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106 所得税と住民税の節税に効果大!ふるさと納税とは

「ふるさと納税」という言葉は、CMでも見かけるようになり、多くの人が既にご存知の言葉でしょう。なんとなくお得である、というイメージのあるふるさと納税を理解して活用をするために、今回はふるさと納税の仕組みについて簡単にご紹介致します。

1ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、所得税や住民税を計算するうえで、税額を減額する効果が認められる寄附金控除のひとつです。
自身が選んだ自治体に寄附を行うことで、その寄付額に応じた寄附金控除を受け、更に自治体から返礼品を受け取ることが出来ます。

所得税は国に、住民税は納税者の居住する自治体に納められ使用されるものですが、自身が選択をした自治体、例えば出身地であるふるさと、復興や政策を応援したい地域に寄附を行うことが出来るため、住民税における税収による地方格差が是正される効果があります。

2ふるさと納税の節税効果

ふるさと納税を利用して寄附を行うと、寄付額のうち2,000円を超える金額について、ふるさと納税を行う年と同年度の所得税及び住民税の減額を受けることが出来ます。

言い換えると、2,000円の自己負担で、数多くの自治体から好きな返礼品を選択し購入することが出来る制度ともいえます。

例えば、合計所得金額が2,000,000円の人が30,000円の寄附を行った場合、2,000円を控除した、28,000円について、所得税及び住民税の減額を受けることが出来ます。
この28,000円の減額を受けるためには、ふるさと納税を行う年の所得税と住民税の納付金額が28,000円を超えることが見込まれること、原則として確定申告を行うことが必要です。
仮に、ふるさと納税を行う年の所得税と住民税の納付金額が10,000円と見込まれる場合には、10,000円の減額となるため、節税効果が少なく、自己負担額が大きくなります。
また、所得税の所得控除の対象となる寄附金控除額は、総所得金額の40%が上限であることから、上記の合計所得金額が2,000,000円の人が800,000円を超える寄付を行った場合においても、節税効果は少なく、自己負担額が大きくなります。

よって2,000円の自己負担のみで超えた部分については全て寄付金控除の対象となるような、年間の寄附金額の上限額の確認が、非常に重要となります。
上限額の確認は、ふるさと納税のポータルサイト等で簡単に行うことが出来ます。

3まとめ

令和5年1月1日から12月31日までに行うふるさと納税は、令和5年分の所得税や住民税の減税に大いに役立ちます。
12月31日に行った寄附までが寄附金控除に算入されますが、年末に限らず、年の途中からふるさと納税を行うことで、返礼品の選択の幅が広がります。是非計画的にご利用をすることをおすすめ致します。

105 その収入にも税金がかかる!?一時所得とは

「宝くじで高額な当選金を得た。」「馬券で高額配当が当たった。」「懸賞を応募したら多額の懸賞金や商品」が当たった。こういったケースで一時的に収入を得る人もいると思います。
では、これらの収入には、税金がかかるのか?本記事では、こういった本業以外の一時所得について記載をします。

●一時所得の対象や計算方法とは?

一時所得とは何か?どういったものがあり、計算方法はどのように行うのか?一時所得について解説をしていきます。

●一時所得の意義

一時所得とは、その名称通り、一時的臨時的に得た所得です。事業を営んでいる人や給与を得ている人は、毎月収入があります。これらは恒常的な所得です。
一方、一時所得は、その反対となります。懸賞金等、恒常的に得られないものが該当します。

●一時所得の対象となるもの

一時所得の対象となるものは、主に以下のものがあります。

・懸賞で得たもの(金銭以外も含む)
・馬券などの配当金
・保険の解約返戻金
・法人から贈与されたもの

懸賞で得たものは、懸賞金以外の自動車などの現物支給も所得となります。
現物で得たものは、時価の60%が収入となります。新品を現金化するためにすぐに売却をしたとしても、売価は60%程度になるということから、配慮されている率となります。

●一時所得の計算方法

一時所得の計算方法は、「収入 − 収入を得るために要した費用 − 特別控除50万円」です。
収入から控除ができる「収入を得るために要した費用」の解釈が重要です。
例えば、馬券を10レース、各10万円ずつ購入するとします。トータル購入金額は100万円となります。
当たったのは1レースのみですが、配当を100万円得たとします。
この場合、収入は100万円です。しかし、収入を得るために要した費用は、トータル支出した100万円ではなく、1レース分の10万円となります。
したがって、この場合の所得は、100万円 − 10万円 − 50万円 = 40万円となります。
しかしながら、馬券の配当をめぐっては、一時的ではなく継続的に購入していれば、雑所得となり、外れたレースの馬券も経費にできるという判決も出ていますので、合わせて覚えておくと良いと思います。

●非課税となるもの

一時所得で非課税となるもので有名なのは、宝くじの当選金です。宝くじには、totoなどのスポーツくじも含まれます。
また、個人から金銭等を贈与された場合も非課税となりますが、この場合、贈与税の対象になるので、注意が必要です。

●まとめ

本記事では、一時所得について、記載をしました。「課税対象になるとは思わなかったけど、50万円の特別控除があるので、結果、一時所得は0だった。」というケースが多くを占めます。
しかしながら、50万円以上の一時的な収入がある場合、確定申告等が必要な場合もありますので、正しい知識を身につけ、税に対する理解を深めていきましょう。

104 株式を譲渡・保有をした場合の所得はどうなるか?

資産所得倍増計画が打ち上げられたように、個人で投資を始めようと考えている人もいると思います。投資の一つが株式投資です。では、「株式投資で利益が出た場合、所得や税金はどうなるか?」「確定申告をしないといけないか?」などの疑問点があるかと思います。
本記事では、株式に関する所得等について、記載をいたします。

●株式に関する所得

株式に関する所得は、大きく分けて2つです。「株式を保有して得る配当に係る配当所得」と「株式を譲渡して得た利益に係る譲渡所得」です。

●株式に係る配当所得

株式で配当を得た場合、配当所得となります。課税方法は2つ選択ができます。他の所得と通算をする総合課税と他の所得とは別で計算をする分離課税です。分離課税は上場株式の配当のみ選択できます。
総合課税の場合は、所得に応じて税率が上がる超過累進税率となります。一方、分離課税の場合は、20%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税は除く、以下同じ)の税率となります。所得に応じてどちらが得になるかを選択しましょう。

●株式に係る譲渡所得

株式を譲渡して利益を得た場合は、分離課税の譲渡所得となります。
例えば、50万円で取得した株式の価値が上がり、100万円で譲渡をした場合、譲渡所得は、差額の50万円になります。
この50万円に対し、20%の税率がかかります。つまり、利益が出ても、20%は税で引かれてしまうのです。

●株式に係る所得が非課税となる場合

NISA口座内で取引をした株式に係る所得は、配当も譲渡も非課税となります。
先に記載したとおり、20%の税が非課税になるというのは、非常に恩恵を受けることができます。
しかしながら、NISA口座は年間取引の限度額が120万円となります。
株式投資を行なっているとすぐに限度に達してしまうため、注意が必要です。

●確定申告は必要?

