138 源泉徴収は必要?フリーランス等の個人に対する支払い時の注意点

2023年8月9日

フリーランスで働く人の増加につれて、その支払いに対して源泉徴収をするのかしないのかという判断も増えていきます。
源泉徴収が必要か不要かは、所得税法等により、定義づけされています。
どういった支払が源泉徴収が必要で、どういった支払が不要なのでしょうか、本記事では源泉徴収が必要な場合と不要な場合について、記載をいたします。

●源泉徴収とは?

源泉徴収とは、個人への報酬等の支払時に所得税を差し引いて支払う制度となります。
源泉徴収を行うことにより、個人の税金の滞納や納付忘れを防止することができ、また、国税の収入を平準化することができます。
以下、詳細を記載いたします。

・源泉徴収が必要な報酬等

源泉徴収が必要な報酬等は、以下のとおりです。
1 原稿料や講演料等
2 弁護士等の特定の資格を持つ人に支払う報酬等
3 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
4 プロのスポーツ選手やモデル等に対して支払う報酬等
5 TV等の出演等に対して支払う報酬等
6 ホステス等に支払う報酬等
7 プロスポーツ選手の契約金等、一時に支払う契約金
8 広告宣伝や馬主等に対する賞金

このなかで、実務で多く使用するのは、主に1と2になります。したがって、1と2ついて詳細を記載します。

・原稿料や講演料等に対する源泉徴収

原稿料や講演料等に対する源泉徴収は多岐にわたります。原稿料や講演料だけではなく、絵や写真、デザインや作曲、翻訳や通訳、指導料(投資の助言も含む)等も含まれます。
これらの支払いの名目が謝金や取材費、車代となっていても、実態が上記に該当すれば、源泉徴収をしなければなりません。
ただし、懸賞応募作品等の入選者や新聞、雑誌等の投稿の謝金(原稿料に該当する)は、1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

・弁護士等の特定の資格を持つ人に支払う報酬等の源泉徴収
弁護士等、いわゆる士業に対する支払いは、源泉徴収が必要です。弁護士以外にも司法書士や税理士、会計士、測量士や建築士等も該当します。
これらに対する支払いで、その士業の独占業務以外の対価であっても、源泉徴収は必要です。例えば、税理士であれば、独占業務である「申告書の作成」や「税務相談」以外の「記帳代行等」でも源泉徴収は必要です。
ただし、旅費や印紙代等の実質的に立替分の請求であれば、その対価に対する支払いは、源泉徴収は不要となります。

・源泉徴収の金額
源泉徴収の金額は、支払金額が100万円以下であれば、支払金額の10.21%、支払金額が100万円を超える部分は20.42%となります。
例えば、150万円の支払いの場合、100万円×10.21% + (150万円 – 100万円)×20.42%=204,200円となります。
請求書等の表示が税込みの場合は、税込み金額に上記率をかけます。表示が税抜きの場合は、税抜き金額に上記率をかけます。

・源泉徴収が不要の場合

原稿料や講演料等、士業に対する支払いは、源泉徴収が必要である旨を記載しました。ただし、そもそもの源泉徴収義務者でなければ、上記の支払いであっても源泉徴収は不要です。
源泉徴収義務者とは、「法人または給与の支払いを行っている個人事業主」となります。
つまり、事業を行っていない会社員の方等が確定申告を税理士に依頼して対価を支払う場合、そもそも源泉徴収義務者に該当しないため、源泉徴収は不要となります。

●まとめ

本記事では、フリーランス等の個人に対する支払いの源泉徴収について記載をしました。
源泉徴収が必要か不要かの判断は、まず、相手が個人か法人かで判断をし、個人であれば、本記事に記載をした業務内容に該当をするかで判断をします。源泉徴収が必要だったがしていなかった場合、不納付加算税等のペナルティがあるので、注意をしましょう。