以外の土地の場合は、5か所で1室相当、また、駐車場は、自動車5台で1室相当といわれています。つまり、駐車場だけで、事業的規模と判断されるには、自動車50台に対して貸付けをすることができる規模の駐車場が必要となります。

・貸家やアパート、駐車場が混在している場合
上記のとおり、不動産所得が事業的規模と判断されるためには、5棟10室がひとつの基準となります。
では、貸家が3棟、アパートが6室、駐車場が10台の場合、どう判定をするのでしょうか、この場合、個々に判断をするのではなく、合算して5棟または10室を満たしているかで判断をします。
貸家は1棟がアパート2室相当で換算されます。駐車場は5台でアパート1室相当です。
この場合、室数に換算をすると、3棟×2(貸屋)+6(アパート)+10 / 5(駐車場) となるため、合計は14室相当となり、10室基準をクリアし、事業的規模となります。

・事業的規模とそうでない場合の所得計算
事業的規模かそうでないかの基準は示すことができました。では、事業的規模かそうでないかによって、所得計算は、どう変わるのでしょうか
結論、事業的規模の方が、税負担緩和措置がいくつかあります。
まずは、青色申告特別控除です。事業的規模の場合は、55万円か65万円ですが、そうでない場合は、10万円です。
次に青色事業専従者給与と白色申告の場合の専従者控除です。事業的規模の場合は、適用がありますが、そうでない場合は、適用がありません。
さらに、資産に損失が生じた場合、事業的規模の場合は、損失額すべてが必要経費になりますが、そうでない場合は、不動産所得が0円になるまでが限度です。つまり、資産損失では、不動産所得をマイナスにできず、他の所得と通算することができないということになります。

●まとめ

本記事では、不動産所得の事業的規模の判定と所得計算の違いについて、記載をしました。
5棟10室基準というものがありますが、4棟や9室だからといって、ただちに事業性が否定されるわけではありません。総合的に勘案されることもあります。
しかしながら、一応の判定基準としては、有効なので、不動産が事業に該当するかそうでないかの判断に迷った場合は、5棟10室を基準に考えるのがよいでしょう。

138 源泉徴収は必要?フリーランス等の個人に対する支払い時の注意点

フリーランスで働く人の増加につれて、その支払いに対して源泉徴収をするのかしないのかという判断も増えていきます。
源泉徴収が必要か不要かは、所得税法等により、定義づけされています。
どういった支払が源泉徴収が必要で、どういった支払が不要なのでしょうか、本記事では源泉徴収が必要な場合と不要な場合について、記載をいたします。

●源泉徴収とは?

源泉徴収とは、個人への報酬等の支払時に所得税を差し引いて支払う制度となります。
源泉徴収を行うことにより、個人の税金の滞納や納付忘れを防止することができ、また、国税の収入を平準化することができます。
以下、詳細を記載いたします。

・源泉徴収が必要な報酬等

源泉徴収が必要な報酬等は、以下のとおりです。
1 原稿料や講演料等
2 弁護士等の特定の資格を持つ人に支払う報酬等
3 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
4 プロのスポーツ選手やモデル等に対して支払う報酬等
5 TV等の出演等に対して支払う報酬等
6 ホステス等に支払う報酬等
7 プロスポーツ選手の契約金等、一時に支払う契約金
8 広告宣伝や馬主等に対する賞金

このなかで、実務で多く使用するのは、主に1と2になります。したがって、1と2ついて詳細を記載します。

・原稿料や講演料等に対する源泉徴収

原稿料や講演料等に対する源泉徴収は多岐にわたります。原稿料や講演料だけではなく、絵や写真、デザインや作曲、翻訳や通訳、指導料(投資の助言も含む)等も含まれます。
これらの支払いの名目が謝金や取材費、車代となっていても、実態が上記に該当すれば、源泉徴収をしなければなりません。
ただし、懸賞応募作品等の入選者や新聞、雑誌等の投稿の謝金(原稿料に該当する)は、1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

・弁護士等の特定の資格を持つ人に支払う報酬等の源泉徴収
弁護士等、いわゆる士業に対する支払いは、源泉徴収が必要です。弁護士以外にも司法書士や税理士、会計士、測量士や建築士等も該当します。
これらに対する支払いで、その士業の独占業務以外の対価であっても、源泉徴収は必要です。例えば、税理士であれば、独占業務である「申告書の作成」や「税務相談」以外の「記帳代行等」でも源泉徴収は必要です。
ただし、旅費や印紙代等の実質的に立替分の請求であれば、その対価に対する支払いは、源泉徴収は不要となります。