株式で得た配当や譲渡益は、確定申告が必要な場合とそうでない場合があります。
株式の売買等は証券口座で行うことが大半です。その証券口座には普通口座と特定口座があります。特定口座内の取引であれば、取引の都度、証券会社が源泉徴収をしてくれるため、確定申告は不要となります。
また、上場株式の譲渡損失の場合、配当所得と損益通算が可能であるため、特定口座内であれば、その計算も自動でしてくれます。
したがって、税計算や確定申告の手間を解消したいというのであれば、特定口座内での取引を推奨します。特定口座内で取引をする方法は、株式購入時に選択をするだけです。
特定口座以外の取引の場合、源泉徴収はされないので、年間の損益を計算し、確定申告を行う必要があります。

●まとめ

本記事では、株式に関する所得について、記載をしました。株式というのは、身近な投資のひとつとなります。株式に関する所得について理解をすることは、投資について理解をすることにもなります。ぜひ、理解を深めていきましょう。

103 譲渡による所得とは

家や土地、その他の資産を売却したとき、売却益に対して、所得税がかかります。これらは、譲渡所得といいます。
では、譲渡所得について、「売却益はどう計算をするのか?」「どれくらい税金がかかるのか?」「確定申告をしないといけないのか?」という疑問点があると思います。
本記事では、譲渡所得の内容について、記載をいたします。

●譲渡所得の対象や計算方法

譲渡所得は、譲渡をして、売却益が出れば、非課税のものを除き対象になります。
しかし、何を譲渡したか、いつ譲渡をしたかで計算方法が変わります。
以下に詳細を記載します。

・基本的な計算方法

譲渡所得の基本的な計算方法は、譲渡価額 − 取得費用 − 譲渡費用です。
例えば、1000万円で購入した土地が3000万円で売れ、仲介手数料が100万円かかった場合、譲渡価額(3000万円)−取得費用(1000万円)−譲渡費用(100万円)となり、譲渡所得は1900万円となります。
取得費用は購入価額をベースとしますが、建物等、年の経過によって価値が下がるものは、減価償却後の金額となるため、注意が必要です。

・土地、建物を譲渡した場合

土地建物を譲渡した場合、売却益は、他の所得とは別計算になります。これは、一時的に大きな金額を所得として得た場合、他の所得と合算をしてしまうと、税負担が重くなってしまうためです。
例えば、土地による譲渡所得が1,900万円、事業による所得が100万円だったとします。これらを通算し、超過累進税率で計算をすると(所得控除や復興特別所得税は考慮しない)
所得税は、2,000万円×40% −2,796,000 = 約520万円となります。さらに、住民税10%かかるため、2,000万円×10%=200万円となります。
合計720万円となり、2,000万円の所得に対し、約36%の税となります。本業である事業所得で100万円しか、儲かっていないのに、税負担は重たくなってしまいます。
ですので、土地建物分は別計算をします。保有期間が5年以内であれば、住民税を合わせて39%の税率になります。保有期間が5年を超えていれば、住民税を合わせて20%の税率となります。
5年以内か5年超かで税率が大きく変わるので、こちらも注意点になります。

・土地建物以外(有価証券除く)を譲渡した場合

土地建物以外を譲渡した場合は、他の所得と通算します。しかし、譲渡所得は特別控除(50万円)があるため、50万円までの売却益は、実質所得は0円となります。
また、50万円超の所得があったとしても、保有期間が5年超であれば、所得を2分の1することができます。絵画や骨とう品等、購入したときよりも価値が大きく上がり、多額の儲けがでない限りは、譲渡所得は、課されないものとなります。

・確定申告が必要

譲渡所得は、確定申告が必要となります。また、譲渡所得には、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除等、様々な所得控除の特例があります。しかしながら、これらは、確定申告をしないと適用ができないものです。
譲渡所得が生じた場合、確定申告を忘れないようにしましょう。

●まとめ

本記事では、譲渡所得について記載をしました。土地や建物を譲渡した場合、多額の収入になる反面、それに対する税金もかかるので、譲渡をしたときにどれくらいの所得になり、どれくらい税金を納めなければならないということは把握をしておきましょう。
売却時に得たお金を使ってしまい、税金が払えなくなったということにならないように注意が必要です。

102 給与よりも税制優遇がある退職所得の制度

会社員が勤務をすることで得る所得は、給与所得と退職所得があります。
給与は毎月毎年支給される一方、退職金は、原則として退職時、つまり一つの会社で一度しか支給されないものです。
では、給与と退職金の税金の扱いの違いとは?どちらが税制面で優遇をされているのか、本記事では、退職所得を中心に給与と比較しながら、記載をしていきます。

●退職所得の詳細

退職所得とは、退職により一時に支払いを受ける所得をいいます。退職所得の計算方法や趣旨について記載いたします。

・退職所得の計算方法

退職所得の金額は、勤続年数により変動します。結論、勤続年数が長い方が控除額は多くなり、所得金額は少なくなります。
控除額は勤務年数×40万円となります。21年以上勤務をした場合は、21年目以降の控除額は、勤続年数×70万円となります。つまり、21年勤務した場合、40万円×20年+70万円×1年=870万円となります。

・退職所得の計算例

30年勤務した会社を退職し、1500万円の退職金を支給されたとします。この場合の計算方法は次のとおりとなります。

収入1500万円 − 控除 1500万円(20年×40万円 + 10年×70万円)=0円 ×1/2

つまり、所得は0円となるため、退職所得に対する課税はありません。税金がかからないということは、1500万円が丸ごと手取り金額となります。
さらに、上記計算では0円であるため、効果はありませんが、仮に収入>控除だとしても、残額が1/2されるため、こういったところでも税制の優遇があります。
もし、給与で1500万円支給された場合、所得控除は195万円のため所得は1305万円となります。この所得に対し、税金がかかります。10%の税率でも130.5万円となります。決して安い金額とはいえないでしょう。
このように退職所得は税制面のメリットが大きいものとなります。

・なぜ、メリットが大きいのか

退職金というのは、長年勤務をした功労に報いるため、また、退職金は、老後の生活資金に充てられるものでもあります。こういったものに対し、多額の税額を課すことは、心情的によくないからです。
せっかく、長年勤めて、退職金をもらったのに、大部分が税金で消えてしまった。ということにならないために、退職所得には、課税の特例があります。

●まとめ

本記事では、退職所得について記載をしました。退職所得というのは、非常に税制のメリットが高いものとなります。
勤務している会社に退職金制度があるかないかを再度確認し、あるのであれば自分はどれくらい退職金がもらえ、どれくらい課税されるかを想定しておくのも、将来のマネープランとして必要であるといえるでしょう。

 

101 給与所得者の特定支出控除とは

令和4年度労働力調査によると、日本の労働者の約9割が雇用者、つまり給与所得者です。
給与所得は、給与収入から一定の給与所得控除を引くという計算方法となります。個人事業主や法人のように実費経費という概念がありません。
しかし、実費で支出した費用の一部を給与所得から控除することができます。それが「給与所得者の特定支出控除」(以下、特定支出控除控除)です。
本記事では、特定支出控除の制度について記載をしていきます。

●特定支出控除とは?

特定支出控除は、昭和62年の税制改正で誕生しました。給与所得控除を一律適用するのではなく、納税者個人の事情も加味しようというのが趣旨となります。対象や金額について触れていきます。

・特定支出控除の対象

令和5年現在の特定支出控除の対象は「通勤費」「職務上の旅費」「転居費」「研修費」「資格取得費」「単身赴任者の帰省旅費」「勤務必要経費」です。
これらは、勤務先から補填されているものは、当然除きます。例えば、「通勤費」であれば、給与等で支給されている場合や「職務上の旅費」も経費精算等をしている場合は、除かれます。

・主な対象は「研修費」「資格取得費」「勤務必要経費」

通勤費や旅費関係は、勤務先から支給されるのが一般的です。そうなると、対象となるものは「研修費」「資格取得費」「勤務必要経費」となってきます。
「研修費」「資格取得費」は職務に必要のあるものに限られます。「勤務必要経費」とは、職務に必要な「図書費・衣服費・交際費」などになります。
例えば、勤務先がスーツの着用が必須の場合、スーツの購入費用は、衣服費に該当します。その他、自己啓発のための本の購入費用や経費精算を行わない取引先や同僚との飲食が対象となります。
ただし、勤務必要経費は年間合計65万円までが限度額となるので、注意が必要です。

・特定支出控除の金額

特定支出控除が適用できる金額は、支出をした金額 - 給与所得控除 × 1/2です。
例えば、年収300万円の場合、給与所得控除は、98万円となります。
つまり、98万円の2分の1をした金額49万円は、支出した金額から引かれてしまうため、49万円を超える支出をしていないと、特定支出控除を適用することはできません。
自分の給与所得控除額はどれくらいになるのかを知っていないと、特定支出をしたけど、適用金額に満たないということがあるので、注意をしましょう。
・特定支出控除の適用方法
特定支出控除は、確定申告により適用をします。勤務先から証明を出してもらい、確定申告書に添付をします。ただ確定申告書に明細等を記載するだけではなく、勤務先からの証明が必要であることを忘れないようにしましょう。確定申告書提出期限ぎりぎりに勤務先に依頼をせず、余裕をもって依頼をしましょう。

