154 法人の益金と損金とは、収益と費用との違いは?

2023年8月31日

 

法人税を計算するにあたり、益金と損金という言葉をよく耳にします。一方で、損益計算書の用語として、収益や費用というものもあります。
これに対し、「益金・損益と収益・費用の違いとはなにか」「結局、どちらが正しいのか」等の疑問点があると思います。
本記事では、法人の益金・損金と収益・費用について記載をいたします。

●税金を求めるか、会計を求めるか

結論として、益金・損金も収益・費用も、法人の数字を算出するうえで、必要な要素となります。
ただ、求める数字が何かによって、変わります。詳細を以下に記載します。

・企業会計の数字を求める場合

企業会計、つまり、上場企業であれば、IRなどで公表される数字の場合、収益・費用を使用します。企業会計は、経営成績や財政状態の状況を正しく開示することを目的としています。
したがって、未実現の損失(減損等)も決算の数字に織り込む必要があります。現時点で売れていない商品や使用価値のない固定資産があれば、帳簿価額を下げるなどして、損失を出す必要があるためです。

・課税所得の数字を求める場合

一方で、益金・損金というのは、課税所得、つまり法人税の計算のため使用されます。
企業会計と法人税は目的が異なります。法人税は、財源の確保等、租税政策を目的としています。
したがって、企業会計で減損をおこなったとしても、課税所得では控除されることはありません。なぜなら、未実現の損失を故意に出すことにより、所得を下げ、税額を下げることができてしまうからです。
こういった収益・費用に関しては、法人税法で益金・損金にならないと定義づけられています。

・確定決算主義とは

益金・損金は課税所得のため、収益・費用は企業会計のため、ということを記載しました。
では、それぞれの数字を算出するために別の計算をおこなわないといけないのでしょうか、それは手間がかかってしまうため、法人税法には、確定決算主義という規定があります。
これは、企業の確定した決算に基づき、課税所得を計算するというものです。
ですので、企業は、まず、企業会計上の決算書を作成します。それに基づき、税務申告書を作成するという流れになります。
企業会計上では、収益・費用になったが、法人税法上は、益金・損金にならないものを調整し、申告書を作成します。

●まとめ

本記事では、益金・損金と収益・費用について記載をしました。
小規模な法人であれば、益金と収益、損金と費用は、同じ数字になることがあります。しかしながら、法人の規模が大きくなると、これらが同じ数字になるということは、ほとんどありません。
益金・損金と収益・費用の違いを理解することによって、会計と税務、それぞれの決算書があるということを理解することができるでしょう。