・源泉徴収の金額
源泉徴収の金額は、支払金額が100万円以下であれば、支払金額の10.21%、支払金額が100万円を超える部分は20.42%となります。
例えば、150万円の支払いの場合、100万円×10.21% + (150万円 – 100万円)×20.42%=204,200円となります。
請求書等の表示が税込みの場合は、税込み金額に上記率をかけます。表示が税抜きの場合は、税抜き金額に上記率をかけます。

・源泉徴収が不要の場合

原稿料や講演料等、士業に対する支払いは、源泉徴収が必要である旨を記載しました。ただし、そもそもの源泉徴収義務者でなければ、上記の支払いであっても源泉徴収は不要です。
源泉徴収義務者とは、「法人または給与の支払いを行っている個人事業主」となります。
つまり、事業を行っていない会社員の方等が確定申告を税理士に依頼して対価を支払う場合、そもそも源泉徴収義務者に該当しないため、源泉徴収は不要となります。

●まとめ

本記事では、フリーランス等の個人に対する支払いの源泉徴収について記載をしました。
源泉徴収が必要か不要かの判断は、まず、相手が個人か法人かで判断をし、個人であれば、本記事に記載をした業務内容に該当をするかで判断をします。源泉徴収が必要だったがしていなかった場合、不納付加算税等のペナルティがあるので、注意をしましょう。

 

137 納税義務者の区分について

日本国憲法第30条において、日本国民は、納税の義務を負うことが明示されています。
納税は、日本国民の三大義務(教育、勤労、納税)のひとつであり、非常に重要なものです。
では、納税義務者は、すべて同じ扱いかというと、そうではありません。所得税法では、納税義務者を「非永住者以外の居住者」「非永住者に該当する居住者(以下、非永住者)」「非居住者」の3つの区分に分けています。
それぞれの違いはなにか、課せられる税金はどのように違うのか、本記事では、納税義務者の区分について、記載をいたします。

●課税所得の範囲と課税方法

「非永住者以外の居住者」「非永住者」「非居住者」の何が違うかというと、「課税所得の範囲」と「課税方法」です。まずは、居住者等の定義を明確にし、それぞれ、詳細を記載します。

・居住者等の定義

居住者とは、国内に住所を有していること、または、1年以上居所を有している個人を指します。
例えば、日本国内に住所がなくても、日本に1年以上住んでいれば、居住者に該当します。
通常は、居住者に該当することが多いです。
非永住者とは、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内の居住者期間が5年以下の個人を指します。外国籍の方が、初めて日本に来た場合、5年間は非永住者となります。
非居住者とは、居住者以外の個人を指します。居住者、非永住者に該当しなければ、非居住者となります。日本国籍を有していても、日本に住所が無い場合、非居住者となります。

・課税所得の範囲

課税所得の範囲とは、どこまでの所得に対して課税をするかということです。
非永住者以外の居住者は、すべての所得に対して課税されます。海外に所得があっても、日本で課税をされます。
非永住者は、日本で得た所得または国外で得た所得で日本国内に送金されたものに対し、課税されます。
非居住者は、国内で得た所得のみです。日本に住所はありませんが、日本国内で不動産の貸付等を行っている場合等が該当します。

・課税方法

課税方法とは、すべての所得を通算して課税する「総合課税」か個別に課税する「分離課税」どちらで課税をするかということとなります。
居住者(非永住者含む)の場合、原則として総合課税となります。
一方で非居住者は、国内に支店や工場等(恒久的施設といいます)を有している場合、その恒久的施設で得られる所得は、居住者に準じて課税されます。つまり、原則として総合課税となります。
上記以外の非居住者の所得もさらに2つに分かれます。1つは国内にある資産の運用等による所得です。これは、居住者に準じて課税されます。先ほども説明したとおり、国内の不動産の貸付等はこれに該当します。
その他の国内源泉所得は、分離課税となります。例えば、日本国内での役務の提供による給与等が該当します。この場合、20%の源泉分離課税となります。

●まとめ

本記事では、納税義務者の区分について記載をしました。多くの方は、居住者に該当をすると思います。しかしながら、外国籍の方が日本に赴任をしてきた場合や自身が海外へ赴任をした場合は、居住者に該当しない可能性が出てきます。
その場合、自分の所得はどうなるのか、改めて、確認が必要となります。

 

136 海外に住所を移した場合、納税義務はどうなる?