●まとめ

本記事では、給与所得者の特定支出控除について記載をしました。職務に必要な資格を取るために多額の支出をした場合などは、対象となる可能性が高いので、こういった制度があることを覚えておきましょう。

100 各自治体の住民税について

●住民税の税額・税率はどこの自治体でも同じ?自治体別の税について紹介

住民税の標準税額・税率は、均等割は5,000円、所得割は10%となります。
しかし、これらはあくまで「標準」税額・税率です。自治体の判断で、税率は変更を行うことができます。
では、「税額と税率が異なる自治体はどこか?」「その理由は何か?」「最も安いまたは高い住民税を課している自治体はどこか」などという疑問点があるかと思います。
本記事では、自治体別の住民税について解説をしていきます。なお、税額・税率は、令和5年現在のものとなります。

●自治体による税額・税率の違い

住民税の標準税額・税率は、あくまで「標準」であるため、地方自治体の条例により、変更をすることができます。いくつか自治体を紹介します。

・静岡県静岡市

静岡市は、静岡県の政令指定都市で、県庁所在地でもあります。
所得割に関しては、県民税市民税合計で10%と、標準税率どおりとなります。しかしながら、均等割りは県民税1,900円、市民税3,500円の合計5,400円となり、標準税額の5,000円を400円上回っています。
これは、静岡県では、「森林(もり)づくり県民税」として、静岡県の荒廃森林再生のため、400円県民税がプラスされているものとなります。
県民税ですので、静岡市以外の県内の市町村であれば、どこも同じとなります。

・愛知県名古屋市

愛知県名古屋市は、均等割は、県民税2,000円、市民税3,300円の合計5,300円と標準税額よりも300円高いですが、所得割は、県民税市民税合わせて、9.7%と標準税率よりも0.3%低い税率となっています。
名古屋市は減税政策を打ち出しており、それが住民税に反映されています。しかしながら、減税されているのは、市民税だけですので、愛知県の名古屋市以外の市町村に住んでいる場合は、減税を受けることはできません。
むしろ、県民税の均等割が、「あいち森と緑づくり税」という名目で標準税額よりも500円高くなっています。

・最も税額・税率が高い都市

住民税の税額・税率が最も高い都市は、神奈川県横浜市です。均等割は、県民税1,800円、市民税4,400円の合計6,200円と、標準税額よりも、1,200円高くなっています。
さらに、所得割も県民税市民税合わせて10.025%と標準税率よりわずかですが、高くなっています。
市民税は「横浜みどり税」県民税は「水源環境の保全・再生」という名目で標準よりも上乗せされています。

・最も税額・税率が低い都市

住民税の税額・税率が最も低い都市は、大阪府田尻町です。均等割は、県民税1,800円、市民税3,200円の合計5,000円、所得割は、県民税市民税合わせて9.4%と標準税率より0.6%安くなっています。
所得が500万円の方であれば、標準税率と比較すると、年間30,000円も税金が安くなることになります。もともとは、平成29年度から令和元年度までの3年間の政策でしたが、令和5年度まで延長されています。

●まとめ

本記事では、住民税の税額・税率について記載をいたしました。住民税の税額・税率は、標準税率が定められていますが、地方公共団体の事情によって、若干の差があります。自治体の住民税を理解したうえで、どこに住むかを決めるというのも、住居選びの材料のひとつになるかもしれません。

099 地方税を代表する住民税とは?税率や徴収方法等を紹介

地方税を代表するのが、住民税です。なかでも、個人住民税は、会社員勤めの方であれば、給与から天引きをされているなど、馴染みの深い税金です。
では、「そもそも住民税とは何か?」「所得税との違いは何か?」などという疑問点があるかと思います。
本記事では、住民税について解説をしていきます。

●住民税とは?

住民税とは、何のために納めているのか、税金の仕組みはどうなっているのかなどを記載いたします。

・住民税とは

住民税とは、一言でいうと、住んでいる場所の会費のようなものです。
たとえば、ごみ収集や市区町村が運営する図書館、その他公共サービスや設備は、無料で使用できるものです。民間企業が運営しているのであれば、無料で使用できるというのは、考えにくいです。
公共サービスや設備は、地域に住む住民からの住民税があるからこそ、成り立つ仕組みです。町内会費の市町村版や道府県版と思っていただけるとイメージがしやすいと思います。

・住民税の種類や税率等

住民税は、道府県民税と市町村民税(東京都は都民税と区市町民税)に分かれ、さらに住民税には、均等割と所得割があります。均等割とは、所得に関係がなく、均等に課す住民税です。先ほど記載したとおり、住民税は、地域の会費という性質があるため、薄く広く徴収をしようという意図があります。均等割の標準税額は、道府県民税1,500円、市町村民税3,500円の合計5,000円となります(自治体によって、異なる場合もあります。)
所得割は、所得に比例をして、徴収を行うものです。所得は所得税で計算をしたものをベースに算出をされます。標準税率は、道府県民税4%、市町村民税6%の合計10%となります(政令指定都市は、道府県民税2%、市町村民税8%となります。また、自治体によって、異なる場合もあります。)

・所得税との違い

住民税と所得税の違いは、いくつかあります。
まず、前述の均等割の有無です。住民税は均等割がありますが、所得税はありません。
また、所得割も税率が異なります。住民税の標準税率は、一律10%ですが、所得税は、所得に応じて、5%から45%の超過累進税率となっています。
さらに、徴収方法も異なります。会社員であれば、所得税は、年末調整等により、その年にかかる税の徴収はその年に行いますが、住民税は、前年に計算したものを翌年6月から翌々年5月にかけて徴収をします。
例えば、令和4年の所得に対する住民税は、令和5年6月から令和6年5月にかけて、給与天引き等で徴収を行います。もし、会社を辞めて、再就職をしていない場合でも住民税の徴収は行われますので、注意が必要です。この場合、会社から給与天引きはできませんので、市町村から、納付書が送られてきます。

●まとめ

本記事では、住民税について記載をいたしました。住民税は地方公共団体の重要な収入源となります。住民税を納めているからこそ、公共サービスや設備が実現するものとなっています。住民税の目的、用途などを正しく理解しましょう。

098 国税と地方税とは?その違いを解説

日本にはさまざまな税金があります。所得税、法人税、消費税などが代表的な税金です。
税金は、いろいろな形で分けることができます。分け方のひとつとして「国税」と「地方税」という分け方があります。では、「国税と地方税の違いは何か?」「何が国税で何が地方税なのか?」
という疑問点があるかと思います。
本記事では、国税と地方税について解説をしていきます。

●国税と地方税の分け方や該当するものとは

国税と地方税の分け方や具体的にどの税金が国税なのか、どの税金が地方税なのかを記載していきます。

・国税と地方税の分け方

国税と地方税の分け方は、「課税主体」つまり、税金を課して徴収をしているのがどこかという点で分けることになります。課税主体が国であるものは、国税となります。一方、課税主体が地方公共団体(都道府県、市区町村等)であるものは、地方税となります。徴収された税金は、それぞれの財源となります。

・国税に該当するもの

国税に該当するものは「法人税」「所得税」「消費税」「相続税」など、国を代表する税金になります。確定申告などは、住所所在地の税務署に行いますが、そもそも税務署は国の機関である国税庁管轄の組織となります。そのため、国は、各都道府県に税務署を配置し、国税の徴収を行っているものとなります。

・地方税に該当するもの

地方税に該当するものは、「住民税(個人も法人も含む)」「固定資産税」「地方消費税」「自動車税」などがあげられます。このなかでも「地方消費税」について説明をします。消費税の税率は10%(2023年現在、軽減税率を除く)ですが、この10%は、7.8%の国税と2.2%の地方税に分かれます。地方で消費をしたが、すべて国が税を徴収してしまうということがないように分けられています。

