139 事業規模の不動産所得とそうでない不動産所得の違いとは?

2023年8月10日

不動産(土地、アパート、貸家等)の貸付けによる所得は、不動産所得となります。これは、事業として、不動産業をおこなっていても、事業所得ではなく、不動産所得です。
不動産所得の計算は、「事業的規模」と「事業的規模以外」に分かれます。どちらに該当するかにより、所得計算も変わってきます。
本記事では、不動産所得の事業的規模の判断、計算の違いについて、記載をしていきます。

●事業となる不動産所得とは?所得計算の異なる点は?

不動産所得が事業かそうでないかは、どうやって判断をすればよいのでしょうか、また、それにより、所得計算がどう変わってしまうのでしょうか、詳細を記載します。

・不動産所得の事業的規模の判定
事業となる不動産所得になるには、一応の基準があります。それは5棟10室基準というものです。
独立家屋の貸付が5棟以上、または、アパートの貸付が10室以上であれば、事業的規模の不動産所得となります。建物以外の土地の場合は、5か所で1室相当、また、駐車場は、自動車5台で1室相当といわれています。つまり、駐車場だけで、事業的規模と判断されるには、自動車50台に対して貸付けをすることができる規模の駐車場が必要となります。

・貸家やアパート、駐車場が混在している場合
上記のとおり、不動産所得が事業的規模と判断されるためには、5棟10室がひとつの基準となります。
では、貸家が3棟、アパートが6室、駐車場が10台の場合、どう判定をするのでしょうか、この場合、個々に判断をするのではなく、合算して5棟または10室を満たしているかで判断をします。
貸家は1棟がアパート2室相当で換算されます。駐車場は5台でアパート1室相当です。
この場合、室数に換算をすると、3棟×2(貸屋)+6(アパート)+10 / 5(駐車場) となるため、合計は14室相当となり、10室基準をクリアし、事業的規模となります。

・事業的規模とそうでない場合の所得計算
事業的規模かそうでないかの基準は示すことができました。では、事業的規模かそうでないかによって、所得計算は、どう変わるのでしょうか
結論、事業的規模の方が、税負担緩和措置がいくつかあります。
まずは、青色申告特別控除です。事業的規模の場合は、55万円か65万円ですが、そうでない場合は、10万円です。
次に青色事業専従者給与と白色申告の場合の専従者控除です。事業的規模の場合は、適用がありますが、そうでない場合は、適用がありません。
さらに、資産に損失が生じた場合、事業的規模の場合は、損失額すべてが必要経費になりますが、そうでない場合は、不動産所得が0円になるまでが限度です。つまり、資産損失では、不動産所得をマイナスにできず、他の所得と通算することができないということになります。

●まとめ

本記事では、不動産所得の事業的規模の判定と所得計算の違いについて、記載をしました。
5棟10室基準というものがありますが、4棟や9室だからといって、ただちに事業性が否定されるわけではありません。総合的に勘案されることもあります。
しかしながら、一応の判定基準としては、有効なので、不動産が事業に該当するかそうでないかの判断に迷った場合は、5棟10室を基準に考えるのがよいでしょう。