グローバル化が進む現代では、国外で働くということも珍しくはありません。出張ではなく、現地赴任となると、住所ごと海外へ移す必要があります。
しかしながら、海外へ転居した場合、「国内の税金関連はどうなるのか?」「確定申告書は出さないといけないのか?」という疑問点が生じると思います。
本記事では、海外へ転居した場合の課税関係について記載をいたします。

●海外へ転居した場合の所得と確定申告

海外へ転居をした場合でも、国内での納税義務があります。例えば、海外転居後でも国内資産の運用の所得や海外に転居する前までの所得に対するものです。所得が発生するということは、確定申告も必要になる場合もあります。以下、詳細を説明いたします。

・海外へ転居するまでにすべきこと
海外へ転居することになった場合、転居日までに確定申告書を提出しなければなりません。ただし、納税管理人の届出をおこなえば、通常の確定申告同様、3月15日までに提出をすれば大丈夫です。
納税管理人とは、国内の納税義務を委託する者を指します。特に資格は必要ありませんので、親兄弟、勤務先の法人などでも納税管理人に指定をすることができます。ただし、確定申告書の作成等は、税理士の独占業務となるため、納税管理人に税理士資格が必要となります。

・海外へ転居しても国内の所得になるもの
海外へ転居し、現地で働いて受け取る給与は、日本国外の所得となるため、日本ではなく、転居先の国で課税をされることになります。しかし、日本国内で土地やアパートなどを貸付けて収入がある場合、海外に転居をしていても、国内源泉所得となるため、日本の所得税が課されます。この場合において、所得が発生するようであれば、確定申告義務が生じます。海外で自分が確定申告書を作成し、国内の納税管理人に提出をしてもらうか、税理士を納税管理人に指定する必要があります。

・海外へ転居時の注意点
海外へ転居時に注意をしないといけないのが、住民税と固定資産税です。住民税も固定資産税もその年の1月1日が納税義務の判定基準となるため、1月は国内にいて、4月から海外へ転居をしたという場合、住民税(6月に納付書が届く)や固定資産税(4月に納付書が届く)を納付しなければなりません。
納付だけであれば、税理士資格は必要ないため、こういった税金を納めるためにも、納税管理人の届出はしておいたほうがよいでしょう。

●まとめ

本記事では、海外転居と課税関係について記載をしました。海外へ転居をすると郵便物が受け取れず、結果、税金を納められず、加算税が課されたということになる可能性もあります。
そうならないためにも、国外転居時の注意点や納税管理人を指定しておくなど、事前にやるべきことを行ってから、国外へ転居をしましょう。

135 ふるさと納税とは?制度の詳細を解説

ふるさと納税という言葉は、一度は耳にしたことがあると思います。ふるさと納税を行えば、地方自治体に関連する返礼品がもらえ、かつ、税額が安くなるというものとなります。
ただ、「ふるさと納税とは、いったいどういった仕組みなのか?」「ふるさと納税をすればするほど得になるのか」という疑問点が生じるかと思います。
本記事では、ふるさと納税と税制の仕組みについて記載をいたします。

●ふるさと納税の仕組みと税の関連性

結論から申し上げますと、ふるさと納税とは、地方自治体への「寄附金」となるため、所得税であれば「所得控除」となり、住民税であれば「税額控除」となります。
詳細を以下に記載いたします。

・ふるさと納税の仕組み

ふるさと納税とは、先にも記載したとおり、地方自治体への寄付金となります。所得税は、国税であるため、国が徴収するものですが、住民税は、地方税になるため、住所所在地の地方自治体が徴収することになります。
本来、住所所在地の地方自治体に納付する税金を他の地方自治体に寄付をすることにより、ふるさと納税を受けた地方自治体は、税収が増えます。その見返りとして、返礼品があるという仕組みになります。

・寄付金控除の計算

地方自治体へ寄付金を行うことにより、所得税は所得控除、住民税は税額控除を受けることができます。
所得税の場合、所得控除であるため、寄付をした分の税金がすべて減るわけではありません。所得控除後の所得に税率をかけて、所得税が算出されます。
一方、住民税の場合、税額控除となるため、寄付をした金額で2,000円を超える部分は、税額が
減ります。10,000円寄付をした場合、8,000円分の税額が控除されます。ですので、実質2,000円の負担で返礼品がもらえるということになります。

・複数の自治体へ寄付をおこなった場合

寄付を複数の自治体へおこなっても、2,000円の負担は変わりません。例えばA県とB県にそれぞれ10,000円ずつふるさと納税をおこなったとします。
合計は20,000円です。そこから2,000円を超える18,000円が税額控除となります。そして、返礼品はA県B県両方からもらえるということになります。
なお、注意点としては、住民税で控除することができる税額には、限度があるということです。
寄附金税額控除前の住民税額の20%までが限度となります。それ以上は、ふるさと納税を行っても税額控除をすることはできないため、注意が必要です。