・国税と地方税の徴収方法

国税は課税主体が国で、地方税は課税主体が地方公共団体ということは先に述べました。しかしながら、確定申告書や消費税の申告書は、税務署に提出します。地方公共団体である市役所等には提出をしません。これは、納税者の手間や便宜をはかるため、税務署(国)に提出した情報を
市役所等(地方公共団体)へ共有しているためです。また、地方交付税という制度があり、いったん国税は国が徴収しますが、地方公共団体の規模に応じて、国から地方公共団体に交付されるというものです。

●まとめ

本記事では、国税と地方税について記載をいたしました。国税と地方税の分け方は、課税主体が国か地方公共団体かという点になります。また、消費税のように国税と地方税が混在しているものもあります。正しく理解し、税の知識を深めていきましょう。

097 非課税の所得とは

所得というのは収入から経費を引いたもの、または給与や退職金の場合は、給与所得控除や退職所得控除を控除した金額が所得となります。
所得に対しては、所得税が課せられます。しかし、所得の元となる収入のなかには非課税(収入金額にならない)のものもあります。
本記事では、非課税となる所得について記載をいたします。

●非課税となる収入の例

非課税となる収入にはいくつか種類があります。その中でも有名なもの、知っておくべきものを紹介いたします。

・給与所得関係

給与所得関係で非課税になるものはいくつかあります。代表的なものが、通勤にかかる交通費の支給です。通勤にかかる交通費は月15万円までは、非課税となります。交通費を支給されても、そのままの金額を使用してしまうため、それに対して所得税が課されてしまうということは、納税者にとって不利であるためです。
また、通勤にかかる交通費以外にも制服の現物支給や出張旅費それにかかる日当等があります。

・NISA口座関係

NISA口座を開設している場合、その口座内で受け取る配当や株式の譲渡で得た所得は非課税となります。通常、配当や株式の譲渡は、所得に対し、20%が課税されます。15%の所得税と5%の住民税。20%の課税が非課税となるため、株式投資を行う方は、NISA口座を開設しておくことを推奨します。

・生活に必要な資産

メルカリ等のフリマサイトやオークションサイトで日用品を販売している方が販売で得た利益は、その販売対価の額が30万円以下であれば、非課税となります。
しかしながら、取得金額より収入金額が高い場合や継続して利益を得ている場合は、事業所得や雑所得となり、課税される可能性があるので、注意をしましょう。

・保険金や損害賠償金

身体や資産に傷害や損害を加えられたことにより得る保険金や損害賠償金は、非課税となります。具体例は、医療保険やがん保険の給付金、自動車事故で受けた損害保険金、自己所有の器物を破損されたことにより、訴訟して得た損害賠償金等が対象となります。
なお、保険金でも満期返戻金や生命保険の受取金(相続税において非課税枠あり)は非課税とならないため、注意が必要です。

・その他

上記以外にも宝くじの当選金、遺族年金、国等に対する重要文化財の譲渡等が非課税所得としてあります。宝くじの当選金は非課税ですが、馬券等の高額配当は課税対象ですので、注意が必要です。

●まとめ

本記事では、非課税所得について記載をしました。非課税所得には、課税するのになじまないもの(給与所得関係や生活に必要な資産等)国が制度としているもの(NISA等)生活に配慮したもの(保険金や損害賠償金、遺族年金等)があります。
非課税所得もNISAのように自分で選択をできるものもあります。ぜひ、活用していきましょう。

096 個人の所得の種類とは

個人が収入を得たとき、非課税に規定されているものを除き、各種所得の収入金額となります。では、「この収入はどの所得の収入金額になるか」「そもそも所得にはどのような種類があるか」という疑問点があります。本記事では、所得の種類について解説をしていきます。

●個人の所得の種類と分類

個人の所得の種類は10種類あります。「不動産」「事業」「山林」「給与」「退職」「譲渡」「利子」「配当」「一時」「雑」の10種類です。それぞれの紹介とどういったときに発生する所得かの分類(グループ化)を下記に記載いたします。

・業務を行うもの

業務を行うことにより得る所得は「不動産」「事業」「山林」一部「雑」となります。「不動産」であれば、不動産業を行っていますし、「事業」であれば、さまざまな事業(小売店、飲食店等)が該当します。「山林」は山林の譲渡や伐採の業務となります。
また、最近は副業が増えているため、「雑」も副業等の業務に対する所得となります。

・勤務の対価であるもの

勤務の対価で得る所得は「給与」「退職」です。給与は、企業等に雇用され得る給与や賞与、退職は退職金等です。「給与」と「退職」は経費を使用しなくても「給与所得控除」「退職所得控除」という収入から所得を控除する仕組みがあるのが特徴といえます。

・譲渡の対価であるもの

譲渡の対価で得る所得は「譲渡」です。先に「山林」は山林の譲渡や伐採で得る所得と記載しましたが、山林は育成に時間がかかることなどを考慮して、独立したカテゴリーとなっています。
「譲渡」は土地・建物の譲渡、骨とう品や絵画等(譲渡対価30万円以下のものを除く)の譲渡、
有価証券(株等)の譲渡、その他自動車やクルーザー等を譲渡した場合も該当します。

・保有することによる得るもの

保有することにより得る所得は、「利子」「配当」となります。利子は預金を保有している場合に銀行等から得る利子等が該当します。「配当」は株式等を保有している場合に企業等から得る配当等が該当します。これらは収入のみで経費がない所得となりますので、収入=所得となります。

・その他

上記に該当しないのが「一時」です。「一時」とは、一時的に得る所得となります。例えば、懸賞金等が該当します。一時所得はあくまで「一時」ですので、継続的に得る可能性が低い所得をいいます。そして、今まで紹介をしてきた9つの所得のどれにも該当しないのが「雑」です。「雑」の代表的なものには、年金による収入、仮想通貨の販売益、副業での収入等があげられます。「雑」というバスケットカテゴリーがあるため、所得というのは、必ず10種類に分けることができます。

●まとめ

本記事では、所得区分について記載をしました。所得は必ず10種類のどれかに該当をします。自分が収入を得る場合、この収入はどの所得に該当するかという判断が必要です。その判断ができるようになれば、正しい税計算を行うための第一歩となります。

095 青色申告の特典とは?どういったものがある

青色申告を行うことで所得の計算や損失の繰越等、さまざまな特典を受けることができます。しかしながら、そういった特典があることは知っていても「具体的にどのようなものがあるか」「自分が特典を受けた場合、どれくらいのメリットがあるか」等の疑問点が出てくると思います。
本記事では青色申告の特典内容について、具体的に記載をしていきます。

●青色申告の特典の分類と内容

青色申告の特典は、大きく分けると4つに分類されます。「所得計算上の特例」「純損失の繰越控除及び繰戻し還付」「税額控除等」「更正の制限」となります。本記事では、「所得計算上の特例」に焦点をあてて、記載をしていきます。

・青色申告特別控除

青色申告書を提出することで、最も有名かつ効果的なものが「青色申告特別控除」です。「青色申告特別控除」とは、青色申告を行っていれば、最低10万円、最高65万円の控除を受けれるというものです。最も高い金額の65万円の控除を受けるためには、以下の2点の要件を満たす必要があります。

1事業所得または事業規模の不動産所得を有し、かつ、帳簿に一切の取引を詳細に記録していること
2申告をe-taxで行っているか、仕訳帳及び総勘定元帳を電磁的記録の備付け等をしていること

1のみを満たした場合は、55万円の控除となります。1を満たしていない場合は、10万円の控除となります。

65万円の特別控除というのは、経費を65万円使用したことと同じなので、節税効果があります。青色申告の適用を受けるのであれば、ぜひとも享受したいものとなります。

・青色事業専従者給与の必要経費算入

青色申告者で生計を一にする親族を従業員としている場合、その親族に支払った給与等を必要経費とすることができます。原則では、生計を一にする親族に対して支払った給与等は必要経費に算入をすることができません。しかし、青色申告者で事前に届け出を行っている場合は、給与等を必要経費に算入することができます。

・家事関連費の必要経費算入

自宅兼オフィス等、家事と事業が混同している場合、白色申告者は、主たる部分(50%超)が業務の遂行上必要ですが、青色申告者は、主たる部分(50%超)が必要でなくても、業務の遂行する割合等で必要経費に算入することができます。例えば、自宅兼事務所で固定電話を使用している場合、青色申告者であれば、固定電話の全体の10%を使用していれば、電話代金の10%を必要経費とすることができます。一方、白色申告者の場合、固定電話の50%超を業務で使用している必要があります。ただし、回線を独立させるなど、明らかに区分ができる場合は、必要経費に算入することができます。

・その他の特典

上記以外にも「貸倒引当金の一括評価貸倒引当金」の必要経費算入、「棚卸資産の低下法による評価」「減価償却の特別償却」等があります。売掛金等の債権が多額である場合や棚卸資産・固定資産がある場合は、これらの特典も有効活用できるでしょう。

●まとめ

本記事では、青色申告の特典について記載をしました。青色申告を選択することにより、青色申告特別控除を始め、さまざまな特典を受けることができます。特に65万円の特別控除のメリットは大きく、青色申告者であれば、享受したいものとなります。このように、青色申告の特典を知ることで、正しく節税を行うことができます。ぜひ知識を身につけておきましょう。

094 青色申告とは?受けることができる要件とメリットとは?

