152 役員に対する社宅家賃の節税対策について

2023年8月27日

会社の社宅を役員へ貸すにあたり、無償で提供したり、極端に安い金額でかしている場合には、その役員に対する役員報酬として給与課税の対象になるケースがあります。
今回は社宅家賃を役員からいくらもらえば給与課税されずに済むのか、解説していきたいと思います。

◆社宅家賃の設定方法

社宅家賃の設定方法には2種類のケースが考えられます。

まず1つは通常の家賃の設定方法が挙げられ、もう1つは小規模住宅等の家賃の設定方法が挙げられます。

通常の家賃の設定方法については下記方法によって適正な家賃を計算することができます。

法人が役員に貸した通常の月額家賃の計算方法としては、次の①と②の合計額の12分の1
①その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×12%(木造家屋以外の場合については10%)
②その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%

ただし、法人が他の者から借り受けて役員に貸した住宅で、法人が他の者に支払う賃借料の額の50%相当額が、上記算式により計算した金額を超える場合には、他の者に支払う賃借料の額の50%相当額となります。

もう1つは、小規模住宅等の家賃の設定方法が挙げられます。

小規模住宅とは、家屋の床面積が132㎡以下(木造以外の家屋については99㎡以下)の住宅をいいます。
一般的な住宅は、この小規模住宅に該当することがほとんどとなります。
この小規模住宅に該当する場合の家賃設定としては、次の①から③の合計額が、家賃設定として適正な金額になります。

①(その年度の家屋の固定資産税の課税標準額)×0.2%
②12円×(その家屋の総床面積(㎡)/(3.3㎡))
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

上記の他に、豪華社宅の場合の取り扱いについては以下の取り扱いとなります。

豪華社宅に該当する場合には、上述した通常の家賃設定をするケースや小規模住宅等に該当するケースによる計算方法は適用せずに、豪華社宅である当該建物の賃貸料相場により家賃設定することになります。
豪華社宅とは具体的には下記内容のいずれかに該当する場合の建物を豪華社宅といいます。
・その家屋の床面積が240㎡を超える場合
・その家屋の床面積が240㎡以下であっても、その建物にプールなどの設備があること
・役員個人の嗜好等を著しく反映した設備又は施設を設置していること
上記より、豪華社宅とはその建物の床面積が240㎡を超えていない場合であっても、プールやその役員個人の嗜好を反映しているか等といった事を総合的に考慮して判断する事になります。

◆役員社宅の節税

役員社宅制度を導入すると会社の利益を圧縮出来ることになるため、節税策として非常に有効となります。
具体的には下記項目が節税策として挙げられます。

・全額を損金算入する事ができる
役員社宅を利用した場合、最低でも役員社宅の50%を損金算入する事が可能になります。
会社の事務所を役員の社宅として利用している場合には、当該不動産の契約を役員個人の名義では無く、会社名義で契約することによって、役員社宅の全額を損金算入する事が出来ます。
不動産会社によっては不動産の使用用途を住居用としてしか賃貸していない場合や、個人のみにしか契約しないなどのケースがありますが、事務所として実際に使用している場合には、最低でも家賃の50%は損金算入する事が可能になります。

・役員の社会保険料を減額できる
通常、社会保険料は標準報酬月額によって金額が決定します。
役員社宅を利用することにより、社宅家賃分を報酬から減額した場合にはその金額だけ標準報酬月額が低くなります。
社会保険料は報酬や賞与が増えれば増える分、その分だけ標準報酬月額が増加する為、役員社宅を利用することによって、役員の社会保険料が減額することに繋がります。

・役員の手取り額を増やすことができる
役員社宅を利用することによって、社宅家賃分だけ役員報酬の総額は減りますが、その分だけ源泉所得税や社会保険料が減ることになります。
したがって、社宅家賃を報酬の代わりに支給する場合には、実質的には役員の手取り額を増やす効果を得ることが可能になります。

◆役員社宅の注意点

上述したように役員社宅を支給した場合には、全額が損金算入可能などさまざまなメリットが挙げられます。
しかし、役員社宅を支給する上で注意すべき点もあります。

・社内規定などに定めておく
役員社宅を利用する場合には、社内規定などにその旨を記載しておく必要があります。
一般的に、従業員に対する福利厚生などについて記載していることが多いですが、役員社宅を利用する場合には別途、社内規定を設ける必要があります。
社内規定を設けていないと、税務調査が入った場合には指摘され、役員社宅を認められないケースになりかねません。
そのような事態を避ける為にも、役員社宅を利用する場合には必ず社内規定を準備しておく必要があります。

・契約時に敷金などの一時負担が発生する
役員社宅を利用する場合、賃貸物件を法人名義で契約する必要があります。
その場合、個人名義と同じように敷金や保証金など、契約時に一時負担が発生する事を理解しておく必要があります。

◆結論

以上が役員社宅を利用した場合のメリットや注意点になります。
役員社宅は節税メリットとして非常に有効ではありますが、役員社宅を利用する場合には、社内規定を設けるなどの準備も必要になります。
税務調査が入った際には、役員社宅を否認されないように税理士に相談する事をおすすめします。