・ふるさと納税の方法

ふるさと納税をどうおこなえばいいかは、専用のサイト(さとふる、ふるなび、ふるさとチョイス等)から、アカウントを登録すれば、簡単に行うことができます。
また、ふるさと納税の寄付金控除を受けるためには、確定申告またはワンストップ特例申告という書面を提出する必要があります。
ふるさと納税をおこなった後、地方自治体から寄付証明が届きますので、必ずなくさないようにしてください。確定申告で必要になります。

●まとめ

本記事では、ふるさと納税について記載をしました。ふるさと納税とは、地方自治体への寄付金であり、住民税の税額控除を受けることができ、かつ、返礼品をもらうことができます。
ふるさと納税をうまく活用することによって、支出した金額以上の経済的利益を得られますので、ぜひ活用しましょう。

134 ひとり親控除と寡婦控除とは?意義や違いについて解説

税の制度というのは、社会情勢や背景も加味し、改正が行われます。
最近の改正のひとつとして、所得控除の「ひとり親控除」というものが、2020年から開始しました。これは、「ひとり親」に対する税負担緩和措置となります。
一方、今までは「寡婦控除」というものがあり、「寡婦控除」は「ひとり親控除」実施後も制度としてあります。
では、「ひとり親控除」と「寡婦控除」の違いはなにか?どういったときに適用されるのか?
本記事では、「ひとり親控除」と「寡婦控除」について記載をしていきます。

●ひとり親控除、寡婦控除の適用要件や意義とは?

ひとり親控除も寡婦控除も共通する条件は、夫婦のうち、どちらかひとりだけがいるという場合です。では、その違いの詳細を解説していきます。

・ひとり親控除の要件と控除額等

ひとり親控除の適用要件は、下記すべてを満たす場合となります

1 結婚をしていない、事実婚の関係の者がいない、または、配偶者の生死が不明
2 生計を一にする子供(子供の合計所得金額が48万円以下)がいる
3 合計所得金額が500万円以下

ひとり親という言葉のとおり、子供を扶養していることが必要となります。
ひとり親控除の対象になれば、35万円(住民税は30万円)の所得控除を受けることができます。また、ひとり親控除は男女を問わず適用を受けることができます。

・寡婦控除の要件と控除額等

寡婦控除の適用要件は、下記のいずれかに該当する場合となります。

1 夫と離婚後、結婚しておらず(事実婚にも該当しない)、合計所得金額が500万円以下、かつ扶養親族がいること
2 夫が死亡または生死不明で、合計所得金額が500万円以下

寡婦控除は婦とあるように、女性限定の制度です。また、ひとり親控除との違いは、扶養親族となる対象は子供でなくても良いということになります。親や兄弟を扶養親族にしていても適用を受けることができます。
一方で、離婚や夫の死亡という要件があるように、一度は婚姻をしていることが必要となります。ひとり親控除では、結婚していないという文言であるため、婚姻をしていた事実は必要がありません。
寡婦控除の対象となる場合、27万円(住民税は26万円)の所得控除を受けることができます。

・その他の税制のメリット

ひとり親や寡婦に該当する場合で、前年の合計所得金額が135万円以下の場合は、住民税が非課税となります。所得税だけに目がいきがちですが、住民税には、こういったメリットがあるので、覚えておくとよいでしょう。

●まとめ

本記事では、ひとり親控除と寡婦控除について記載をしました。
ひとり親控除が導入されたことにより、税制の男女平等、未婚の親であっても要件を満たせば、所得控除の適用を受けることができるようになりました。ひとり親控除や寡婦控除は、社会情勢を加味した税制改正のわかりやすい例となります。ぜひ、覚えておきましょう。

 

133 資産が控除を受けた場合の控除

地震や火災など、災害により、資産が予期せぬ損失を受けてしまう場合があります。(以下「資産損失」といいます)
所得税では、そういった場合に税金を緩和する措置があります。
では「具体的にどういった緩和措置があるのか」「資産はどういった資産でもいいのか」といった疑問点が生じると思います。
本記事では、資産の損害と税の緩和について記載をいたします。

●資産損失とは?その種類は?