個人の申告には、青色申告と白色申告があります。その際に「青色申告と白色申告の違いは?」「青色申告を行うためにはどうすればいいか?」などの疑問点があると思います。
本記事では青色申告の制度について記載をしていきます。

●青色申告の適用要件から取りやめまで

青色申告は具体的にどのようにすれば適用を受けることができるのか、また、青色申告者の義務、青色申告をやめたいときはどうすればいいか等について記載をしていきます。

・青色申告の要件

青色申告書を提出できる個人には、二つの要件があります。一つ目の要件は、「不動産所得、事業所得、山林所得の業務を行う者」です。つまり、普通の会社員の方等で給与以外に収入が無い方は、これらの業務を行っていないため、青色申告書を提出することはできません。
二つ目の要件は、「税務署長の承認を得ること」です。具体的には「青色申告承認申請書」という書面を提出します。提出期限は3月15日(事業を開始した年は、開業日から2ヶ月以内)となります。

・青色申告者の義務

青色申告者は、帳簿書類を備え付けて、保存する義務があります。その理由として、青色申告には、青色申告特別控除等のさまざまな特典があります。それを受けるためには、適正な記帳、帳簿の保存を行う必要があります。それにより、青色申告は正確な帳簿組織にもとづく、信頼性の高い申告であることを示すことができるためです 。また、青色申告書には、貸借対照表、損益計算書その他その業務に係る所得、損失の明細書の添付も必要となります。

・青色申告は取り消しをされる。

一度青色申告の承認を受ければ、恒久的に青色申告が適用されるかというとそうではありません。一定の要件を満たしてしまった場合は、青色申告の承認が取り消しをされます。その要件とは、先ほどの義務にもあった帳簿書類に係るものです。帳簿書類について、税務署が提出を求めたにもかかわらず応じない場合等が該当します。取り消しは、遡って行われることもありますので、過去の青色申告特別控除などが取り消され、その結果、過去の所得が増え、税負担も増えるということもあるので、注意が必要です。

・青色申告は自分からやめることもできる

先ほどは、ペナルティとしての取り消しでしたが、青色申告は自分からやめることもできます。始めるときに書面を出したように、やめるときも「取りやめの届出書」を提出することになります。提出期限は、承認申請同様、3月15日となります。また、事業を廃業等した場合も青色申告は効力を失います。要件の一つである「不動産所得、事業所得、山林所得の業務を行う者」になくなるためです。

●まとめ

本記事では、青色申告について記載をしました。事業を営んでいる人であれば、青色申告を選択することにより、青色申告特別控除を始め、さまざまな特典を受けることができます。また、管理のレベルを上げるということも含め、帳簿の記帳や保存をしっかりと行い、青色申告の適用を受けることでメリットを得ることをおすすめします。

093 確定申告書を提出しなおしたい場合はどうすればいいか

確定申告書を提出した後に間違いが発覚することがあります。その場合、「提出をしなおしたいが、どうすればいいのか」という疑問点があると思います。
本記事では、一度提出した確定申告書を出しなおす場合の方法について、記載をしていきます。

●期限内に提出しなおしを行う場合

確定申告書の提出期限は、2月16日から3月15日になります。期限内に確定申告書を提出しなおす場合、再度、新しく作成しなおした確定申告書を提出すれば、大丈夫です。この場合、納める税金または還付される税金は、提出しなおした申告書の金額となります。

●期限後に提出しなおしを行う場合

期限後に確定申告書を提出しなおす場合は、税額が増えるか減るかで申告方法が変わります。したがって、それぞれのケースで解説をしていきます。

・税額が増える場合は「修正申告書」を提出する。
売上等の計上漏れで収益等が増えた場合において、確定申告書を提出しなおすときは、税額が増えるため、修正申告を行います。
修正申告は、確定申告書の修正前の税額、修正後の税額を記載し、提出をします。修正申告を行う場合、追加で納付する税額が発生するため、すみやかに差額の税額(増差税額)を納付する必要があります。

・修正申告を行うケース

修正申告は自発的に行う場合と税務調査で間違いが発覚し、税務署から指摘を受け、行う場合があります。
どちらにしても、本来納めるべき税金を納めていないということになるので、ペナルティとして、延滞税と過少申告加算税(期限後申告は無申告加算税)が課されますが、修正申告が自発的な場合は、過少申告加算税は賦課されず、無申告加算税は減額されます。

・税額が減る場合は「更正の請求」を行う

経費の計上漏れや徴収された源泉所得税の申告漏れ等により、元々の税額が減少する場合は、更正の請求を行うことになります。更正の請求とは、提出した申告書に誤りがあったので、更正(申告の内容を改めること)を税務署長にしてほしいというものです。

更正の請求には、税額が減少する根拠書類の添付が必要になります。
例えば、経費の計上漏れの場合は、経費の領収書等、源泉所得税の申告漏れであれば、源泉徴収票等になります。修正申告は、追加で納税するものなので、税務署側も申告通り受け取りますが、更正の請求は、税金が還付されるものなので、税務署側も調査をし、請求が妥当かを確認します。

●まとめ

本記事では、確定申告書の提出しなおしについて記載をしました。期限内と期限後で提出する申告書は変わり、さらに期限後は、税額が増えるか減るかで、「修正申告」か「更正の請求」かになります。確定申告書を提出するときは、提出しなおしが無いように、チェックする時間を設けましょう。そのためには、余裕を持って申告書を作成し、提出をすることが好ましいといえます。

092 確定申告にはいくつか種類がある?その内容とは

確定申告書という用語は誰もが耳にしたことはあると思います。その確定申告書には、納税者の現状に合わせて3つの種類があります。「確定所得申告」「還付等を受けるための申告」「確定損失申告」の3つとなります。では、それぞれどのような特徴があるのか、本記事では、確定申告書の種類について記載をしていきます。

●確定所得申告

確定申告書の種類の中で、「確定所得申告」とは、そのとおり、所得を確定させ、納税する金額を申告するものです。

・確定所得申告の概要
その年の所得税額が、年末調整や源泉徴収されても、なお納めるべき所得税額がある場合は、確定申告書を提出しなければなりません。提出期限は翌年の2月16日から3月15日の間となります。なお、給与以外の年間所得が20万円以下の場合等、一定の要件を満たす場合は、この限りではありません。

・死亡や出国をした場合
確定所得申告書の提出義務者の中には、「年の中途や提出期間中に死亡してしまった(以下、死亡した場合)」「年の途中で海外赴任が決まり、国外へ出国し、住所も移した(以下、出国の場合)」というケースもあります。その場合、提出期限が一般の場合とは異なります。「死亡した場合」は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内、「出国の場合」は、出国をするときまでに確定申告書を提出しなければなりません。ただし、出国の場合で、納税管理人の届け出をした場合は、一般の場合と同じ、提出期限は2月16日から3月15日の期間となります。

