062 個人事業主が家族に給与等を支払う際の注意点
2023年5月18日
個人事業主を行っている人の中には、家族を従業員とするいわゆる「家族経営」を行っている人もいると思います。家族に給与等を支払う場合、「家族以外の従業員との違い」「節税効果はあるか」等の疑問点が出てくる思います。本記事では当該内容について記載いたします。
●家族に給与等を支払った場合どうなるか?
個人事業主が家族に給与等を支払った場合、支払った個人事業主と受け取った家族の扱いがどうなるかを記載します。
・個人事業主の扱い
個人事業主の扱いは、家族と生計を一にしているか否かによって扱いが変わります。生計を一にするとは、主に「同居」または「別居をしていても仕送りをしている」等の要件となります。生計を一にしている場合、家族に支払った給与等は無かったものとなり、個人事業主の経費にすることはできません。別生計の場合は、経費とすることができます。
・家族の扱い
家族の扱いも個人事業主と生計を一にしているか否かで扱いが変わります。生計を一にしている場合、個人事業主同様無かったものとなり、収入とはなりません。別生計の場合、給与所得の収入金額となります。
・家族以外の従業員との扱いの違い
個人事業主が生計を一にする家族に対して支払う給与を経費にできてしまう場合、個人事業主の所得を家族に分散をし、租税回避行為を行う可能性があります。それを防止するために、家族に対して支払った給与等は原則、経費にすることはできません。これは、所得税法第56条「事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例」にて定められています。
●生計を一にする家族に対し、給与等を支払った場合でも経費にできる方法
前述のとおり、生計を一にする家族に対して支払った給与等は、原則として経費にすることはできません。しかしながら、生計を一にする家族でも経費にすることはできます。
・青色事業専従者給与に関する届出書
個人事業主が生計を一にする家族に対し、給与等の支払をした場合において、個人事業主の経費とするためには、青色事業専従者給与に関する届出書を提出する必要があります。そのため、青色申告者が前提となります。青色事業専従者給与に関する届出書は、3月15日までに、納税地の所轄税務署長に提出をします。
・青色事業専従者給与に関する届出書の記載事項
青色事業専従者給与に関する届出書の記載事項は、家族の氏名・続柄・業務内容・給与等をいくら支払うか等を記載します。経費に計上することができるのは、届出書に記載した範囲内で労務の対価として正当なものだけです。また、家族はもっぱら(1年のうち、6か月超)個人事業主の事業に従事していなければなりません。
・青色事業専従者給与を使用することのメリット
青色事業専従者給与を使用することのメリットは、個人事業主に所得を集中させず、家族にも分散できることです。日本の所得税は超過累進税率(所得が高くなるほど税率が高くなる)ですので、一人に所得を集中させるよりも、家族に分散をさせた方が節税効果を見込めます。前述の所得税法第56条の例外規定として設けられている所得税法第57条の規定となります。
●まとめ
本記事では、個人事業主が家族に給与等を支払う際の注意点について記載しました。家族に支払う給与等は、まず、生計を一にしているか否かで扱いが変わります。さらに生計を一にしていても青色事業専従者給与に関する届出書を提出しているか否かで変わります。正しく理解し、適切な処理ができるようにしましょう。