資産損失は、大きく分けて3つになります。
「①事業用資産の損失」「②生活に通常必要な資産の損失」「③生活に通常必要でない資産の損失」
となります。それぞれ、解説をしていきます。

・①事業用資産の損失

事業用資産に損失が生じた場合、その損失が生じた年の事業所得、不動産所得、山林所得、雑所得の必要経費に算入されます。つまり、所得計算上の控除となります。
例えば、棚卸資産、事業用固定資産が災害等により損失を受けたこと、または、事業用の現金預金の盗難、横領等も対象となります。
資産の場合は、取得価額が損失金額となります。減価償却の対象となる資産の場合、減価償却控除後の金額となります。
また、損失が保険金等で補填された場合も、その補填された金額は、損失金額から控除します。
例えば、資産損失が1,000万円、保険金で500万円補填された場合、1,000万円 – 500万円=500万円が必要経費に算入される金額となります。

・②生活に通常必要な資産の損失

生活に通常必要な資産に損失が生じた場合、一定の金額を所得控除(雑損控除)という形で控除をすることができます。
例えば、自宅や生活用財産等に資産損失が生じた場合が該当します。また、災害に関連して支出した金額(現状回復費用)等も損失同様控除を行うことが可能です。
ただし、雑損控除は、損失から課税標準の10%を控除した金額となります。その年の課税標準が1,000万円で損失が100万円の場合、100万円 - 1,000万円×10%=0となるため、控除をすることができません。

・③生活に通常必要でない資産の損失

生活に通常必要でない資産に損失が生じた場合、損失額は、譲渡所得の計算上控除できます。生活に通常必要でない資産とは、別荘やクルーザー、競走馬、30万円超の貴金属や絵画類等が該当します。
譲渡所得の金額から控除できますが、そもそも譲渡所得が生じていなければ、控除をすることができませんので、①や②と比べると、税負担の緩和効果は薄いものとなっています。
また、譲渡所得でも土地・建物、株式等の分離課税のものからは控除することができません。こちらも注意点となります。

●まとめ

本記事では、資産損失が生じた場合の処理について記載をしました。
資産損失が生じた場合、まず、その資産がどの区分に該当をするのかを確認し、正しい処理を行うことが重要です。また、取得費等の情報も必要となるため、資産の情報の整理等は常に心がけておくようにしましょう。

 

132 配偶者控除と配偶者特別控除の違いとは?詳しく解説

103万円の壁という言葉を耳にしたことはあると思います。年収103万円とは扶養親族や控除対象配偶者になれるか否かという年収のラインになります。
しかしながら、2018年に配偶者特別控除の控除枠が拡大しました。それにより、年収103万円から150万円の間でも、年収103万円以下と同様の控除を受けることが可能となりました。
では、「そもそも配偶者控除と配偶者特別控除とは何か?」「これらの違いは?」などの疑問点が生じると思います。
本記事では、配偶者控除と配偶者特別控除について記載をいたします。

●配偶者控除、配偶者特別控除とは?

配偶者控除も配偶者特別控除も配偶者の所得が一定以下であれば、所得控除を受けることができるというものです。これは、生活費に考慮した制度となります。
以下、詳細を記載します。

・配偶者控除・配偶者特別控除を受けた方が得になる?

経済単位を夫婦と考えた場合、配偶者が稼ぐよりも、もう一方が配偶者控除・特別控除を受けることにより、税金が安くなり、結果、夫婦にお金が残るという場合もあります。
特に所得税の場合、超過累進税率であるため、片方の収入が高いと、所得税率も高くなります。例えば、所得が900万円あり、所得税率が33%の場合があるとします。配偶者控除を使用し、38万円の所得控除を受けると、38万円×33%=12万5400円の税負担の緩和があります。
配偶者が稼ぐのを抑えることにより、結果、得をするというケースは多々あります。

・配偶者控除の制度の詳細

配偶者控除は、合計所得金額が48万円(給与収入で103万円)以下の配偶者を有している場合、38万円の所得控除を受けることができるというものです。配偶者の年齢が70歳以上であれば、48万円となります。
注意点は、配偶者控除の適用を受ける側の合計所得金額が900万円を超えると配偶者控除の金額は減額され(900万円超950万円以下は、3分の2となり、950万円超1000万円以下は3分の1となります。)、1000万円を超えると、配偶者控除を受けることはできません。
配偶者の収入だけではなく、自分の収入にも気を配る必要があります。

・配偶者特別控除の制度の詳細

配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が48万円超123万円以下(給与収入で103万円超201万6千円以下)であっても、控除を受けることができるというものです。
ただし、所得が多くなるにつれて、控除額は少なくなります。合計所得金額が95万円(給与収入で150万円)までなら、配偶者控除同様38万円の控除を受けることができます。
そこからは、収入に比例して下がっていき、最小は3万円の控除となります。
なお、70歳以上の加算はなく、配偶者控除同様、合計所得金額が900万円を超えると減額されていきます。

●まとめ

本記事では、配偶者控除と配偶者特別控除について記載をしました。103万円の壁という言葉の印象が強く、年収を103万円以内におさえてしまうかもしれませんが、配偶者特別控除があるため、150万円まで収入を得ても、控除金額は変わりません。
制度をよく理解し、自分が選択すべき正しい働き方をしましょう。

131 所得控除とその種類を解説

個人の所得税というのは、各種所得の金額で決定します。しかし、所得税には、所得控除というものがあります。どれだけ、稼いで所得が高くても所得控除が多額にあれば、税負担をおさえることができます。
では、「所得控除にはどのようなものがあるか?」「どれくらいの金額を控除することができるのか?」という点が気になるところだと思います。
本記事では、所得控除について記載をいたします。

●所得控除とは?