●還付等を受けるための申告

所得の計算を行った結果、源泉徴収等により、納めるべき税金よりも多く納めすぎていた場合、申告をすることにより、所得税の還付を受けることができます。

・還付等を受けるための申告の概要
個人事業で報酬を得る場合、源泉徴収金額(10.21%または20.42%)を差し引かれて、報酬が振り込まれることがあります。しかしながら、事業の所得が赤字や計算した税率が10.21%よりも少ない等の場合、申告を行うことで、あらかじめ差し引かれた源泉徴収金額の還付を受けることができます。

・還付等を受けるための申告の提出について
還付等を受けるための申告は、任意であって義務ではありません。「還付を受けることができる」(所得税法第122条)とあるように、「受けなければならない」という条文ではありません。
これは、提出をしなくても、徴収すべき税金は徴収されているためです。
また、確定所得申告は2月16日から3月15日という提出期限が定められていますが、還付等を受けるための申告は、還付等を受ける年の1月1日から5年間という長期間となっています。

●確定損失申告

確定損失申告とは、還付等を受けるための申告とは少し異なります。事業所得等で損失が出て、翌年にその損失の繰越をしたいときに提出をします。

・確定損失申告の概要
確定損失申告を提出する目的は、純損失(事業の損失)または雑損失(生活に必要な資産の損失等)が出ている場合に、その損失を翌年以降繰越すためです。これをやっておけば、翌年、所得が出た場合でも前年の損失と相殺ができるため、節税効果になります。

・確定損失申告の提出について
確定損失申告も任意であって義務ではありません。しかしながら、還付等を受けるための申告が5年間の猶予があるのに対し、確定損失申告は2月16日から3月15日の間が提出期限となります。

●まとめ

本記事では、確定申告書の種類について記載をしました。確定申告書は、3つの種類に分かれ、さらに「一般の場合」「死亡した場合」「出国の場合」に分かれます。還付等を受けるための申告や確定損失申告は提出をしないと損をする場合もありますので、注意をしましょう。

091 確定申告とは?どのような手続きを行うのか

個人事業主や給与以外に収入がある人等は、確定申告を行う必要があります。しかしながら
「確定申告とは、そもそもどういうものか」「確定申告書の作成や提出方法を知りたい」「申告をしないとどうなるか」等の疑問点が出てくる思います。本記事では当該内容について記載します。

●確定申告とは?

確定申告を一言でいうとどういうものか、また、納税者は必ず確定申告をしないといけないのか、申告をしないとどうなるのかについても記載します。

・確定申告の意義

確定申告とは、前年の所得を計算し、税額を確定させます。その後、国(提出先は所轄の税務署)へ申告を行う一連の手続きとなります。確定申告は、申告納税制度となります。納税者が自発的に申告を行うため、日本では、1947年(昭和22年)から現在まで、採用されています。

・確定申告をしなくてもよいケース

日本が申告納税方式だからといって、すべての納税者が確定申告をするわけではありません。例えば、会社員の方で給与以外に収入がなく、年末調整で課税関係が完結する方や給与以外の所得が年間20万円以下の方などは、確定申告を行う必要がありません。

・申告をしないとどうなるか

確定申告義務がある方で確定申告をしない場合はどうなるでしょうか。納税すべき金額があるにも関わらず、確定申告・納税をしていないということは、法律違反となり、ペナルティが課されます。延滞税、無申告加算税などが課せられ、本来納めるべき納税額に数%から数10%負担することとなります。

●確定申告書の作成・提出方法

確定申告書を作成するにはどうすればいいか、また、作成はできるが提出はどのように行えばいいか、いつまでに出せばいいかという点について記載します。

・国税庁の確定申告作成コーナーの使用

確定申告書を作成する方法の一つが、国税庁の確定申告作成コーナーを使用する方法です。申告書に直接入力をするのではなく、「給与はいくらあったか」「配偶者や扶養親族はいるか」「事業の収入と経費はいくらか」等の情報を入力していくことで、自動的に所得を計算してくれます。PCにソフトをインストールする必要はなく、WEB上の入力で完結します。

・各種会計ソフトの使用

個人事業主であれば、帳簿に記帳を行うために会計ソフトを使用していると思います。会計ソフトで確定申告書を作成する方法は、会計ソフトで記帳を行い、配偶者の有無や扶養親族の数等を入力していけば、確定申告書が会計ソフト上で作成されるというものです。MFクラウドやfreeeが代表例といえます。

・提出方法と提出期限

確定申告書の提出方法は、印刷して紙で提出する方法とe-taxで提出する方法があります。紙の場合は、所轄の税務署に持参でも郵送でも可能です。e-taxはインターネット経由での提出になります。提出履歴等が電子上で閲覧できるので、便利ですが、事前の利用申請が必要です。また、申告期限は、紙の場合もe-taxの場合も原則として、2月16日から3月15日までの間となります。

●まとめ

本記事では、確定申告について記載をしました。確定申告書は、必ず提出をしないといけないわけではなく、一定の要件を満たしていれば、提出する必要はありません。しかし、提出する必要がある場合、提出をしないことによりペナルティが課される可能性があります。ですので、申告期限までに必ず申告をするようにしましょう。

 

090 累進課税制度とは?住民税の申告が必要なパターンと合わせて解説

日本の税率は、税金の種類や規模によってさまざまな課税方式や税率により課税されております。
このように一律の税率によって課税しない理由は、課税の公平を確保するためにさまざまな方法により課税されていると考えられます。
ただし、税金の種類によっては住民税や消費税などのように一律な税率も存在します。
これは国民が国や都道府県、市町村などからさまざまな行政サービスを利用するためにかかる費用を税金として負担するものであることから、一律な税率としております。
今回は累進課税制度について解説していきたいと思います。
また、住民税の申告が必要なパターンについても解説していきます。

◆累進課税制度とは

累進課税制度とは、課税対象額が増加すれば増加するほど税率が高くなっていく課税制度になります。
累進課税制度には、単純累進課税と超過累進課税の2種類がありますが、日本では後者の超過累進課税が採用されています。
まず単純累進課税とは、所得が増えれば増えるほど所得税率も高くなり、所得が1,000万円の場合には、単純に所得1,000万円の全額に対して当該所得に該当する税率を乗じて所得税額を計算するものです。
超過累進課税とは、単純累進課税と同様に所得が増えれば増えるほど所得税率も高くなりますが、単純累進課税と異なる点は、一定金額を超えた分についてはその超えた金額に対してさらに高い税率を乗じて計算する課税方式になります。
現在の所得税による超過累進課税の税率は、課税所得1,949,000円まで税率5%、195万円から3,299,000円までが税率10%、330万円から6,949,000円までが税率20%695万円から8,999,000円までが税率23%、900万円から17,999,000円までが税率33%、1,800万年から39,999,000円までが税率40%、4,000万円以上が税率45%となっております。

◆累進課税制度のメリットとデメリットについて

①メリット

累進課税により課税の公平が確保されます。
これは高所得者の場合には高い税率により納税額が大きくなり、低所得者の場合には低い税率により納税額は少なくなります。
このように累進課税制度は所得が高い人は高い税率になり、税金を多く納めることが出来る能力の高い人から税金を多く徴収し、多く納めることが出来ない人からは少ない税金を徴収することになるため、富裕層とそうでない層の人たちとの間の所得格差が拡大するのを防ぐ事ができ、公平な課税を実現することができます。

②デメリット

・制度が複雑なため自分で税額計算できない。
税率が一律であれば、自分が納める税額も単純に所得に税率を乗じれば済むため計算が非常に容易となります。
しかし、累進課税制度は増加した分だけ税率が高くなるため、自分で税額計算するには非常に複雑な課税方式であることが考えられます。

・物価を反映しない。
累進課税のデメリットとして、物価を反映しないことが挙げられます。
所得が増えた場合であっても、所得以上に物価が上がってしまうと実質的に所得が減った事と同じであると考えられます。
累進課税制度の場合、物価が上昇しても税率は下がらないため、納税額も実質的に増えてしまうことになります。

◆累進課税制度が適用されている税金の種類

現在、日本の税金で累進課税制度が利用されているものは、所得税、相続税、贈与税となります。

所得税とは、事業活動により稼いだ利益に対して課税された税金を言います。

相続税とは、亡くなった人の財産を、相続により取得したに財産に対して課税される税金です。
財産の合計額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人数)を下回る場合には、相続税は発生しませんが、基礎控除額を超えた場合に相続税が課税されます。

贈与税とは、1月1日から12月31日までの1年間の間に贈与に取得した財産に対して課税される税金です。
なお、贈与税の基礎控除額として年間110万円以下の場合には贈与税は課税されません。
贈与税は、生前に財産を他人へ無償で譲渡することで相続税を回避するといった事態を防ぐために、贈与税が存在しており、相続税を補完するものと考えられています。

これらはそれぞれ税率などは異なりますが、所得が多い人や財産を多く所有している富裕層の人に対しては高い税率から多く税金を納めることができるため、上述したように所得格差の拡大防止に繋がります。

◆住民税の申告について

所得税は累進課税により所得が多ければ多いほど納税額が増加します。
しかし、住民税については一律10%の税率となっております。
この10%は県民税4%と市民税6%が合算された税率となっております。
この住民税は、その地域に住んでいる住民が利用するさまざまな行政サービスを実施するために必要な費用を住民税によって賄われております。
所得税と異なる点は、累進課税制度ではない点のほか、基礎控除や扶養控除の控除額についても異なっており、住民税の方が所得税に比べて控除額が少なくなっています。
所得税の基礎控除額が48万円に対して、住民税の基礎控除額は43万円となっています。

◆結論

累進課税制度とは、課税の公平を確保するためには非常に考えられた課税方式であり、国民の所得格差拡大を防止するためには最適な課税方式となります。
しかし、累進課税制度は自分で税額計算するには複雑な課税方式であるため、自分の正しい税額を知るためには税理士に相談することが確実な方法になります。

089 法人の種類と設立方法

個人事業主が節税対策として法人成りを検討する事があります。
日本は法人の種類が株式会社を始め、合同会社や一般社団法人、一般財団法人、NPO法人など様々な種類が挙げられます。
今回は法人の種類を紹介するのとともに、株式会社を例に挙げて設立方法を解説したいと思います。

◆法人の種類

法人の種類は上述したように様々なものが挙げられます。
なお、一般的に会社設立を考える場合、株式会社か合同会社を選択することが多いです。
合同会社と似たようなものとして、合資会社や合名会社が挙げられます。
合資会社や合名会社は、株式会社や合同会社とは異なり、出資した金額以上の責任を負う無限責任となります。
よって、有限責任である株式会社や合同会社とは異なるため、一般的に合資会社や合同会社を設立することは考えにくいのでここでは合資会社と合同会社については説明を省略します。

以下では代表的なものを解説していきます。
・株式会社
株式会社は会社に資金を出資し、株を所有している株主と経営を実施する代表取締役で構成されています。
会社の所有者である株主は役員自体を株主総会で決め、経営に関することは代表取締役などが決定するため、所有と経営が分離している事が特徴になります。

・合同会社
株式会社とは異なり、所有と経営が分離していないものが合同会社といいます。
合同会社の場合、出資者がそのまま経営者になり、出資者は社員と言います。
一般的には社員というと従業員という意味を指しますが、合同会社の社員とは、出資者であることを指します。

・一般社団法人
社団法人は、一般社団法人と公益社団法人に分けられます。
公益社団法人は、法人税の計算において収益事業にしか課税されないなどの優遇が受けられます。
この公益社団法人以外の法人を一般社団法人と言います。
一般社団法人とは、人が集まることにより法人格が与えられるものであり、設立にあたって設立者が1名以上は必要となり、更に理事3名、監事1名、評議員3名が必要となります。

・一般財団法人
一般財団法人とは、ある目的のために集められた財産に対して法人格が与えられるものです。
一般財団法人の場合、300万円以上の財産を拠出し、その財産を基に事業を継続していきます。
一般財団法人を例に挙げると、博物館や美術館等が一般財団法人に該当します。

・NPO法人
NPO法人とは特定非営利活動法人といい、利益を得ることを目的としない法人を指します。
この利益を得ることを目的としない活動のことを非営利活動といいます。
NPO法人の非営利活動は法律で20の活動分野が列挙されており、それらの活動に該当しないと特定非営利活動には該当しません。
この20の活動分野について、具体例が法律に記載されているわけではないため、社会通念上、常識の範囲内で判断する必要があります。

◆法人税の課税範囲

法人の種類は上述したように様々なものが挙げられます。
法人の種類がいくつかあるように、法人税の課税範囲も法人の種類によって課税される範囲が異なります。
ここでは、法人税の課税範囲について紹介していきたいと思います。
株式会社や合同会社は、営利を目的としているため、基本的に全所得に対して課税されます。
法人税率は規模にもよりますが、年間所得が800万円までは15%の軽減税率が適用され、800万円を超えると23.2%の法人税率が課税されます。
一般社団法人や一般財団法人、NPO法人などは、収益事業から生じた所得のみが課税対象となります。
法人税率についても、一般社団法人や一般財団法人などは23.2%ですが、それ以外の公益社団法人や公益財団法人などの法人税率は19%の軽減税率が適用されます。
上記で紹介した法人以外に、地方公共団体や日本放送協会などは公共法人と呼ばれており、公共法人はその公共性の高さゆえ、そもそも法人税を納める必要がないことから、法人税は課税されません。

◆株式会社の設立方法

法人の設立方法は、法人の種類によって要件や設立費用などが異なってきますが、日本で最も多い株式会社を例として設立までの流れを解説していきます。
株式会社を設立する場合には基本的には以下①から⑧までの流れとなります。
① 会社の基本事項の決定
② 類似商号の調査
③ 代表印の作成
④ 定款の作成
⑤ 公証人による定款の認証
⑥ 出資の履行
⑦ 期間の具備
⑧ 設立登記

会社設立までの上記流れについて、登記に1週間ほど、印鑑作成に数日かかりますが、その他の手続きがスムーズに済めば①から⑧までの作業は早くて2週間から3週間程度で完了します。一般的には1カ月程度をみて計画すると良いです。
なお、上記⑤の定款の認証について、設立時に作成するのは原子定款だけであって、設立以降の変更がある場合には、株主総会の特別決議で行うことが可能となります。
ただし、あまりにも作業に時間がかかりそうであるならば、司法書士へ相談し、設立作業を依頼することもおすすめします。
自分でやるとかえって時間だけを取られてしまい、肝心の本業に集中することが出来なくなってしまうので、設立登記に自信のない人は司法書士へ依頼するのが最も良い方法になります。

◆結論

今回は法人の種類と設立方法の流れについて解説しました。
最近ではフリーランスなども増加してきており、今後規模が大きくなってくると法人成りを検討してくる方も増加してくることが考えられます。
そのような場合にはどのような種類の法人を設立しようか悩むことも考えられます。
その場合には法人の種類や特徴などを調べて慎重に検討することをおすすめします。

088 電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法とは、各税法で原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律を言います。
電子帳簿保存法上、電磁的記録による保存は大きく以下3種類に区分されています。
①電子帳簿等保存 (電子的に作成した帳簿・ 書類をデータのまま保存)
②スキャナ保存 (紙で受領・作成した書類を 画像データで保存)
③電子取引 (電子的に授受した取引 情報をデータで保存)

電子帳簿保存法について、知っておくべき内容を3種類ごとに改正内容を解説していきます。

◆電子帳簿等保存 (電子的に作成した帳簿・ 書類をデータのまま保存)

1 税務署長の事前承認制度が廃止されました。
これまで、電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担を軽減するため、事前承認は不要とされました (電子的に作成した国税関係書類を電磁的記録により保存する場合についても同様です。)。