所得税とは、個人の税金です。ただ稼いだから、税を課すということではなく、各個人の事情を考慮する必要があります。配偶者を含む扶養家族がいるのかなどが代表例です。日常の生活費の負担を税に考慮するために所得控除はあります。
以下、詳細を記載いたします。

・所得控除は人的控除と物的控除に分かれる

所得控除は15種類あります。大きく2つにわけることができ、「人的控除」と「物的控除」になります。
「人的控除」とは、人に起因して受けることができる所得控除になります。一方、物的控除とは、物の支払や損害等に起因して受けることができる所得控除になります。
一部抜粋して、紹介をします。

・人的控除の詳細

「人的控除」には、「扶養親族」「配偶者(配偶者特別)」「ひとり親」「障害者」控除などがあります。
16歳以上の扶養親族がいる場合は、38万円(19歳以上23歳未満は63万円、70歳以上は48万円、70歳以上かつ自身または配偶者の同居直系尊属の場合は58万円)、
控除対象となる配偶者がいる場合は、38万円(合計所得金額が900万円以下の場合)、
ひとり親で一定の要件に該当する場合は、35万円、
障害者である扶養親族を有している場合は、障害の度合いにより、27万円から75万円が控除できます。
上記以外にも「寡婦」「勤労学生」「基礎」があります。
このように、扶養義務があることやひとり親、障害者など、生活の支援が必要な場合に、生活費を配慮して所得控除を行うものが「人的控除」です。

・物的控除の詳細

「物的控除」には、「社会保険料」「生命保険」「医療費」「雑損(資産の損失)」控除などがあります。
社会保険料は、支払った額がそのまま所得控除になります。生命保険は一定の計算をし、最大12万円、医療費は最大200万円を控除することができます。
また、保有する資産が災害により損害を受けた場合(災害に関連する支出も含む)も資産の損失額を控除できます。
上記以外にも「寄付金」「地震保険」「小規模企業共済等掛金」控除があります。
このように、社会保険や生命保険の支払い、医療費の支払い、保有する資産が災害により被害を受けたなど、金銭の支払いや物に起因するものが「物的控除」です。

●まとめ

本記事では、所得控除について記載をしました。所得控除の適用を受けるためには、年末調整や確定申告で、自己の申告が必要となります。本来受けれる所得控除を申告を忘れたために受けられなかったということがないように、今一度、所得控除を受けることができないか、確認をしましょう。

 

 

130 棚卸資産と固定資産の違いは?

事業を営んでいる場合、資産を取得することがあります。高額のビルや土地もあれば、販売する商品、少額の備品などさまざまです。
これらの資産は「会計上どうなるのか」「税務にどういった影響があるのか」という疑問があると思います。
本記事では、会計上の資産について記載をいたします。

●資産の種類と区分方法

資産には、いくつかの種類があります。資産は、金額や使用年数などで区分をします。
資産について、詳細を記載します。

・資産の種類

資産は大きく分けると、棚卸資産と固定資産、資産計上を行わない少額の備品に分かれます。
棚卸資産は、販売目的の資産になります。仕入を行う商品などが対象となります。
一方、固定資産は、使用期間が1年超で、かつ、金額が1つ20万円以上のものになります。使用期間が1年以下であれば、高額であっても固定資産にはなりません。
例えば、販売用の貴金属など高価なものは、仕入価額が20万円を超える場合があります。しかし、販売用であるため、通常は1年以内に販売をするものです。そのため、固定資産にはならず、棚卸資産とすることが適切な処理となります。
資産計上を行わない少額の備品は、1つ20万円未満の少額の資産です。ただ、10万円以上20万円未満のものは、一括償却資産となり、税務上は3年で償却をするので、注意が必要です。

・資産はいつ経費になる?

資産が費用として計上される時期も資産の種類によって変わります。
まず、棚卸資産は、商品の販売時となります。例えば、5000円で仕入れをしたものが、10000円で売れた場合、売上10000円、売上原価5000円と計上されます。

一方、固定資産は減価償却の対象となり、減価償却費として、数年にわたって費用化されます。年数は法定耐用年数というものがあり、短いものなら2年、長いものなら50年以上かけて費用化されるものもあります。

少額の備品などは、購入時の費用となります。
・20万円以上の資産でも経費にできる

20万円以上のものは固定資産になり、減価償却の対象となります。
しかし、青色申告者の場合、1つ30万円までの資産であれば、減価償却をせず、取得した年に費用とすることができます。これを少額特例といいます。
ただし、1年あたりの限度額は300万円となるので、覚えておきましょう。

・固定資産にすることでかかる他のコスト

固定資産には、取得費用以外にかかるコストがあります。それは、償却資産税というものです。固定資産税ともいいます。
資産が設置してある地方自治体ごとに申告や支払いが必要となります。申告は毎年1月31日となります。多数の資産を取得している場合は、事務処理が増えるため、あらかじめ資産のリストを作成しておき、資産がどこにあるかを明確にしておくとよいでしょう。

●まとめ

本記事では、資産について、記載をしました。
資産は棚卸資産と固定資産にわかれます。特に固定資産は金額での分類や耐用年数などの判定が必要になるので、注意が必要です。
固定資産にしないといけないのに、費用にしてしまった。耐用年数を間違えたとなると、修正が必要となるので、慎重に判断をし、処理をしていきましょう。

129 事業の経費にできるものとできないものとは?

事業を営んでいる場合、使用した経費は収入から控除をすることができます。結果、利益である所得が減り、所得をもとに計算をされる税金も減ります。
では、「経費にできるもの、できないものの違いは何か?」「使用したものであれば、なんでも経費にすることができるのか?」という疑問が生じると思います。
本記事では、経費について記載をします。

●経費にできるものとできないものの分類

経費にできるものというのは、曖昧ですが、法令で記載はあります。経費にできるもの、できないものを解説していきます。

・経費にできるものとは

経費とは、所得税法第37条を要約すると以下のように記載をされています。

・売上原価
・収入を得るために直接要した費用
・販売費および一般管理費
・所得を生ずべき業務について生じた費用

つまり、商品販売であれば、その原価、得意先へのリベート、商品を発送するための運賃、従業員の給与などが代表的な経費の例です。他にも業務に関連をしているものであれば、経費となります。
しかしながら、どこまでが業務に関連して、どこまでが関連しないかというのは、曖昧な部分があるので、個人の判断に委ねられる部分もあります。もし、経費に計上するのであれば、事業に関連をしているものであるという根拠を示しておくことが重要です。

・明確に経費にならないもの

経費の定義もあれば、経費にならないものの定義も所得税法45条に記載されています。
代表的なものは下記のものです。

・家事費、家事関連費
・住民税、所得税
・延滞税や加算税等
・罰金
・賄賂

これらは、経費にならないと明確に記載されているので、経費にはなりません。
例をあげると、家事費とは、日常の食費があげられます。住民税や所得税は経費を差し引いて所得を計算した結果支払うものです。延滞税等、法に違反した支出も経費にできません。
「業務に関連した」という曖昧な定義ではないので、経費にしないようにしましょう。

・青色申告をすれば経費にできるもの

経費にならないと定義をされていても、青色申告をすれば、経費にできるものもあります。
家事関連費で必要な部分(家の一部を事務所として使用しており、その分の家賃等)や家族に支払った給与でも青色事業専従者給与の届出を提出していれば、経費として認められます。
青色申告を行えば、上記のような点で節税効果を見込むことができます。自分が営む事業の中に上記のような経費があれば、青色申告の適用を受けるようにしましょう。

●まとめ

本記事では、経費について記載をしました。所得を計算するうえで、経費計上とは非常に重要です。改めて、経費にできるもの、できないものを理解し、正しく判断を行えるようにしていきましょう。

128 事業の収入とは?計上されるものと計上時期は?

事業所得、不動産所得、山林所得、雑所得(以下、事業所得等)は、収入から経費を引いた金額で算出されます。では、そもそも「収入とは、何を計上するのか」「いつのタイミングで計上をするのか」という疑問点があるかと思います。
本記事では、事業等収入について、解説をいたします。

●収入とは

収入とは、そもそも何か?収入の意義や計上時期、特殊な収入について、記載をいたします。

・収入に計上すべき金額

事業等の収入とは、売上その他事業に関する収入をいいます。本業の売上はもちろん、事業に関する助成金(非課税対象となるものを除く)等も含まれます。本業の売上ではないから、収入に計上していない、ということにならないよう、収入に入れるべきか否かを検討する必要があります。