2 優良な電子帳簿(優良電子帳簿とは、訂正、削除履歴の確保要件、相互関連性要件、検索要件を満たした帳簿のことを言います)に係る過少申告加算税の軽減措置が整備されました。
一定の国税関係帳簿(注1)について優良な電子帳簿の要件を満たして電磁的記録による備付け及び保存を行い、本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書をあらかじめ所轄税務署長に提出している保存義務者について、その国税関係帳簿(優良な電子帳簿)に記録された事項に関し申告漏れがあった場合には、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が整備されました(申告漏れについて、隠蔽し、又は仮装された事実がある場合には、本措置の適用はありません。)。
(注1) 一定の国税関係帳簿とは、所得税法・法人税法に基づき青色申告者(青色申告法人)が保存しなければならないこととされる総勘定元帳、仕訳帳その他必要な帳簿(売掛帳や固定資産台帳等)又は消費税法に基づき事業者が保存しなければならないこととされている帳簿をいいます。

3 最低限の要件を満たす電子帳簿についても、電磁的記録による保存等が可能となりました。
電磁的記録による保存等が可能となったのは、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に従って記録されるものに限られます。

◆スキャナ保存 (紙で受領・作成した書類を 画像データで保存)

1 税務署長の事前承認制度が廃止されました。
従来、スキャナ保存する場合には事前に所轄税務署長へ事前承認が必要となっておりましたが、今回の改正により事前承認は不要となりました。

2 タイムスタンプ要件、検索要件等について、次のとおり要件が緩和されました。
⑴ タイムスタンプの付与期間が、記録事項の入力期間と同様、最長約2か月と概ね7営業日以内とされました。

⑵ 受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要とされました。

⑶ 電磁的記録について訂正又は削除を行った場合に、これらの事実及び内容を確認することができるクラウド等(注2)において、入力期間内にその電磁的記録の保存を行ったことを確認することができるときは、タイムスタンプの付与に代えることができることとされました。
(注2) 訂正又は削除を行うことができないクラウド等も含まれます。

⑷ 検索要件の記録項目について、取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先に限定されるとともに、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となりました。

3 適正事務処理要件(相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等のことをいいます)が廃止されました。

4 スキャナ保存された電磁的記録に関連した不正があった場合の重加算税の加重措置が整備されました。
適正な保存を担保するための措置として、スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が10%加重される措置が整備されました。

◆電子取引 (電子的に授受した取引情報をデータで保存)

1 タイムスタンプ要件及び検索要件について次のとおり要件が緩和されました。
タイムスタンプ要件に係るタイムスタンプの付与期間及び検索要件に係る検索項目について 「スキャナ保存に関する改正事項」の2(1)と(4)と同趣旨の改正が行われたほか、基準期間(当課税期間における2年前の課税期間)の売上高が 1,000万円以下である方(小規模な事業者)について、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には、検索要件の全てが不要とされました。

2 適正な保存を担保する措置として、次の見直しが行われました。
⑴ 申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。
※ 消費税における電子取引の取引情報等に係る電磁的記録については、引き続き出力書面による保存が可能です。

⑵ 電子取引の取引情報に係る電磁的記録に関して、隠蔽し、又は仮装された事実があった場合 には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税が 10%加重される措置が整備されました。

◆電子帳簿保存法の一般的な対応

電子帳簿保存法による一般的な対応としておすすめなのが、①受領したPDFデータを下記方法により保存する方法か②マネーフォワードなどによるクラウドボックスにより保存する方法が挙げられます。
①の場合には、PDFデータに規則性をもって以下のようなタイトルを付して保存すれば電子帳簿保存法に対応した保存とみなされます。
「日付、取引先の名称、取引金額」をPDFのタイトルに付して保存する方法。
②の場合には、受領したPDFをマネーフォワードのクラウドボックスへドラッグアンドドロップすれば自動的に日付、取引先の名称、取引金額が登録される方法。

◆結論

以上が電子帳簿保存法の内容になります。
電子帳簿保存法によって、基本的な内容は電子取引であるインターネットにより領収証をダウンロード、PDFでの請求書の授受などを行った場合には、電子的方法によりデータを保存しておく必要があるということを理解しておく必要があります。
来年から本格的に実施する必要がある為、対象取引がある場合には対応できるように準備しておきましょう。

087 青色申告承認申請書の書き方

青色申告は納税者の記帳慣行を育成し、申告納税制度の発展に資するために設けられており、一般の記帳より水準の高い記帳をし、その帳簿に基づいて正しい申告をする人については、有利な取り扱いが受けられると言う制度です。
今回はこの青色申告の適用を受けるための青色申告承認申請書の書き方及び青色申告のメリットについて解説します。

◆法人の場合

・承認申請
青色申告の承認を受けようとする法人は、その事業年度開始の日の前日までに、一定の事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
ただし、新設法人等の場合の申請書の提出期限は、その設立等の日以後3月を経過した日とその設立等の日の属する事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日までです。

・帳簿書類
青色申告法人は一定の帳簿書類を備え付けて、これにその取引を記録しその帳簿書類を原則として7年間保存しなければなりません。

・青色申告の特典
青色申告の法人税法上の特典には主に次のようなものが挙げられます。
①青色欠損金の繰越控除
欠損金が発生した日から10年間繰り越すことができます。ただし、この規定を受けるためには欠損金額の生じた事業年度について青色申告書である確定申告書を提出し、その後連続して確定申告書を提出していなければなりません。
②青色申告の繰戻還付
欠損金が生じた時、すでに納付した法人税額のうち一定の金額の還付を請求できる制度です。

・青色申告の承認の取り消し
次に掲げる事実があった場合には、その事実があった事業年度までさかのぼって青色申告の承認は取り消され、青色申告の特典を使用できなくなります。
・帳簿書類の備え付け、記録又は保存が財務省令で定めるところによって行われていない場合
・帳簿書類に係る税務署長の指示に従わなかった場合
・帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録した場合など

◆所得税法の場合

・青色申告承認申請書
青色申告をするためには、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
なお、1月16日以後に新たに開業した人は、
の日から2カ月以内に申請すれば良いことになっています。

・青色申告の特典
青色申告の所得税法上の特典にはいろいろなものがありますが、主なものとして次のようなものがあります。
①青色申告特別控除
青色申告だけに認められている特別控除です。
青色申告にするだけで650,000円(または10万円)の控除があります。
ただし、650,000円の控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
・不動産所得または事業所得を生み出す事業を営んでいる青色申告者であること。
・これらの所得の金額に係る取引を正規の簿記の原則により記帳していること。
・その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書を確定申告書に添付していること。
・確定申告書を期限内に提出すること。
上記以外の青色申告者については、不動産所得、事業所得及び山林所得を通じて最高100,000円が控除されます。
・その年の所得税確定申告書、貸借対照表及び損益計算書の提出をe-Taxによる国税電子申告・納税システムを利用して期限内に提出すること。

上記要件のうち、e-Taxによる国税電子申告・納税システムを利用せずに紙による提出の場合には、青色申告特別控除は550,000円となる点に注意が必要です。

②青色事業専従者給与
青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業にもっぱら従事している人に支払った給与は、届出書に記載された金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正な金額であれば必要経費として認めると言うものです。
ただし、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれないので注意が必要です。
③貸倒引当金
一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の計上は個別評価金銭債権等に係る貸倒引当金とは異なり、青色申告者にのみ認められております。
④純損失の繰り戻し
その年に純損失が生じ、その前年は納税をしている場合において適用可能な純損失の繰り戻しによる所得税の還付請求も青色申告者にのみ認められています。

◆ 青色申告承認申請書の書き方

青色申告承認申請書の書き方としては、基本的には書類に記載されている内容通りに記載すれば簡単に作成が可能となります。
記載する項目としては、住所地や事業者氏名、所得の種類等を記載すれば作成が可能となります。

◆結論

昔は青色申告と白色申告を比較した場合、白色申告の場合には帳簿の添付は不要でしたが、現在は青色申告と同様に必要となっております。
そのため、白色申告でも帳簿の添付を求められるのであればわざわざ白色申告を選択するメリットはありません。
青色申告承認申請書は、法人の場合や個人事業主の場合それぞれに上述したメリットがあるため、設立時や開業時などにおいては青色申告承認申請書の提出をした方が、納税を考えた場合でも有利に働くため必ず所轄税務署長へ提出するように対応しましょう。