・こういったものも収入になる

収入に計上すべき金額は、売上や助成金等だけではありません。
代表的なものが、棚卸資産の家事消費です。簡単にいうと、ケーキ屋を営んでいる人が売れ残ったケーキを食べたら、その分は収入にしないといけないというものです。
また、棚卸資産を贈与、つまり、タダで渡した場合も棚卸資産の価額を収入に計上しないといけません。
タダがダメなら、10円で売ればいいのかというと、その場合も実質的な贈与となるので、資産の価額と販売価額の差を収入に計上することになります。

・収入に計上すべき時期

収入に計上すべき時期は、商品の販売であれば、商品を引き渡した日の属する年、役務の提供であれば、役務の提供が行われた日の属する年となります。
勘違いしやすいのが、入金をされた日、注文をもらった日に収入を計上してしまうことです。
例えば、令和5年12月に商品を販売し、令和6年1月に入金があった場合、収入に計上すべき時期は、令和5年となります。
所得税は、年計算ですので、同年内の月ずれであれば、問題ではありませんが、上記のように年をまたいだ場合は、注意が必要です。

・収入にならないもの

非課税の規定ではありませんが、収入にならないものはいくつかあります。
例えば、資産の取得のために、国庫補助金の支払を受けた場合で、補助金目的の資産を購入した場合や国等から立ち退き要請があり、立退料として受けた補助金(立ち退きをするための移転に使用した場合に限ります)自己破産等により、債務免除を受けた場合の債務免除益があげられます。
これらは金銭を受けたり、債務を免除してもらったりしていますが、収入とするにはなじまないものなので、収入金額には計上しなくてよいものとなります。

●まとめ

本記事では、収入について、記載をしました。収入を正しく計上しない場合、所得を過少または過大に計上してしまう可能性があります。特に家事消費等は、盲点となりやすいので、注意し、正しく収入を計上するようにしましょう。

127 インボイス制度とは?どういった影響がある?

令和5年10月1日から、インボイス制度が開始されます。インボイス制度という用語を聞いたことはあるかもしれませんが、「実際にどういったものなのかわからない」という人は多数いると思います。
本記事では、インボイス制度に「関連する税金」「制度の概要」「影響のある事業者」について記載をします。

●インボイス制度について

インボイス制度は、いったいどういったものなのか?以下に詳細を記載していきます。

・関連する税金

インボイス制度に関連する税金は「消費税」です。といっても、事業を営んでいない方は関連しません。消費税の納税義務者は、前々年の売上が1,000万円を超える「事業を営む」者です。
事業を営んでいない方にとっては、影響がありません。

・インボイス制度の概要

 

インボイス制度とは「インボイスという定められた形式の請求書がないと、消費税の控除ができない」というものです。
今までは、こういった取り決めはありませんでした。しかしながら、インボイス制度開始後は、消費税の控除のためには、インボイスが必要となります。
消費税とは、そもそも「売上に係る消費税(預かったもの)から仕入や経費に係る消費税(支払ったもの)」を控除して計算をします。
もし、「支払ったもの」が控除できない場合、税負担が増えてしまいます。したがって、インボイスを受領する必要があります。

・影響のある事業者

事業者の中でも、影響のある事業者と影響のない事業者に分かれます。影響のある事業者は、「課税事業者」です。課税事業者とは、先にも説明をしたとおり、前々年の売上が1,000万円を超える「事業を営む」者です。
つまり、前々年の売上が1,000万円以下であったり、そもそも前々年は開業前だったりする場合、消費税の納税義務がない「免税事業者」となります。「免税事業者」は、消費税の控除ということをする必要がないため、インボイス制度の影響はありません。また、免税事業者はインボイスを発行することもできません。
しかしながら、課税事業者が免税事業者と取引をした場合、免税事業者はインボイスを発行できないため、課税事業者は、免税事業者との取引は、消費税を控除することができません。したがって、課税事業者の税負担が増えてしまいます。
そういった意味では、免税事業者がインボイス制度にまったく関係がないかというとそうではないといえます。

・取引先別の影響度合

 

以下に「課税事業者」と「免税事業者」別の取引についてまとめました。

課税事業者と課税事業者の取引
→互いにインボイスを発行できるため、インボイスを受領すれば、税計算に影響はない

課税事業者と免税事業者の取引
→課税事業者は、インボイスを取得することができないため、税計算に影響あり、免税事業者は、影響はない

免税事業者と免税事業者の取引
→互いに免税事業者であるため、税計算に影響はない

●まとめ

本記事では、インボイス制度について記載をしました。インボイス制度が事業者にもたらす影響は多大であることが予測されます。本記事では記載しませんでしたが、2割特例や少額特例など、税負担や事務負担を軽減する措置も多数あります。今一度インボイス制度を理解し、導入開始前に準備をしておくことが重要です。